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東宝、27年ぶりに世襲復活、松岡修造の兄が社長就任…華麗なる一族の歴史

文=Business Journal編集部
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東宝のHPより

 東宝は5月26日に開く定時株主総会と取締役会で松岡宏泰取締役常務執行役員(55)が社長に昇格する。島谷能成社長(70)は代表権のある会長になる。名誉会長の松岡功氏の息子で世襲だ。創業家出身の社長は1995年に退任した功氏以来、27年ぶりのことだ。

 松岡宏泰氏の父方の曽祖父が阪急電鉄や宝塚歌劇団を創設した小林一三氏だ。母方の曽祖父は松岡汽船の創業者の松岡潤吉氏。父の功氏はデビスカップ日本代表だったテニス選手。宏泰氏の弟の松岡修造氏は元プロテニスプレーヤーというテニス一家でもある。

 宏泰氏は1966年、イタリア・ローマで生まれた。慶應幼稚舎(小学校)から中・高・大学(法学部)と進んだ慶応ボーイ。学生時代はテニス三昧の日々だった。弟の修造氏はテニスのプロへの夢を追い続け、兄の宏泰氏は米国へ留学した。

<大学の休みとなれば、兄は弟のツアーに同行し、試合前で神経質になっている修造さんを安心させるため、試合中に食べるバナナを20本も持ち歩いたこともあったという>(「家庭画報」<世界文化社/2015年2月号>より)

 宏泰氏は慶應大学卒業後、米国に留学。オルブライト・カレッジで英語を学び、ピッツバーグ大学経営大学院に進んだ。映画会社、20世紀フォックスでアルバイトをしたのは東宝の国際部の社員が紹介してくれたアルバイト先だったからだ。92年、経営大学院を修了すると、ハリウッドの大手芸能事務所、インターナショナル・クリエイティブ・マネジメントに入社。ハリウッド映画会社の裏側を学んだ。就職した先は、外国映画の輸入・配給会社、東宝東和社長の白洲春正氏の紹介だった。

 帰国後の94年、東宝東和に入社。2008年に東宝東和の社長に就任。14年から東宝の取締役なった。21年、取締役常務執行役員に就き、映像本部で映画調整、映像企画、国際の3つの事業部門を担当した。宏泰氏の社長就任は創業家への大政奉還の側面を持つ。

小林一三氏は大衆の心をとらえた

 大正時代、大衆文化が花開いた。映画、大衆演劇などが人気を博した。鉄道沿線の宅地開発、終着駅には宝塚歌劇、始発駅には百貨店と、大衆が求めるものを安く提供することで、小林一三氏は事業を拡大していった。1920(大正9)年、阪急梅田駅構内に5階建ての阪急本社ビルを建てた。1階は白木屋(のちの東急日本橋店)に貸し出し、2階には直営の阪急食堂を作った。

 個々の利益はそろばんに合えば小さくてもいい。阪急食堂ではソースライスという名前の幻のメニューが大評判を呼んだ。顧客はライスだけを注文してソースをかけて食べるのである。カレーの替わりにソースをかければ、一皿5銭で食べられた。実際にはソースライスというメニューはなかったのだけれど、一皿20銭のカレーライスは阪急食堂の名物となり売れに売れた。

 本社ビル1階に入店した白木屋は、当時としては珍しい売り上げスライド制の家賃にした。一三氏は白木屋を使って梅田地区にターミナルデパートをつくった場合、商売として成り立つかどうかの実験をしたかったのだった。売り上げにスライドした家賃だから、売り上げの実態をすべて把握できた。

 白木屋の商売の結果は上々だった。すると一三氏は白木屋との契約を打ち切り、直営の阪急マーケットをオープンした。阪急沿線のお客様に「一番安い、一番良い物を(供給する)」。これが一三氏のセールストークの真髄だった。

バブルに躍らされ脱・創業家

 阪急東宝グループの事業を継承したのは、一三氏の三男の米三氏だった。長男(富佐雄さん)は早世し、二男の辰郎氏は松岡汽船の松岡家の養子に出ていた。しかし、米三氏は子宝に恵まれず、辰郎氏の長女・喜美子さんを養女として迎えた。喜美子さんの婿養子になったのが小林公平氏だった。公平氏はもともと三菱グループと親密だった三村家の出だった。公平氏の兄の三村庸平氏は三菱商事の社長・会長を歴任した。庸平氏は三菱商事の食品畑で活躍した。一三氏の長男も三男も子どもがいなかったため、二男の松岡辰郎氏の家系が阪急と東宝の事業を継承することになったのだ。

 2003(平成15)年、公平氏が失脚する。1987(昭和62)年から2003年まで社長・会長として君臨してきたが、バブル経済に踊った末に不動産関連投資に失敗。過去最悪の最終赤字に陥り、引責辞任した。宝塚ファミリーランドの閉鎖など「阪急文化を崩壊させた」(関係者)と酷評され、公平氏は批判の矢面に立たされた。

 公平氏の長男の公一氏は宝塚歌劇に子供の時から親しんできた阪急文化の申し子であった。阪急に入社したが、宝塚というフィールドで演出家、プロデューサーとして活躍。宝塚歌劇団の理事長を務めた。東宝名誉会長の松岡功氏は阪急電鉄の経営にはノータッチだった。経営陣は“脱創業家”へと一歩、踏み出していた。

 阪急阪神東宝グループは大きく分けると、阪急電鉄、阪神電鉄の鉄道を傘下にもつ阪急阪神ホールディングス、阪急阪神百貨店など流通を展開するエイチ・ツー・オー・リテイリング(H2O)グループ、映画の東宝を中心とする東宝グループが3本柱である。松岡宏泰氏が東宝社長に就く。グループの“本丸”ともいえる阪急阪神HDの役員に就くかどうかに関心が集まる。
(文=Business Journal編集部)

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