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独立するのは人気芸能人だけじゃない…優秀な人材が流出しない組織の特徴とは?

松下一功/ブランディング専門家、構成=安倍川モチ子/フリーライター
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「gettyimages」より

 みなさん、こんにちは。元グラフィックデザイナーのブランディング専門家・松下一功です。

 人気芸人や人気女優の独立が相次ぐ芸能界。つい先日も、人気アイドルグループの会社化・独立が大きなニュースとなりました。事務所も理解した上での円満独立のようですし、彼ら自身も実力や経験を兼ね備えているので、今後のことはあまり心配ではないのでしょう。

 このような、実力や経験を兼ね備えた優秀なメンバーの独立といった現象は芸能界に限らず、一般企業でも起こっています。また、新型コロナウイルスがもたらした社会の変化によって、より加速した印象です。

 では、優秀な社員が独立・転職してしまうのはなぜなのか? また、会社が優秀な社員に活躍し続けてもらうには、どうしたらいいのか? 今の日本社会に求められている組織のあり方などについて、お伝えしましょう。

日本企業が目指すべき「ティール組織」とは?

 ズバリ、今の日本の企業は過渡期にあります。ブランディング・経営戦略などいろいろな改革が求められていて、多くの経営陣が頭を悩ませていることでしょう。リモートワークが推奨されるようになり、社内の組織開発にも大きなメスを入れようとする動きも見られます。

 組織開発について語るときに無視できないのが、数年前から提唱され始めた「ティール組織論」です。これは、マッキンゼーで長年にわたって組織変革プロジェクトに携わったフレデリック・ラルーという人物が唱えている説です。

 簡単に説明すると、組織を1つの生命体として存在するティール組織としてとらえて、それを最終目的に置きます。そして、人々が群れをなす組織からティール組織までの進化過程を5段階に色分けして、最終的にティール組織を目指すというものです。

【ティール組織への5つの成長段階】

●レッド組織:特定の個人の力で支配的にマネジメントされる
(トップの影響力が強く再現性が低い、組織として脆弱)
   ↓
●アンバー組織:個人に役割を与えられ、それを厳格に全うする
(軍隊のような組織で力強い半面、変化に対応しづらい)
   ↓
●オレンジ組織:ヒエラルキーが存在しながらも、成果により昇進できる
(今の日本に多い形。個人の考えがなく機械化しがち、評価が優先になり忖度が生まれる)
   ↓
●グリーン組織:個人の主体性が発揮しやすく多様性が認められる、家族経営など
(ヒエラルキーが残っており、人間関係のひずみはできやすい。意見がまとまらず、全体的な決定に時間がかかる可能性が高い)
   ↓
●青緑(ティール)組織:組織を1つの生命体としてとらえる
(ヒエラルキーが存在せず、独自で動きながら目的達成を図れる)

 では、なぜ現代の日本でティール組織への成長が求められているのでしょうか。その大きな理由は、テクノロジーの進化にあります。アナログな時代からデジタルな時代へと変化したことで、効率よく仕事ができるようになりました。それまでは何十人という人の力を合わせないと実現不可能だったことが、簡単にできるようになったのです。

 ホームページの制作で例えてみましょう。しっかりつくり込もうと思えば、ウェブディレクター、ウェブデザイナー、コーダーなど複数の人が必要となります。しかし、個人用などのシンプルなホームページなら、すでにパッケージ化されたものがあるので、誰でも簡単に1人でつくれてしまいます。

 このように、テクノロジーが進化して1人の人間がこなせる仕事の量や範疇が広がったことで、今までの組織形態が古くなり、組織のあり方を変える必要性が出てきたのです。

 さらに、新型コロナの感染拡大が後押しとなり、社員個人にとって「組織に属するか、属さないか」いう点も選択肢に追加されました。まさに、今の日本社会は「働き方自体」が壮大な実験中なのです。

優秀な社員ほど会社を辞めていく理由

 次に、優秀な社員が独立転職をする点について考えてみましょう。そもそも、入社したときに会社の理念やビジョンが自分の理想や考えとシンクロしている場合、社員はそれを実現するために懸命に働きます。しかし、現実問題としては、会社と社員がそういった相思相愛な関係をつくれていないことが多いでしょう。また、理想の会社に入社できたとしても、内情がそれに見合っていないケースもあります。

 会社組織は必ずしも理想形で動いているわけではないため、組織に属する意味が徐々に薄れていき、結果として独立や転職を選んでしまうのです。「会社に属する必要性がなくなった」という理由の他には、「目標達成までの効率が悪い」「人間関係や評価体制が仕事の邪魔になる」「リモートワークになって社内の仲間意識が薄れてきた」「チームの状況や方向性、日々の動きなどがわからなくなってきた」「会社の先行きが不安」といった、さまざまな原因が考えられます。そして、会社側がこれらの不安を受け止め切れていないのでしょう。

 リモートワークが可能になって仕事をしやすくなった半面、転職活動がしやすい状況にもなりました。また、今は同じ目的を持つ仲間を見つけて起業することも可能です。さらに言うと、目的意識を持ってアクションプランを考えて実行できる優秀な人ほど、こういった現状に満足できずに会社を離れてしまうのだと思います。

ティール組織に近づく方法

 優秀な社員を辞めさせたくなかったら、給料や待遇以外のやりがいといった部分の強化から始めるといいでしょう。そのためには、やはりティール組織に近づくことが必要です。

 会社のビジョンをしっかり持って、一人ひとりのミッションを明確にした上で、個人にアクションを委ねる。そして、最終的には社員一人ひとりがアドバイザーとなって、お互いに足りない部分をサポートし合える関係になる。そうした組織が理想形です。

 しかし、いきなりティール組織に成長できるわけではありません。今はリモートワークにより、組織づくりや組織改革がしづらい時期でもあります。そのため、まずは小さなことから始めるといいでしょう。

 たとえば、上司やその分野に精通している人は、部下の仕事を管理するのではなく、相談役といった立ち位置で個人の活動のサポートに回る。命令ではなく、アドバイスをする。そういったことを意識して、個人が自分の意思で業務に取り組める環境をつくる。

 そうすれば、社員一人ひとりが責任を持って自分の仕事に打ち込むようになり、お互いに足りない部分を支え合うようになります。これが、優秀な社員が独立転職を考えることのない、理想的な次世代組織なのだと思います。

(松下一功/ブランディング専門家、構成=安倍川モチ子/フリーライター)

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