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日鉄、トヨタとの関係悪化を気にせず容赦ない値上げ…訴訟招いたトヨタの自業自得

文=桜井遼/ジャーナリスト
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トヨタ・ランドクルーザー(「Wikipedia」より)

 特許をめぐるトヨタ自動車日本製鉄の争いが場外乱戦に突入している。

 両社の争いが表面化したのは、日鉄が特許侵害を主張する中国・宝山鋼鉄の電磁鋼板を、トヨタ車に採用しているとしてトヨタに電動車の製造・販売停止と損害賠償を求めて提訴したこと。日本鉄鋼連盟の会長を務める日鉄の橋本英二社長が会長記者会見で「特許は知らなかったでは済まされない」と発言、これが報じられるとトヨタ側が「トップ同士で話がなかったのは残念」と、日鉄がいきなり提訴に踏み切ったことを批判。泥沼の争いに発展する様相だ。

 日鉄が11月2日に発表した連結業績予想によると、2022年3月期の純利益は5200億円と、新日本製鉄と住友金属工業が経営統合した12年度以降、過去最高益となる見通しとなった。前期まで2期連続赤字だった日鉄の業績が急回復した理由は、トヨタに鋼材の納入価格の値上げを認めさせたことが大きい。日鉄は、業績の足を引っ張ってきた主な原因がトヨタにあることを改めて実感、トヨタへの対決姿勢を崩さない日鉄を勢いづかせている。

トヨタの言い訳に日鉄は呆れ顔

 日鉄が最大の顧客であるトヨタを特許侵害で前触れなく提訴して世間を驚かせたのは、10月14日のこと。日鉄は、宝山鋼鉄が製造する電動車の部品に必要な電磁鋼板が、日鉄の特許を侵害していると主張。宝山鋼鉄の電磁鋼板を採用しているトヨタに対して、200億円の損害賠償と、宝山鋼鉄の電磁鋼板を搭載しているトヨタの電動車の製造・販売の差し止めを東京地裁に提訴した。

 これを受けてトヨタは「本来、材料メーカー同士で協議すべき事案」とした上で、宝山鋼鉄製電磁鋼板が「他社の特許侵害がないことを確認して契約した」と、トヨタ側に非はないとするステートメントを公表した。ここから非難合戦が繰り広げられている。

 鉄鋼連盟の記者会見で、トヨタを提訴後初めて公の場所に姿を現した日鉄の橋本社長は「社長として(特許侵害は)精査を重ねて合理的に判断した」と述べ、勝訴に向けて自信を示した。トヨタが宝山鋼鉄から特許侵害がないことを書面でも確認したとしている点についても「知らなかったではすまされない」と、トヨタの説明を真っ向から批判した。さらに、橋本社長は「トヨタを狙い撃ちにしたことではない」とし、特許を侵害しているとみられる価格の安い材料を購入する企業を牽制した。

 橋本社長の記者会見での発言が報じられると、トヨタ側は敏感に反応した。トヨタは定期的にオフレコの記者懇談会を実施しているが、急遽トヨタの長田准執行役員がオフレコを解いたかたちでオンライン懇談会を実施し、トヨタの豊田章男社長の意を汲むかたちで「(事前に)トップ同士で話がなかったのは残念」と、日鉄がいきなり提訴したことを批判した。さらに長田執行役員は、橋本社長が鉄鋼連盟の会長会見で電磁鋼板特許訴訟の問題を回答したことに対しても「あんなとこでやるのか」と苛立ちを示した。

 トヨタの豊田社長は日本自動車工業会(自工会)の会長を務めているが、日鉄の電磁鋼板提訴問題に加え、トヨタ系販売店での不正車検やパワハラによる社員の自殺など、相次いで不祥事が発覚していることから公の場に姿を現すことを控えており、自工会会長会見も中止している。ただ、日鉄の橋本社長が提訴するだけでなく、トヨタの対応を批判していることに我慢できず、長田執行役員を代役に立てて主張だけはしたかったようだ。

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