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楽天G、楽天モバイルの巨額赤字を高収益の金融子会社の上場で穴埋めか

文=竹谷栄哉/フリージャーナリスト
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楽天モバイルの公式Twitterアカウントより

 楽天モバイルが7月から通信容量1GB未満の場合に無料で利用できる現行プランを廃止するのを目前に、KDDIなどの競合他社が楽天モバイルからの離反ユーザーを狙い撃ちにしている。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、楽天市場のヘビーユーザーなど楽天経済圏を支える主要顧客の楽天モバイルへの乗り換えを促したい考えだが、顧客流出は続く。

 金融子会社2社の株式市場への上場を発表したが、携帯電話事業が計上する巨額赤字を埋めるためと見られる。時代に逆行する親子上場な上、「上場益で穴埋めしないといけないほど財務状況は悪化している」(証券関係者)との見方も強まっている。

povoが楽天端末も使用対象機種にするなど露骨な狙い撃ち

 楽天モバイルは7月から0〜3GBは月額1078円(税込、以下同)、3〜20GBは月額2178円、20GBを超過した場合は月額3278円とする新料金プランに移行する。このため、KDDIのサブブランド「povo」やソフトバンクの「LINEMO」などにユーザーが流出している現状については前稿で詳報した

 0円で回線を維持できるpovoは、特に熱心に楽天モバイルからの離反ユーザー獲得に取り組んでいる。5月29日に公式ツイッターで「ちょっと待てよ。povoって基本料ゼロ円だったようn…」とツイートし、露骨に乗り換えをアピール。さらに、楽天オリジナル端末の「Rakuten BIGs」「Rakuten Hand 5G」を利用可能端末に追加した。

 筆者が東京都内で確認したKDDI系の携帯販売ショップでは「Rakuten UN-LIMIT 無料キャンペーン終了していませんか?」と銘打ち、auやpovo、格安スマホのUQmobileへの乗り換えを促すなど店頭レベルでも楽天モバイルからの離反ユーザーを奪おうと躍起になっている様子がうかがえる。

 KDDIのほかにも、ソフトバンクのLINEMOは「半年間、実質0円」を打ち出し、ソニーネットワークコミュニュケーションの格安スマホ業者NUROモバイルも「光回線と組み合わせると1年間0円」など顧客獲得競争が熾烈になっている。

楽天の三木谷会長、「楽天経済圏の主要顧客の乗り換え」を狙うと発言

 楽天モバイルの新プラン移行への突然の発表がユーザーの反感を買った経緯について、三木谷会長による「ぶっちゃけ、ずっと0円で使われても困る」とのぶっきらぼうな発言が大きな要因となったことはすでに報じたが、6月4日付の日本経済新聞のインタビュー記事によると、今後は楽天市場のヘビーユーザーなど「楽天経済圏」を支える主要顧客約4000万人をメインターゲットに、楽天モバイルへの乗り換えを進めるという。

 そもそも楽天グループが携帯電話事業に進出したのは楽天ポイントを通じた特典などにより、グループ内企業のなかでユーザーの囲い込みを強化することが目的であった。その意味では、経営上コストでしかない利用料0円目的のフリーライダーを切り捨て、楽天経済圏の主要顧客に的を絞るのは合理的な戦略とはいえる。ただ、今回の三木谷氏の発言のインパクトが多くの楽天モバイルユーザーに「再び突然値上げされるのではないか」との懸念を与えたことは事実であり、三木谷氏の目論見通りにことが進むかは注視が必要だろう。

銀行と証券の子会社で上場準備を発表、市場関係者「上場益で携帯事業の赤字を補填」

 楽天グループは子会社の楽天証券の上場準備を始めたと先月24日に発表した。これより前に楽天銀行の上場準備を始めたとも発表しており、金融系子会社2社を上場させることを目指している。

 楽天グループの携帯電話事業は巨額の赤字を計上している。携帯基地局の建設費用がかさみ、これまでの設備投資は当初計画の6000億円を上回り、1兆円規模にまで拡大している。コロナ禍の巣篭もり需要で楽天市場などのEC事業は好調で推移したが、そこで上がった利益をすべて飲み込むほど足を引っ張っており、楽天グループの22年1〜3月期連結決算では、携帯電話事業部門の1350億円の大幅な営業赤字が重石となり、全体では1126億円の営業赤字を計上した。

 銀行と証券の純利益は合計で年300億円規模と、グループのなかでも高収益企業だ。今回の上場について市場関係者は「現在入ってくる安定した収益を犠牲にしても上場益で手元資金を確保しなければいけないほど、携帯電話事業による赤字拡大は楽天グループの懸念材料となっている」と分析する。

 また、子会社の上場は親子上場と呼ばれ、日本特有といっていい企業社会の慣行だ。子会社の株主が親会社の決定を覆すことが難しいなどの弊害から、日本政府もコーポレートガバナンス強化の観点から近年問題視しており、解消を呼びかけている。楽天の今回の上場準備はこれに逆行するものであり、この観点でも議論を呼びそうだ。

 楽天グループは携帯事業を本格的に開始してから2年が経ち、人口カバー率97%を達成、契約者数が500万人を超えるなど自信を深めている。ひとまず、三木谷氏が公言したように楽天モバイルが23年中に単月黒字化を達成できるかどうかが、焦点となるだろう。

(文=竹谷栄哉/フリージャーナリスト)

竹谷栄哉/フリージャーナリスト

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Twitter:@eiyatt.takeya

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