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総開発費4千億円「みずほ銀行」システムで障害多発…4社共同開発と非常識な作業が元凶か

文=編集部
総開発費4千億円「みずほ銀行」システムで障害多発…4社共同開発と非常識な作業が元凶かの画像1
みずほ銀行の店舗(撮影=編集部)

 みずほフィナンシャルグループ(FG)の坂井辰史社長は3月17日、記者会見し、傘下のみずほ銀行で相次いでいるシステム障害について「お客さまに大変な迷惑をかけ、信頼を損なう事態となった。心からお詫びしたい」と謝罪した。これまでは、みずほ銀行の藤原弘治頭取が2度、会見を開いて説明してきたが、親会社の責任を問う声が高まり、初めて公の場で説明した。

 システム障害の原因などを究明するため、外部の専門家による第三者委員会を立ち上げる。第三者委員会の委員長には弁護士の岩村修二氏が就き、原因の究明や再発防止策などを提言する。4月1日付でみずほ銀行の加藤勝彦常務執行役員が頭取に昇格する人事も取り消す。加藤氏は副頭取になる。坂井社長は4月1日に自身が就く予定だった全国銀行協会の会長職についても当面、見合わせる。

 金融庁は、約2週間の間に4回の障害を引き起こした事態を重く見て、みずほ銀行に対し、月内に立ち入り検査を行う。金融庁はすでに銀行法に基づく報告命令を3度出し、原因や再発防止策などを報告するよう求めている。しかし、トラブル続発で原因究明に時間がかかり、金融庁が当初求めた3月末までの報告は難しい状況だ。みずほ銀行自身による調査と並行して検査に踏み切る。

 金融庁はみずほ銀行の持ち株会社・みずほFGにも立ち入り検査を行い、企業統治に問題がなかったかどうかも調べる。金融庁は検査結果を踏まえ、業務改善命令などの行政処分を出す。金融庁から重い行政処分が出る可能性がある。みずほ銀行は藤原頭取の体制下でシステム障害問題に一定のけじめをつけ、後任の加藤副頭取に頭取の椅子を引き継ぎたい考えだ。

「坂井社長に当事者意識が希薄」との批判

 坂井社長は会見で「私にも責任」と述べたが、親会社の経営トップに責任があるのは当然であり、改めて言うことではない。「これまで記者会見を開かなかったことが信頼を損ねたのではないのか」と聞かれ、坂井社長は「批判は真摯に受け止めたい。意見を受け止めながら説明責任を引き続き果たしたい」「みずほFG全体の信用・信頼に関わる事態になったと判断し、今日ご報告させていただいた」と述べたが、危機に対する感度の鈍さを示しているという指摘もある。

 みずほFGの経営の最高責任者である佐藤康博会長が会見に出席しなかったことにも批判が出ている。みずほ銀行の今回の頭取交代人事も佐藤会長が主導したとの見方がある。その人事は凍結されるが、佐藤会長も会見に出席して一連のトラブルについて語るべきではなかったのか。

デジタル口座への移行作業中に、1回目のシステム障害が発生

 みずほ銀行では、2月28日から3月1日にかけて、定期預金口座のデータ移行作業中に大規模なシステム障害が発生した。5000を超すキャッシュカードや通帳が現金自動受払機(ATM)から取り出せなくなり、ATMの約8割が利用不能になった。ATMの障害は3月3日夜にも発生。複数のデータセンター間をつなぐ機器が壊れて通信が一時断たれ、東京都や大阪府などの計29台のATMが最大で3時間程度停止した。

 7日にはATMとインターネットバンキングで定期預金への入金手続きができなくなるトラブルが発生した。カードローンのプログラムを更新する作業が原因だった。12日には法人向けサービスで新たなシステム障害が起きた。企業間の外貨建て送金約300件に最大4~5時間の遅れが生じた。データセンターの機器が故障したが、故障時のバックアップ機能が働かなかった。2月28日のATMの障害から2週間足らずで4回のトラブルが発生する異常事態だ。4回の障害に関連性はないという。

