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石徹白未亜「ネット依存社会の実態」【アプリ四季報 2021年7~9月】

ティックトックのバイトダンス発のアプリ「Lemon8」が各世代の女性に人気のワケ

構成=石徹白未亜/ライター
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Lemon8 (レモンエイト) – Google Play のアプリ」より

 ダウンロードしたものの、数回使っただけで休眠状態だったり、アンインストールしてしまったりしたアプリがある人も多いはずだ。テレビCMなどでは「数百万ダウンロード突破!」と威勢のいい言葉を聞くが、実際にどんなアプリがどの性年代にどのくらい使われ続けているのか。

 本連載では、ダウンロード数だけでは見えない「アプリの利用率」をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーに、四半期ごとに人気アプリの実態について聞いている。

 前編に続き、同社のオウンドメディア「App Ape Lab」編集長の日影耕造氏に、2021年第3四半期(7~9月)のアプリ利用動向について聞いた。

ユーザー急増中の「Lemon8」とは?

日影耕造氏(以下、日影) 21年7~9月は、女性の支持が強いアプリが躍進しています。前編では中国の越境ECアプリ「SHEIN」を紹介しましたが、ティックトックを運営するバイトダンスが手がけるライフスタイル系アプリ「Lemon8」も、21年3月からの半年間でユーザー数を約6倍に伸ばしています。

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図1

 Lemon8はインスタグラムと女性向けのライフスタイルメディアを足して二で割ったようなアプリで、ユーザーの8割以上が女性です。発信しているのは媒体側が雇ったライターではなく、個人です。ユーザーとしては、ティックトックやインスタグラムに投稿するイメージでしょうね。そして、バイトダンスが手がけているので、レコメンド機能が優れています。使っていくうちに各ユーザーに最適化されていき、やめられずについつい見てしまう吸引力があります。図2がユーザーの性年代比です。

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図2

――Lemon8のApp Storeの公式のアプリ紹介を見ると「若者向けのライフスタイル情報アプリ」と記載がありますが、図2の利用性年代比を見ると、けっこう世代が幅広いことがわかりますね。

 メイクやファッションは10代女性と40代女性では気にするポイントやほしいと思うものもまったく違いますし、逆の情報が目に入るのはうっとうしいでしょうけど、このあたりもレコメンドがうまく最適化しているのでしょうね。「こういう世代の人のためのアプリ」と決め打って出すのではなく、ユーザーに幅広く情報を出させて、それをレコメンドエンジンで一人ひとりに最適化して表示させているんですね。

日影 「誰が見ても利用状況に応じフィットしていく」というのがレコメンドエンジンのすごさですね。Lemon8を提供しているバイトダンスの代表的アプリはティックトックですが、こちらは音楽、踊るなど、動画ありきのアプリです。Lemon8は、ティックトックでは拾いきれなかった「ブログまでいかなくても、テキストベースのコンテンツを見たい、つくりたい」というニーズを満たしていますね。

躍進する「個人のコンテンツ投稿」

――Lemon8のトップ画面は、インスタグラムのように画像の一覧が並んでいます。ユーチューブで一般の人がつくった動画を見ても思いますが、「個人のセンス」が上がっていますよね。見栄えのいい写真に見栄えのいいフォントを配置し、思わずクリックしたくなる見出しをつけて……、と、これを無償でやっているんですよね。

 思えば今から5年前の2016年、DeNAが運営していた医療系情報サイト「WELQ」問題があり、経営陣が謝罪会見をするまでの騒動になりました。あの問題は「キュレーションサイト(他サイトからの情報を編集する形で掲載するサイト)の是非」だけでなく「他サイトから文章を盗用し、それを目立たないように見せる内部マニュアルの存在があり組織的関与だった」など複数の問題をはらんでいましたが、あの問題をきっかけにキュレーションサイト自体が問題視され、キュレーションの代表ともいえるサービス「Naverまとめ」も昨年でサービスを終了しています。

「キュレーションして他から引っ張ってきて楽して情報提供する」から、「自分でコンテンツをつくる」傾向に移ってきた感はありますね。その原動力は、いいねほしさなどの承認欲求も大いにありそうですが。

日影 進んで情報を発信してくれるユーザーは、場を提供している側にしてみたらとてもありがたい存在ですよね。ただ、当然ユーザーも「ここに公開して、いいねをもらいたい!」と思わせる魅力的なサイトやサービスだから、手間暇をかけて自分のコンテンツを投稿するのであり、事業者としては「ユーザーにここで発信したいと思わせる」場づくり、枠組みづくりがより重要になってきますね。

