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旭川・中学生イジメ自殺事件の闇…校長は隠蔽・対応放棄、道警と地元メディアは黙殺

文=編集部
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北海道警察(「Wikipedia」より)

 恐ろしいほどの隠蔽体質に、驚きが広まっている――。

「文春オンライン」のスクープで明るみに出た、北海道・旭川市の女子中学生イジメ自殺事件。今年2月に命を絶った廣瀬爽彩さんが、転校前に通っていた旭川市立北星中学校で上級生グループから、わいせつな動画の撮影を強要され、その画像をSNSで拡散させるというイジメを受けていた事件だが、爽彩さんが2年前に自殺未遂を起こしていたことを地元メディアが報じていた。

 月刊誌「メディアあさひかわ」(月刊メディアあさひかわ)は、19年9月発売号でこの問題を追及。同誌によれば、当時、事態を把握した北海道警察や旭川市教育委員会は、北星中に対して適切な対応を求めたものの、学校側は「いじめはなかった。男子生徒らの悪ふざけ」(同誌より)などとして、当時の校長を中心として、おざなりな対応に終始していたという。

 自殺未遂が起きた当時の北星中学校長は「文春」の取材に対し、「(イジメに)至ってないって言ってるじゃないですか」と発言。さらに、爽彩さんが同校生徒から不適切な動画の撮影を強要されていたことについて、「今回、爽彩さんが亡くなった事と関連があると言いたいんですか? それはないんじゃないですか」などと話している。

「旭川市の西川将人市長は今月22日になってようやく、市教委に調査を指示しましたが、もし『文春』報道がなければ、学校も道警も市教委も、自殺の原因をひた隠しにしたままで、真相は完全に闇に葬られたままになっていたでしょう。『メディアあさひかわ』の報道もあり、自殺未遂の件は道警記者クラブ所属の主要メディアは把握していたにもかかわらず、爽彩さんが2月に自殺して以降、『文春』報道を受けて旭川市が公に動き出すまでの約2カ月間、まったくといっていいほど報じていないのも問題でしょう。

 特に地方では、記者クラブ加盟メディアは警察や県・市などの自治体の意向に逆らうと情報をもらえなくなるので、言いなりになりやすい。今回の件でいえば、情報が出てしまい事を荒立てたくない道警に、地元メディアがこぞって加担してしまったという構図が浮かんできます」(全国紙記者)

 また、メディア関係者はいう。

「道警は、爽彩さんの自殺とイジメに関する問い合わせに対し、『記者クラブ加盟社以外のメディアには答えない』と対応を拒否しています。コントロールが効かないメディアに知られると不都合なことでも、あるのでしょうか。“あくまで学校側と市教委の問題”として終わらせたい道警の姿勢を感じます」

地方都市特有の事情

 一方、地元では2年前の自殺未遂とイジメ問題は、一部で知れ渡っていたという。旭川市民はこう語る。

「北星中学は中心街からは車で15~20分くらいに位置し、東京の人からみれば、いわゆる“田舎の中学”。特に特徴のない普通の公立中学です。近くには、地元で“附属”と呼ばれる、受験して入学する北海道教育大学附属中学や、道教育大学旭川校、広大な敷地の自衛隊駐屯地がありますが、これといって特徴がある地域ではありません。ちょっと離れたところにアイヌ記念館があり、10年以上前には大きなイオンモールも開業しました。

 旭川では、同じ地域の子供たちが同じ公立小学校に通い、そのまま同じ公立中学校に通うので、小中の9年間、刺激が少ない環境下、まったく同じコミュニティーのなかで時を過ごすことになります。そのため、同学年の子供と保護者たちの間では、誰と誰が仲良しグループで、誰が“イジメられっ子”で、誰が問題児で、どのグループが誰をイジメていて、誰と誰が男女の交際をしているのかなど、込み入った情報がすぐに伝わってしまいます。

 自殺した女の子も、誰と誰のグループからどんなことをされていたのかという情報は、関わった子供の同級生や保護者、さらには学校の先生のみならず、一部の地元住民たちにも伝わっています。

 今回、イジメの件を警察や市の教育委員会も把握していて、北星中学に対応を求めていたものの、校長以下が“イジメはない”として何の対応もしていなかったということですが、さもありなんという感想です。こっちでは大半の中学生は、受験して市内の私立か公立の高校に進学しますが、受験競争もそれほど激しくなく、中学3年間の成績を見て“入れる高校に入る”という感じで、学校の先生方も緊張感がない。地方公務員で地元の教育界という狭い世界で生きているので、今回のように平気で揉み消すような事態が起こるのだと思います」

 当サイトは4月19日付記事『旭川・中学生いじめ自殺、校長の“おざなりな対応”露呈…市教委・警察は「いじめ」認識』で事件の背景などについて報じていたが、今回、改めて再掲載する。

―――以下、再掲載―――

 文春オンライン(文藝春秋)は15日から、連載『「娘の遺体は凍っていた」14歳少女がマイナス17℃の旭川で凍死 背景に上級生の凄惨イジメ《母親が涙の告白》旭川14歳少女イジメ凍死事件』を公開した。記事では上級生グループに自身のわいせつな動画・画像の撮影を強要され、その画像をグループ間のSNSで拡散させるという凄惨ないじめの内容に加えて、2月13日に命を絶った廣瀬爽彩さん(14)の家族の悲痛な告白を伝え、大きな反響を呼んでいる。