 最初のATMのシステム障害は、記帳取引のない口座をデジタル通帳に変更する作業に原因があった。みずほ銀行は21年1月から、70歳未満の顧客が新しく口座を開く際に通帳の発行を希望した場合、1冊あたり1100円(税込み)の手数料をとる。大手行で通帳発行手数料を導入するのは初めて。同時にインターネットで閲覧できる「デジタル通帳」の提供を始め、紙からデジタルへの移行を促し、業務の効率化を図る。

 毎年1月末時点で1年間以上記帳がない通帳は、自動的にデジタル移行する。6回に分けてデジタル口座に移す予定を立てた。2月の最後の週末に大量のデータ移行作業をしようとしたことでシステムがパンクした。月末は定期預金の自動継続などの作業が集中する。システムに負荷がかかるため、銀行業界ではこうした日にはメンテナンスをしないのが常識となっている。

 しかし、みずほ銀行は違った。紙の通帳には1冊200円の印紙税がかかる。3月の期末までにデジタル通帳への移行を急いだ。印紙税の支払いを避けようとしたことがシステム障害を引き起こし、混乱を拡大させた。

2度の大規模システムトラブルを受け、4600億円を投じ基幹システムを刷新

 みずほ銀行は2度の大規模障害を経て、10年近くを費やして、新しい基幹システムを2019年に稼働させた。それでも、3度目を防ぐことができなかった。昨年には複数の電子決済サービスを使った不正な預金の引き出しがあったことも明らかになり、金融機関に最も求められる信頼性は揺らいだままだ。

 大規模システム障害には、みずほ固有の事情がつきまとっている。他のメガバンクの三菱UFJ銀行や三井住友銀行は、合併の際に基幹システムを一方の銀行側のシステムに一体化した。しかし、みずほ銀行は前身である第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3行の主導権争いが起きて、それぞれのシステムを存続させる形にした。その結果、統合初日の2002年4月、大規模なシステム障害が起き、約250万件の口座振替などで遅れや誤処理が生じた。

 みずほ銀行の勘定系システムは第一勧銀の富士通製、営業店システムの端末には富士銀の日本IBM製を採用。みずほコーポレート銀行は興銀が採用していた日立製をそのまま使った。3行のメンツを立てた妥協の産物だった。最初のボタンの掛け違いが、みずほ銀行の開業初日からの大規模システムトラブルの原因となった。

 2011年3月15日、東日本大震災の直後、再びシステム障害が発生した。特定の支店に義援金の振り込みが集中したことから、最大116万件の振り込みが遅延した。2度の大規模なシステム障害を起こしたみずほFGは、合併前の旧3行でポストと分け合う「3トップ制」と非効率な「2バンク制」から決別せざるを得なくなった。3行が合併して2つの銀行をつくるという前提が間違いだったことを思い知らされた。みずほコーポレート銀行はみずほ銀行に吸収合併され、新みずほ銀行となった。

「oneみずほ」を目指し、2012年、みずほ銀行の新システムが発表された。新システムは、旧みずほ銀行のシステムベンダーである富士通、旧みずほコーポレート銀行の日立、旧富士銀とみずほ信託銀行のIBMが担当することになった。みずほ信託のシステムまで、一気に統合してしまうというところがミソだった。

 みずほは18年6月から、グループ内で併存する3つのシステムを、新たに開発した次期システムに移行する作業を始めた。システムの全面刷新する作業には富士通、日立、IBMのほかNTTデータも加わった。システム刷新に投じる投資額は4000億円としていたが4600億円に膨れ上がり、19年7月に新しいシステムが完成した。

 今回のトラブルの頻発を目のあたりにして、システムの根本的な問題は改善されていないどころか、かえって退歩しているように世間には映る。考え方が異なる4社が共同で開発した新しいシステムに欠陥かあるのではないのか、との疑問が出ている。失態続きのみずほFGが、3大メガバンクの3番目の地位を、りそなホールディングスに明け渡す日は近いのかもしれない。

(文=編集部)

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