「FIRE」はFinancial Independence, Retire Earlyの略語で、「経済的自立・早期リタイア」のこと。
FIREでは、資産運用・投資による不労所得を増やすことで経済的な自立を目指すので、この資産運用・投資を堅実に行えるかどうかが鍵となります。投資なので、資産が増えるだけでなく、減ることもあります。したがって、お金が減る可能性を減らしながら、いかにお金を増やせるかがポイントです。
今回は、FIRE資産を増やす投資戦略を考えていきたいと思います。
FIRE資産は「長期」「積立」「分散」の王道ルールで増やすのが鉄則
FIREに必要な資産をつくるには、支出の削減と収入アップで捻出した貯蓄用資金を投資信託や株、ETFなどで運用して増やしていきます。そして、FIRE目標額を達成したら、そのお金を“4%ルール”で切り崩しながら生活をしていきます。
そもそも、なぜ資産運用(投資)が必要なのかというと、定期預金などの安全資産は金利が低く、お金が増えないからです。
定期預金と投資を比較すると、その差は一目瞭然。月10万円を30年間積み立てた場合、定期預金だと約3605万円ですが、年利4%で運用すると約6941万円。3000万円以上の差が生まれます。これが資産運用の力なのです。
ただし、投資には銀行の預貯金のような元本保証がありません。つまり、資産が減る可能性もゼロではないということです。そこで取り入れてほしいのが、「長期」「積立」「分散」という投資の王道ルールです。
「長期」とは、投資期間を長く取ること。複利の効果で資産増加のスピードが加速します。「積立」とは、1回に大金を投資するのではなく毎月コツコツ積立投資すること。高値掴みを防ぐ効果が得られます。「分散」とは、投資先を分散すること。価格の変動を抑え、安定したリターンを狙うことができます。
これらのルールを守ることで、リスクを抑えながらリターンを狙うことができます。
守りと攻めを意識して戦略的に投資する「コア・サテライト戦略」
金融商品のリスクとリターンは表裏一体の関係にあります。たとえば、FXや仮想通貨のように値動きが大きい商品は、大きなリターンが期待できる代わりに失敗のリスクも大きくなります。こうしたハイリスク・ハイリターンの商品は、人生を支える収入源をつくるFIREには基本的に適しません。
一方で、債券や預貯金のような商品は、損失はほとんどないもののリターンも期待できません。こうしたローリスク・ローリターンの商品も、生活費を賄うほどの十分な利益を得ることが難しいため、FIREには適さないのです。
そこでおすすめしたいのが、投資信託、株式、ETFです。これらはリスクとリターンのバランスが良く、FIREのための資産運用にも適した金融商品といえます。なかでも、投資信託による長期積立投資では、ドル・コスト平均法によるリスク軽減効果も期待できるため、ローリスクで確実に資産を増やすことができるのです。
ドル・コスト平均法とは、毎月同額で積立投資することで、金融商品の価格が安いときには多く、高いときには少なく買う手法のこと。平均購入単価を平準化させ、元本割れリスクを少なくすることができます。
また、投資する金融商品の割合を決める際には、資産を安定的に運用する「コア」と、積極的に運用する「サテライト」に分けた、「コア・サテライト戦略」がおすすめです。
守りの資産であるコアはインデックス型投資信託などで堅実に増やしていく一方で、攻めの資産であるサテライトは個別株などで高いリターンを目指すというように、攻めと守りの両輪でFIREを目指しましょう。
FIREへの最短ルート!アメリカへの投資が大本命
FIREを目指して成長力のある投資信託を選ぶなら「アメリカの株式」がおすすめです。アメリカには、アップルやマイクロソフト、アマゾンなど世界経済を牽引する大企業が多く存在しています。米国市場全体の時価総額は世界の約4割を占めており、その規模はもちろん世界一です。
上のグラフのように、米国市場は短期的には好不調の波はあるものの、長期的な視点では上昇トレンドを続けており、FIREで投資信託による長期積立投資を行う場合などにも、まさにうってつけといえるでしょう。
特に米国の主要株価指数である「S&P500」「NYダウ」「ナスダック」は、日本の主要株価指数である「日経平均株価」と比べても、その成長力が桁違いであることがわかります。
アメリカ狙いの投資信託にも、いくつか選択肢があります。王道はS&P500など米国市場のインデックス型投資信託を選ぶこと。そして先進国株式(MSCIコクサイ・インデックス)や全世界株式(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)などのインデックスへ投資する方法もあります。
先進国株式や全世界株式と聞くと一見わかりづらいですが、実はこれらの投資先の6〜7割をアメリカが占めています。こういったアメリカを含む指数に連動した「インデックス投資」をすることで、米国市場の成長の恩恵を受けることができるのです。
ただし、相場がずっと上がり続けることはなく、必ず下がるときは来ます。直近もロシアによるウクライナ侵攻、米中対立、原油高によるインフレなど、さまざまな要因で乱高下相場となっています。これまで市場は都度回復してきていますが、FIREでは、一時的ではあっても資金が減る可能性を考慮して計画を立てる必要があります。
税制優遇口座を優先しながら課税口座も使って投資する
投資信託の積立投資では、まずはつみたてNISAやiDeCoを利用します。そして、それぞれの制度で非課税になる上限を超えてもまだ資金に余裕がある場合は、課税口座で投資を行いましょう。
課税口座とは、つみたてNISAやiDeCoのような税制優遇を受けられる口座とは違い、投資して得た運用益に20.315%が課税される、普通の証券口座のことです。米国株、ETF、日本株といった金融商品も、課税口座を使って投資します。税金が引かれるといっても、銀行にお金を預けるよりずっと有利にお金を増やすことができます。FIREを目指すのであれば、課税口座も臆せず使っていきましょう。
つみたてNISAとiDeCoは併用してフル活用するのが基本ですが、自営業者やフリーランスの人だと、そうとも限りません。たとえば、毎月の積立可能額が10万円程度なのに、つみたてNISAで3万3333円、iDeCoで限度額いっぱいの月6万8000円まで積み立てると、iDeCoのお金は60歳になるまで資金ロックされるため、使えないことになります。
万が一のときやFIREに向けて流動資金を確保しておくために、たとえば、iDeCoへの積立は月2~3万円程度に抑え、残りは課税口座で運用するなど、iDeCoが60歳まで引き出せない点を考慮して投資プランを考えるとよいでしょう。
(文=頼藤太希/マネーコンサルタント、株式会社Money&You代表取締役)
今回の内容も含めて、監修したムック『いちからわかる!FIRE入門』で紹介していますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
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