日本の中央銀行である日本銀行にも、政治を中心に金融緩和実施への強いプレッシャーがかかっている。ご他聞にもれず日本の財政も逼迫した状況だ。赤字国債など政府の借金は1000兆円に迫る勢いで、新生児まで含めた国民一人当たりの借金も1000万円に近づいている。
とはいえ、ここでは何も財政論を展開しようというのではない。日銀による事実上の国債引き受けの問題点を論じるつもりもない。増して、日銀の中央銀行としての独立性を取り上げるわけでもない。強いて言うなら、日銀の”強かさ”と、対する市場の”無知さ”だろうか。
少しさかのぼるが、ある日銀関係者は、2月14日の金融緩和について、「連日のように白川方明総裁が国会に参考人として呼ばれ、金融緩和実施への圧力を受けた。その影では、来年の日銀総裁人事や日銀の独立性の根幹である日銀法改正を材料に持ち出された」という。
この日、日銀は、新規に10 兆円の金融緩和策を打ち出した。いわゆるバレンタインデー緩和だ。この金融緩和は市場にサプライズを与え、日経平均株価は急上昇し、為替相場は円安に触れた。市場関係者の多くは、「遅ればせながら、日銀も金融緩和に本気になった」と評価した。
しかし、金融緩和という”麻薬”の効き目が切れるのは早いもの。その後、為替が再び円高に動き、日経平均が下げに転じると市場からは再度金融緩和を求める声が強まった。いわく、「これで日銀の金融緩和に対する本気度がわかる」という実にご都合主義的な話だ。
特に、4月3日に日銀が発表した3月のマネタリーベースが前年比でマイナス0.2%となったことで、市場関係者の間ではこれが金融緩和後、堅調に推移していた株価が下落に転じた要因の一つと指摘する声が出た。
日銀には”埋蔵金”がある!?
4月9日、10日の日銀金融政策決定会合に向け、白川総裁は再び国会に参考人として呼ばれ、4月6日には野田佳彦首相との会談まで行われた。追加金融緩和の舞台は整ったように思われた。だが、結局日銀は9日、10日に金融政策決定会合では追加金融緩和を見送った。この背景には、同月の27日にも同会合が予定されており、同日に日銀が重要視する「経済・物価情勢の展望」(いわゆる展望レポート)の発表を控えていたことがある。そして、その日の金融政策決定会合では、新規に5兆円の金融緩和が打ち出されたのだ。