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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

注目高まる「昆虫食」、アレルギー発症リスクも…“食糧危機の救世主”に意外な危険性

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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「Getty Images」より

 多くの専門家が、「近い将来に世界的食糧危機が訪れる」と警告を鳴らす昨今、テレビ番組『NHKスペシャル』で『2030 未来への分岐点「飽食の悪夢~水・食料クライシス」』を放送した。国連世界食糧計画(WFP)のデイビット・ビーズリーは、「食料不足による飢餓の拡大は、社会の不安定化を招き、大量の難民を生む」と警告している。さらに同番組では、「食料危機で日本にも飢餓や暴動が起きかねない」と警告している。

 そんな食糧危機を救うために近年、注目されているのが、「昆虫食」である。昆虫は栄養価も高く期待の食材ではあるが、一方でアレルギーを起こすリスクもある。アイドルが罰ゲームでコオロギを食べたところ、甲殻類アレルギーを発症したとしてツイッター上で話題になっている。昆虫食に関して注意すべき点を「埼玉みらいクリニック」院長の岡本宗史医師に聞いた。

アレルギー体質の人は要注意

 卵、牛乳、肉、大豆製品などのタンパク質が主成分の食品にアレルギーがある場合は、要注意だ。

「タンパク質を含むほとんどの食品と同様に、節足動物は免疫グロブリン(IgE)を介したアレルギー反応を引き起こす可能性があります。症状としては、湿疹、皮膚炎、皮膚掻痒から結膜炎、気管支喘息、下痢症状など一般的なアレルギー反応と変わりがありません。アレルギーを発症する原因として、アトピー要因の既往がある人もいますが、長期的な摂取や曝露によりアレルギー性過敏症を発症する可能性もあります」

 ツイッターで話題となっているアイドルは、まさにこのケースである。

「特に甲殻類(エビ、カニ)に対するアレルギーを持つ方は注意が必要になります。筋肉の収縮調節として重要な役割を果たすトロポミオシンと呼ばれる蛋白質が、甲殻類アレルギーのアレルゲン(アレルギーの原因となる物資)として重要ですが、このトロポミオシンは昆虫にも含有されています」

 昆虫に含まれるトロポミオシンを摂取することで、魚介類、甲殻類によるアレルギーが増幅することもある。また、その逆も然りだ。

「実際、ダニアレルギーの患者が、ダニ抗原への曝露を重ねることによって、魚介類のトロポミオシンに敏感になったとの報告もあります。(Reese, Ayuso and Lehrer, 1999)。つまり、例えば魚介類、甲殻類アレルギーの方が、食用の昆虫を食べることでアレルギー反応を起こす可能性を示唆しています。煮るなどの加工処理でアレルゲン成分が破壊されるかどうかは、まだはっきりとした答えがでていないため、温熱加工をしたので安全という保証にはなりません」

 実は、昆虫食は以前から食されているもので、その一例が「蜂の子」と呼ばれるミツバチの幼虫である。好奇心で食し、思わぬアレルギーを招くことがあるので要注意だ。

「ミツバチの幼虫には花粉が含まれているため、花粉アレルギーの人はミツバチの幼虫を食べるべきではありません。事実、花粉症を持つ人がミツバチの幼虫を食して喘息症状が生じた報告があります(Auerswald and Lopata, 2005)」

 こういった過去の報告からも、自分自身のアレルギーとアレルギー反応について認知しておく必要があると岡本医師は注意喚起する・

「特に、甲殻類、魚介類アレルギーの既往がある方は、昆虫食は控えておくべきかと思います」

 世界の食糧危機を救う期待を寄せられる昆虫食だが、その普及には、アレルギー等に関する基礎知識の啓蒙やガイドラインが必要かもしれない。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

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吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

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