事件は2年前、地元月刊誌によって詳報されていた


 実は地元旭川市では文春報道に先立つ2年前、すでにこの問題が明るみに出ていた。2019年9月に発売された月刊誌「メディアあさひかわ」(10月号/月刊メディアあさひかわ)の記事『北星中学校女子生徒がいじめで自殺未遂 学校側は事件隠蔽に躍起』が、衝撃的な内容を以下のように伝えている。同編集部に許可を得た上で記事内容を引用、紹介する。

「いじめによる自殺事件が全国的に後を絶たないが、旭川市内の中学校で、今年6月、いじめが原因とみられる女子中学生の自殺未遂が起きた。旭川市立北星中学校の女子生徒が複数の男子生徒からのいじめに遭い、女子生徒の不適切な画像や動画がSNSなどで拡散され、それを苦にしたものとの見られる。

 事件自体が何ともおぞましいもので、事態を重くみた道警中央署や市教委は同校に対し、事件の全容解明や問題画像の削除、関係家族に対する適切な対応を求めたが、本紙取材によると、学校側はこれまで『いじめはなかった。男子生徒らの悪ふざけ』などとして、全ての対応をなおざりにしてきたことも明らかになった。学校側のズサンな対応に保護者らからは非難の声が上がっている」(原文ママ)

 同記事によると、一連の強要行為で精神的に追い詰められた被害生徒は19年6月、市内の橋から飛び降りた。軽傷で済み、命に別状はなかったが、北海道警旭川中央署の事情聴取により、その時点で一連のいじめ行為や画像拡散の実態が明らかになったのだという。そのため、道警が加害生徒全員に事情聴取を行い、事件の全体像を把握した上で、加害生徒への指導と、一般生徒らに拡散している画像データの削除を学校側に要請した。

 ところが、学校側は画像削除などの対応や加害生徒への指導を行わないばかりか、廣瀬さんの母や市教委に対し「いじめの事実はなかった。男子生徒らのいたずらが過ぎただけ」「校長が中心となり、事件性はなにもない」との主張を繰り返していたようだ。

 同記事では、同校の校長の判断に戸惑う市教委の声や、同編集部が取材をするまで保護者説明会の開催を回避しようとしていた学校の思惑や動向も詳報している。同編集部は「昨年末から、またいろいろな情報が寄せられてきている。引き続き取材する」と話した。

「みんな知っていた」「噂話が拡散されるのを見ているだけ」


 廣瀬さんが自殺未遂をした段階で、なぜ学校側は適切な対応をできなかったのか。また、これほどの大問題をほかのメディアは、なぜ大々的に報じなかったのか。一連の杜撰な対応が「大人は誰も助けてくれない。ちゃんと取り合ってくれない」というメッセージを廣瀬さんに与えてしまった可能性は否定できないのではないだろうか。地元テレビ局の報道関係者は次のように話す。

「自殺未遂は一般の大手メディアが報じることはご法度です。ましてやいじめ報道に関しては、とてもデリケートな内容なので、どこのメディアも二の足を踏むところがあります。自殺未遂があった件はちゃんと警察取材をしている社はもちろん、学校関係者はみんな知っていました。学校側の『男子生徒らのいたずらが過ぎただけ』という言い分には正直、常識を疑いました。あくまで個人的見解ですが、一連のいじめ行為は法に触れる行為、つまり犯罪にあたると思っています。少なくとも道警がブツを確保した上で、事情聴取もしているのに学校側は『事件性はない』と言い張るのは、あり得ないなと……。

 しかし加害者は全員未成年で、小学生まで事件に噛んでいました。一般論として殺人や強盗など特異な例を除いて、いじめ関連の触法少年の事件を大きく報じることは極めて難しいです。

 また旭川市は道央の中心都市ではありますが、札幌市などに比べると地方都市特有の閉鎖感があることは否めません。小中学校からずっと同じ面子、同じコミュニティーで育ち、社会人となった後もその中で暮らしていくケースが多いため、後々のことを考えてトラブルがあっても内々に処理しがちな傾向があると思います。被害者は噂話がどんどん拡散するのを見ているしかありません。我々が報道することによって、より被害生徒に心理的な負担をかけてしまいかねません。一義的には学校と市教委が適切に対応しなければならない問題だと思います」

 一方、全国紙社会部記者は話す。

「北海道駐在の記者の話によると、『いじめはなかった』という主張を押し通そうとしていた北星中の当時の校長は昨年3月に退職したそうです。今、なにを思っているのでしょうね。人にもよりますが、地方において学校の校長は名士中の名士です。押しの強い校長だと教育委員会も容易に口出しできず『治外法権化』して『校長の王国』になりがちです。

 文春報道がなければ、『旭川の人間はみんな知っているけれど、外部の人間は誰も知らない』という事件になっていた可能性すらあると思います。学校がすべての子どもたちの動向を監視し把握するのは不可能ですし、教育的にそれが良いとも思えませんが、問題が発覚した時に適切な対応をとることはできるはずです。被害拡大の防止、人命や人権の尊重など社会にとっての常識が校長を含む学校側にあったのか疑問は尽きません」

(文=編集部)

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