普段、深く考えることなく使っている「漢字」だが、よくよく見てみると不思議に思うことも多い。
たとえば「告白」や「独白」で使われる「白」の文字。何か大事なことを打ち明ける時に使われるこの言葉が、なぜ色を表す「白」なのだろうか。
■学校では教わらない漢字が持つ意外な意味
『面白いほど記憶に残る迷わない漢字』(話題の達人倶楽部編、青春出版社刊)は、漢字が本来持っている「いろいろな意味」に焦点を当て、その意味を理解することで、漢字知識と語彙力を身につけよう、という1冊だ。
漢字はその意味が一つとは限らない。
「独白」という言葉の「白」は、一般的に「しろ」という、色を表す意味で知られている。だが、「ものを言う」という意味もあり、「白す」で「もうす」と訓読みできることはあまり知られていない。「告白」「白状」といった「白」を使った「ものを言う」意味の熟語があるのはそのためだ。
中国の長い歴史の中で、漢字は多様な意味を持つ文字に育ち、それを日本人は「日本語」を表す表記として取り入れてきた。飛鳥時代以降、仏教や経典など、膨大な漢字を読み下すためにひとつの漢字に「訓読み」をつけた。それが、戦後、常用漢字や教育漢字が決められ、漢字の読み方に制限が加えられる。
そのため、上記の「白」は「しろ」という読み方は学校で習っても、「もうす」という訓読みは教わらない。「告白」という言葉に、なぜ「白」が使われているか、わからない人が多いのには、このような理由があるのだ。
また、言葉に方角を意味する漢字が使われることは多い。たとえば、「指南」と「敗北」という言葉にも「南」と「北」という漢字が使われているのも、考えてみると不思議だ。
「指南」がなぜ「南」なのかというと、古代中国にあった「指南車」という乗り物にちなんでいる。指南車に備えらえた人形がたえず南の方角を指していたことから、「指南」は一定方向を示す意味となる。やがて、教え示すという意味が生じた。
では、「敗北」は、なぜ「北」なのか。
実は「敗北」の「北」は方角を意味する「きた」ではない。敗北の意味は、戦いに敗れて逃げること。「北げる」で「にげる」と読むことができるのだという。現在は「敗北」は単に「負ける」ことだが、もともとは「戦いに破れて、逃げる」ことだったのだ。
見慣れている漢字にも、実はよく知る意味とは違う意外な意味が使われていることも、よくあるということだ。
なぜ、この言葉にこの漢字が使われるのか。どうして、その熟語になったのか。その意味を知ることで、漢字への理解も深まるはずだ。本書から、教養、語彙力アップを目指してみてはどうだろう。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。