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女子アナの“30歳定年説”は本当なのか?意外に厳しいセカンドキャリアとテレビ局の事情

構成=長井雄一朗/ライター
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日本アナウンサーキャリア協会を設立したトークナビ代表取締役の樋田かおりさん

 よく「女性アナウンサーは30歳が事実上の定年」などと言われるが、実際にセカンドキャリアに悩む女子アナは少なくないという。日本テレビ系列の青森放送でアナウンサーを務めた樋田かおりさんは、他の地方局出身アナとともに、日本アナウンサーキャリア協会を設立した。「アナウンサーのスキルを活かして活躍できる場を広げたい」と語る樋田さんに話を聞いた。

女子アナが企業の広報を代行も

――2020年9月に日本アナウンサーキャリア協会を設立した経緯について、教えてください。

樋田かおりさん(以下、樋田) セカンドキャリアに悩む女性アナの方々に、スキルを活かした働き方を提案することが目的です。アナウンサーとして働いた経験があるものの、出産や育児を経て、あるいはフリーアナが飽和状態のため、能力があっても職に就けていない“潜在アナウンサー”が増えています。そうした方々が、テレビやラジオなどのメディアにとらわれずに活躍の場を広げられることを目指しています。

 もともと、15年に企業研修などの講師を女性アナが務める会社「トークナビ」を設立し、19年8月からは中小企業の広報を女性アナが代行してメディアへのPRを行う「女子アナ広報室」というサービスを展開していました。今回、広報業務を基礎から身につけることができる「広報スペシャリスト検定」を創設し、広報のプロ育成にも力を入れています。また、トークナビで育成した約30人の講師が「面接で役立つ!自己PR講座」や「オンライン就活での話し方」を教える予定で、就職活動の自己PRに役立てたいという学生などが受講に意欲を見せています。

――女子アナによる企業広報の代行というのは、どのようなメリットがありますか。

樋田 言葉にこだわってきたアナウンサーだからこそ、企業の魅力をわかりやすくまとめることができます。中小企業の中には、素晴らしい商品・サービスをつくっているのに、その魅力をうまく伝えられていない会社も少なくありません。それは実に惜しいことで、アナウンサーの表現力を生かせば、日本のモノづくりの良さを世界に伝えることができると思っています。そこで、人やモノの魅力を伝える女性を「広報アナウンサー」と命名しました。広報アナウンサーには無限の可能性があると信じています。

――女子アナの方々は華やかな印象がありますが、どのような生活を送っているのでしょうか。

樋田 もちろん人それぞれですが、朝の番組であれば早朝4時に出勤ということも珍しくありません。多忙で他業界の方とは時間がずれたライフスタイルになってしまうので、出会いも限られ、プライベートは充実しにくいのが現実です。

 プロ野球選手と結婚して引退……というケースが目立つように見えますが、実際は社内や広告代理店の方との結婚も多いです。そして、お子さんが生まれると退職するというケースも。育児をしながら早朝の番組に出たり、レギュラー番組を何本も持ったりするのは不可能に近いですから。そのため、結婚式やパーティーの司会業に転身したり、企業の広報に転職したりする方もいます。

女子アナの“30歳定年説”は本当か

――局アナは身分が保証されているとはいえ、やはり激務なのですね。

樋田 同じ局アナでも、東京と地方では事情が若干違います。地方局では契約アナも多く、新しく入ってくる人がいる分、契約が切れてフリーになる方もいます。東京では正社員が多いですが、地方では契約年数が決まっていたり、トークがうまいので営業部に、司会ができるのでイベント事業部に、などとアナウンサーから異動になるケースも少なくありません。それこそ、女性アナが30歳直前になってアナウンス部から他部署へ、というケースも聞きますね。

――局アナと違って、フリーアナの場合は営業力も必要になってきますね。

樋田 事務所に所属し、営業の場はオーディションで、決まれば番組に出るケースが多いです。しかし、今は新型コロナの影響でテレビ局も経費削減を迫られ、オーディション数が減っています。また、テレビ局がYouTubeチャンネルを持つようになり、以前より二次利用のケースが増えてきたことで、無償で二次利用OKのフリーアナを求めたりもしています。

――今後の展望について、教えてください。

樋田 女性アナの方々が自分らしく働けるキャリア教育に重点を置いて、活動していきたいと考えています。たとえば、広報スペシャリスト検定を受ける中で、自身のキャリアや目指すべきフリーアナ像について、どういうビジョンを描いていくか。具体的に、どういう活動をしたくて、社会に何を還元できそうなのか。一人ひとりが明るいキャリアを描けるよう、サポートしていきたいですね。

 特に、地方局で働いていた27~29歳ぐらいのフリーアナがセカンドキャリアに悩むことが多く、悩みを共有できたり相談できたりする相手も多いわけではありません。私や、日本アナウンサーキャリア協会を一緒に立ち上げた仲間も、同じように悩みました。フリーアナの方々は、気軽に相談してほしいと思っています。

(構成=長井雄一朗/ライター)

長井雄一朗/ライター

長井雄一朗/ライター

建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス関係で執筆中。

Twitter:@asianotabito

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