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エーザイ、新・認知症薬「610万円」は高額?医療費・介護費全体の抑制につながる?

文=編集部
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エーザイのサイトより

 エーザイが止まらない。6月18日、株式市場でエーザイ株が急続伸した。株価は一時、前日比1235円(10.8%)高い1万2635円と上場来高値を更新した。6月7日、認知症薬「アデュカヌマブ」が米国で承認されてから同月18日の高値まで、9営業日で株価は63.1%高となった。後述するが、当初の連続ストップ高を経て、売り買いが完全に合致して値段がついた6月10日に、仮にエーザイ株を買ったとしても16.5%高となったわけだ。

 エーザイは6月18日、新型抗がん剤の開発・販売で米製薬大手ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)と提携したと発表した。がん細胞を標的とする抗体と抗がん剤を組み合わせた「抗体薬物複合体(ADC)」と呼ばれる種類の薬で、子宮内膜がんや卵巣がん、肺がんなどを対象に臨床試験(治験)が進められている。

 今回の契約でエーザイはブリストルから一時金で約680億円、今後、最大で2560億円を受け取る。日本、中国、アジア太平洋諸国、欧州、ロシアではエーザイが売り上げ、利益を計上する。

2日連続してストップ高

 6月8日のエーザイの株価の終値は値幅制限いっぱいのストップ高水準の9251円をつけた。昨年11月6日以来約7カ月ぶりの高い水準まで値上がりした。前日比1500円(ストップ高)となり、上昇率は19.35%に達した。

 翌9日もストップ高の1万755円で取引を終えた。連続のストップ高だ。6月10日に、ようやく売買が成立。前日比135円(1.2%)高の1万890円の高値をつけた。エーザイと米バイオジェンの日米連合が世界で初めてアルツハイマー型認知症の進行を抑制する治療薬の開発にこぎつけた。米食品医薬品局(FDA)が6月7日、両社の開発する新薬候補を承認したことで、エーザイ株がはねた。

 認知症の分野に加え、抗がん剤でも新薬の承認を目指し成長へつなげると投資家は捉えた。好材料の2連発で、6月18日は上場来最高値を更新した。6月18日の終値を基準とした株式時価総額は中外製薬(7兆1359億円)、武田薬品工業(5兆8688億円)、第一三共(4兆8880億円)、アステラス製薬(3兆6174億円)に次いで、エーザイ(3兆5810億円)で第5位である。

1人当たり年間約610万円の高額治療費がネック

 エーザイは認知症領域に経営資源を集中してきた。1997年、認知症治療薬「アリセプト」を開発。メガファーマの米ジョンソン・エンド・ジョンソンに先行したが、「アリセプト」は認知機能を一時的に改善する対症療法にとどまり、投与期間が短いという難点があった。

 米食品医薬品局は6月7日、エーザイと米バイオ医薬品大手バイオジェンが共同で開発するアルツハイマー型認知症治療薬候補について、条件付きで承認申請を認めると発表した。長期の進行抑制を狙う世界初の薬として期待されているが、その一方で、有効性の証明に不確かさがあったため、追加の臨床試験が求められた。

 米当局がアルツハイマー型認知症の治療薬を承認するのは18年ぶり。FDAが設置した外部の専門家による諮問委員会は昨年11月に有効性に対して否定的な見解を出していたが、今回、承認に踏み切った。

アデュカヌマブ」はアルツハイマー型認知症の原因物資とされるたんばく質アミロイドベータを除去する効果が認められたことによる。米バイオジェンが2020年にFDAに承認申請をしていた。国内でも20年12月、厚生労働省に承認申請している。

 エーザイは主に日本と、中国・韓国を除くアジアでの先行販売を担い、対象地域の収入のすべてと利益の8割を獲得する。米国と欧州ではバイオジェンが中心となって販売し、利益の45%(米国)、31.5%(欧州)がエーザイに入る。内藤晴夫最高経営責任者(CEO)は、認知症新薬の説明会で「日本では100万人程度がターゲットになる」と述べた。そのうえで「検査体制が充実し、原因物資とされるアミロイドベータを確認できるようになれば、投与対象者は増える」と指摘。「ブロックバスター(年間10億ドルを超える大型医薬品)として貢献してくる」と説明した。

「アリセプト」は症状の悪化を遅らせる効果にとどまるが、それでもピーク時(10年3月期)には3200億円を売り上げた。エーザイは将来の売り上げ見通しを開示していないが、国内のアナリストは「(アデュカヌマブの)ピーク時の売上高は1兆円を超える可能性がある」と推計している。ネックは高額なこと。バイオジェンは米国での治療費は1人当たり年間で5万6000ドル(約610万円)になると公表している。エーザイは国内で100万人を見込む。承認された場合、公的な医療保険財政の圧迫を懸念する声が出ている。

「アディカヌマブ」は確かに高価だが、薬で認知症の進行を抑えられれば、介護費の負担やコストが下がる可能性が高い。この薬の価値は医療費だけでは計れない、と指摘する専門家もいる。国内のアルツハイマー型認知症患者にかかる医療・介護費は7兆円弱と推計されていて、「その過半が介護費」(専門家)との見方もある。

外資系証券のアナリストは強気

 外資系証券会社の目標株価の引き上げラッシュが話題となっている。6月8日付でシティグループが2万円目標とした。ちなみに6月18日の終値は1万2075円(675円高)だった。

 クレディ・スイス証券が1万5000円、ゴールドマン・サックスとBofA証券が各1万2000円。6月17日付でJPモルガン証券が1万4000円で追随した。これに対して、国内証券会社のアナリストは冷ややかだ。野村證券が1万8000円の目標株価をつけているのは、いわば例外。極端に低いのは大和証券。6月18日にいたっても大和は「4700円目標」を維持したままだ。

 4700円ということは6月18日の終値の4割以下である。もし4700円に向けてエーザイ株を空売りして、4700円まで下げたとすると、大きな戦果を挙げることになる。だが、外資系証券会社のアナリストが目標としている1万5000円以上の株価になったりすると損が発生する。

BusinessJournal編集部

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