ECは「ストーリー」が重要な時代に

――前編で紹介されたSHEINでも「SHEINで爆買い」動画がSNSで人気であり、そして、Lemon8はコンテンツそのものをユーザーが作成していますよね。「UGC(User Generated Content/一般ユーザーによってつくられたコンテンツ)」の力がますます強まっているな、と思いました。ただ見たり聞いたり買ったりするだけでなく、自分自身も何かを発信したい、というユーザーの欲求があるのでしょうね。

日影 さらに、それは日本だけでなく世界中ですからね。これらは砂粒の一つひとつのようなものであり、集めて数的には大きなものになったとしても、「質的」には、いわゆるそれまでの「マス」的なものになるかといわれれば、そうではないと思います。

 SHEINの爆買い動画は「マス」ではないものですが、それが通じる中においては、購買においても強い影響力があります。さらには、今までは砂粒の一つひとつだったものがアプリを通じて世界中の人とつながることで、マスとはまた異なるタイプの影響力を持つようになったのではないでしょうか。

――その界隈では有名なユーチューバーやインフルエンサーも、ツイッター上の有名人も、知らない人にしてみたら「誰?」ですもんね。一方で、「著名インフルエンサー○○さんが勧めるあの商品」は、その人の熱心なフォロワーにしてみれば、マス的な「遠い」有名人が勧めるよりも響いたりするでしょうしね。

日影 「テレビや新聞が勧めるから買う」から「購買に至るまでの情報から紹介するまでのストーリーを大事にする」という流れが、特に若年層を中心に強まっています。ECにとって、これからはストーリーがキーワードになってくるのではないでしょうか。いいプロダクトだけでは売れない。ユーザーが「のれる」ストーリーをいかに設計できるか、UGCを想起させる仕組みをつくれるかが鍵でしょう。

 たとえば、アーティストが歌をリリースするときも、楽曲の良さだけでなく「歌やダンス動画でマネしてもらえるか」が大きくなってきます。視聴者は純粋な「視聴者」ではなく、もっと自分でやりたいんですよね。特にZ世代以降の、SNSによる評価社会を目の当たりにしてきた若年層は、その影響が強いかもしれません。

 一方で、こういった「コンテンツを自身でつくるほどどっぷりネットにハマっている」ことへの反動もくるのではないのかなとも、個人的には思っています。特にここ1年で、コロナ禍でオンラインでのコミュニケーションがフィーチャーされましたよね。行き過ぎた反動も、どこかでくるのではないのかなと。

 前回、つながらないSNSの「Gravity」を紹介しましたが、つながりすぎることへの反動の一つの表れなのかなと思います。また、これは当社も開発にかかわっているので手前味噌ではありますが、東急株式会社とリリースした「common」は地域を限定したSNSです(現在は二子玉川エリアで提供)。街情報のアプリなのですが、アイコンは決められたパターンから選ぶ形で、いわゆるハンドルネームもありません。投稿にコメントやいいねは付けられるのですが、フォロワーなどの仕組みもありません。

――UGCが過熱する一方で、そういった「RT、いいね、フォロワー数、チャンネル登録者数の数字合戦」にはほとほとうんざりという、相反する潮流が同時に存在しているのはよくわかります。「寂しかったり、自己表現はしたいが、SNSの数字合戦にはうんざり」というニーズに向き合うサービスが、さらに増えていくかもしれませんね。
(構成=石徹白未亜/ライター)

石徹白未亜/ライター

石徹白未亜/ライター

ライター。得意分野はネット依存・同人文化(二次創作)・ファッション。ネット依存では自身の体験をもとに書籍『節ネット、はじめました』(CCCメディアハウス)を執筆、NHK『ハートネットTV』、フジテレビ『バイキング』、朝日新聞、週刊文春等メディア出演多数。個人に向けたスタイリストとしても活動しており、著書に男性スーツ本『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。』(CCCメディアハウス)。ユニ・チャーム株式会社でのスーツ着こなしセミナーなど、ファッション研修も多くの実績あり。おうち大好きインドア派。同人誌と串揚げとしめさばとビールで生きてます。
●「主なプロデュース作品
『何になりたいかわからないけど就活を始めるあなたへ まず自己分析をやめるとうまくいく』辻井啓作(高陵社書店)
『自分のイヤなところは直る! 』牧野秀美(東邦出版)
『英語がサクッと口から出る 英語の「筋トレ」4センテンス繰り返しCDドリル 初級編 』渡部泰子(主婦の友社)

Twitter:@zPvDKtu9XhnyIvl

『節ネット、はじめました。 「黒ネット」「白ネット」をやっつけて、時間とお金を取り戻す』 時間がない! お金がない! 余裕もない!――すべての元凶はネットかもしれません。 amazon_associate_logo.jpg
『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。 会話術を磨く前に知っておきたい、ビジネスマンのスーツ術』 「使えそうにないな」という烙印をおされるのも、「なんだかできそうな奴だ」と好印象を与えられるのも、すべてはスーツ次第! amazon_associate_logo.jpg

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