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不動産投資、投資家から「保育園」が注目される理由…収益の安定性+社会貢献性でも定評

文=勝木健太/株式会社And Technologies代表取締役
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「Getty Images」より

 政府が掲げる「貯蓄から投資へ」というスローガンのもと、我が国においても資産運用の必要性が徐々に認識されつつある。「老後2000万円問題」が叫ばれるなか、書店にはマネー本が溢れかえり、資産形成セミナーは連日の賑わいを見せている。さらに、暗号資産やロボアドバイザーといった新たな投資対象も続々と生まれている状況だ。

 その一方で、サラリーマンを中心に根強い人気を誇っている投資対象がある。それが不動産投資だ。不動産投資といえば、これまでは家賃収入を得ることを目的として、マンションやアパートに投資することが一般的だった。しかし、投資行動にも社会貢献性が求められる昨今、新たに「保育園」への投資が投資家の間で注目されている。

保育園を対象としたクラウドファンディングが即完売

 東京都北区滝野川にある認可保育園「キッズガーデン北区滝野川」。2020年12月7日にスタートした不動産投資型クラウドファンディングサービス「タスキFunds(ファンズ)」の第1号案件「タスキ キャピタル重視型 第1号ファンド」の対象となった物件だ。クラウドファンディングで募集が開始されるや否や即完売となり、業界内で大きな話題を呼んだ。

 なぜ保育園を投資対象とする不動産クラウドファンディングに投資家が殺到したのか。その背景について、経済アナリストで3児の父でもある株式会社マネネ代表取締役の森永康平氏は、こう指摘する。

「1997年に共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回って以降、その差は拡大し続け、足元では共働き世帯数は専業主婦世帯数の倍まで増えました。その結果、保育園の需要は年々高まっており、投資対象として保育園に魅力を感じる投資家が増えているのです」

 ちなみに、保育所には児童福祉法に基づく認可保育所と認可外保育所の2種類がある。認可保育所は国が定めた設置基準(施設の広さ、保育士等の職員数、給食設備、防災管理、衛生管理等)をクリアした上で、都道府県知事から認可された施設である。公的な施設であることから、国や自治体などから補助金が給付されている。

収益の安定性に特に定評がある保育園投資

 もともと保育園は、不動産投資のなかでは収益性が高い物件とは捉えられていなかった。実際、東京都は2016年から保育園などの福祉施設について、民間資金を活用して建設する方法を議論していたが、17年3月に取りまとめた報告書では、「福祉関連施設は収益施設に比べ、収益性が一定程度劣る」と結論づけている。

 しかし、ここ最近は風向きが徐々に変わりつつある。確かに純粋な投資利回りでは保育園物件は収益物件より劣るケースが少なくないが、「安定した自治体からの補助制度」「共働き世代の増加」などを背景として、投資対象に求められる運営面の安定性を高く評価する投資家が増えているのだ。実際、国内外の投資ファンドのなかにも、保育園投資をポートフォリオに組み込むことを加速する動きが見られる。

これからの時代において欠かせないESGの視点

 加えて、昨今は収益性を追求するだけでなく、社会貢献性の高い投資がますます求められるようになってきている。特にリーマンショック以降は経済的なリターンだけでなく、環境や社会へ与えるインパクトなどの要素を考慮した”ESG投資“の重要性に関心が集まっている。

 ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って名付けられた。従来の投資手法では企業の売上や利益、財務安定性等の指標で企業の有望性を評価していたのに対して、ESG投資では環境や社会的な要素を重視するという点が大きな特徴とされている。

 国内では、2017年から年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESG指数に連動する投資を開始したことが話題を呼んだ。運用額は当初は1.5兆円ほどだったが、現在は約3兆円にまで拡大している。

 待機児童問題という重要な社会的課題の解決につながることを踏まえれば、保育園物件はESG投資の観点から望ましい投資対象のひとつと捉えることもでき、今後、不動産投資マネーの流入がさらに加速する可能性がある。

 この点について、保育園物件の不動産クラウドファンディングを手掛けた株式会社タスキ取締役の柏村雄CFO(最高財務責任者)は、以下のように不動産業界においてもESG投資の重要性が高まりつつあることを指摘する。

「ESG投資は、すでに世界で大きな広がりを見せていることや、日本政府も普及に向けて取り組んでいることから、不動産投資においても重要な考え方になっていくと考えています。国土交通省からは、脱炭素で貢献できる分野が大きいことから不動産に特化した指針が設けられるなど、今後、不動産評価にも大きな影響を与えると予測しています」

 人口減少社会においては「不動産価値は下がる」という意見が根強い。しかし、東京の人口に関しては、いまだに増加を続けており、「都内・駅5分以内」に関しては依然として優位な状況が続いている。

 また、リモートワークが加速する今、子供を保育園に預ける必要性は薄れつつあるとの指摘も見られるが、ワクチン接種が進むなか、海外ではオフィスワークを段階的に再開する流れが生まれてきており、日本でもその流れが強まる可能性は十分にあると考えられる。

 何より、慢性的な社会課題である待機児童問題が根本的に解決されない以上、保育園への需要は基本的に底堅いとみていいだろう。資産運用においても社会貢献性が求められる今、一度、保育園投資を検討してみてはいかがだろうか。
(文=勝木健太/株式会社And Technologies代表取締役)

勝木健太

勝木健太


1986年生まれ。幼少期7年間をシンガポールで過ごす。京都大学工学部電気電子工学科を卒業後、新卒で三菱UFJ銀行に入行。4年間の勤務後、PwCコンサルティング/有限責任監査法人トーマツを経て、経営コンサルタントとして独立。約1年間にわたり大手消費財メーカー向けの新規事業/デジタルマーケティング関連プロジェクトに参画した後、大手企業のデジタル変革に向けた事業戦略の策定・実行支援に取り組むべく、株式会社And Technologiesを創業。「FIND CAREERS」を中心に、「転職サイトZ」「転職エージェントZ」等の複数の情報サイトを運営。執筆協力実績として、『未来市場 2019-2028(日経BP社)』『ブロックチェーン・レボリューション(ダイヤモンド社)』等がある。

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