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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

ライフネット生命、夢のような福利厚生「ライフサポート休暇」創設

文=鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表
ライフネット生命、夢のような福利厚生「ライフサポート休暇」創設の画像1
ライフネット生命保険 人事総務部マネージャーの関根和子氏

 企業の福利厚生の充実は、求人や社員の定着率に影響を与えるといっても過言ではない。福利厚生プログラムを扱う企業もあまたあるが、導入ともなると高額の提携料が必要な場合もある。中小企業にとっては福利厚生の充実は「分かっているけど、資金もなければ人もいない」というのが現状ではないか。資金も労力もかからず、インフラ整備もしなくていい、さらに従業員に喜ばれる――。

 そんな夢のような福利厚生が、ライフネット生命保険ライフサポート休暇だ。2016年に創設された同制度は従業員に非常に好評ばかりか、会社にとってもメリットが大きいという。同社の人事総務部マネージャーの関根和子氏に聞く(以下、敬称略)。

特別休暇に着目の理由

――貴社はライフサポート休暇、いわゆる特別休暇制度を創設されたとのことですが、福利厚生のなかで特別休暇に着目された理由は?

関根 働きやすい環境を整えることは企業にとって大命題です。当社には定年制度がありません。また社員は30代から40代の子育て世代がメイン層で、年齢層は幅広いといえます。このため、どの年齢層にも親しみやすく、使いやすい休暇制度を社員のニーズに添って、ともに作っていきたいと考えていました。

――何かきっかけがあったのですか?

関根 はい。当社は若い世代の保険料を半分にして、子育て世代が安心して赤ちゃんを産み育てられる世の中にしたいという思いをもって開業された生命保険会社ですが、当社で働く社員に対しては、子育て世代に対して福利厚生などがほとんどありませんでした。何かできることはないか、という経営陣の課題感が人事担当に伝えられたことが検討のきっかけです。

 当社には社員の親睦を目的に、手話や子育て部など約20もの部活動があります。部活動といっても部員は10名以上が在籍していて活動を社内SNSに投稿すると、年に2万円の活動費を支給するという決まりで、部の創設や運営も社員の自主性に委ねています。コロナ禍では活動は難しくなりましたが、例えば「常磐線部」といって、常磐線の各駅に停車して飲みニケーションを図る部活もあるんですよ。そうした活動の中の一つである「子育て部」に、人事担当からその課題感を相談する形で休暇制度の方向性を決定していきました。

――子育て部というのは?

関根 昼休憩時に5~10名ぐらいが各自お弁当を持ち寄って、子育てに関することを話し合っています。当社の代表取締役社長の森も子育て部員ですが、部活動では社長が参加するスタンスではなく、一人のパパ部員として参加しています。部員は年齢もキャリアも違いますが、フラットな立場で便利グッズの情報交換をしたり、子育てに関するアドバイスをしてもらったりと和気藹々とやっているようです。

気持ちよく使える休暇

――社長が部活動に参加するというのは、なかなかないと思いますが、風通しのいい企業風土だから可能なような気がします。そんななかで特別休暇制度が誕生したんですね。

関根 はい。当社には産休や育児休暇、時短勤務が当然あります。しかし、小さな子どもがいると突然、何が起こるか分かりません。「子育ての社員を応援するために制度化したら?」という意見が高まる一方で、子育て部員から「子育て特権と思われないか」との意見もありました。子育て中に限らず、独身の社員、社員の親やパートナーが病気になる可能性はあります。本人の療養や家族の看病で休まざるを得ないケースが発生することになります。子育て部と人事部としても、不平等を助長するような印象を与えるものではなく、ダイバーシティの観点から社員全員に当てはまり、気持ちよく使える休暇を創設しようとの方向性を導きました。

――そこで16年から新たな休暇制度をスタートされた。     

関根 それがライフサポート休暇です。これは社員のライフサポート・ニーズに合わせて“毎年”内容を見直す特別休暇になります。16年にスタートした時は7DAYS休暇として、年に7日以上の年次有給休暇等取得推奨を目的とした休暇を設定しました。

――風通しがいい企業だと思いましたが、ひょっとして実は有給休暇を申請しにくい雰囲気なんですか? 

関根 そうではないんですよ。当社はイノベーションを起こす企業を目指し、実際、保険業界にもオンライン生保という新しいジャンルを確立しました。当社では一人ひとりが専門性を持って業務に取り組み、チームが個人をサポートしています。一人で新しいことにチャレンジすることはメリットであり、魅力である半面、一人で仕事を抱えてしまう社員も出てくるケースがあります。人事部としても「休暇を取るのはお互いさま」という意識を社員に根付かせ、休みを取るときはしっかり取ってメリハリを付けて、パフォーマンスを上げてほしいと願っていました。

7DAYS休暇創設の背景

――7DAYS休暇を創設したのは、そんな背景があったのですか。

関根 7DAYS休暇をスタートしたことは、社内に会社として休暇を取得してほしいというメッセージを伝えることになりました。有休の取得を推奨したことで、社員にも一定日数の有休を取得してもらうことになりますので、積極的に有休を取らなかった社員の意識も変わってきました。また、有休を取得するために仕事の段取りや効率性を自ずと考えるようになるので、「お互い様」という意識も深まったように感じています。翌年から7DAYS休暇については、導入目的は達成したとみなし、新たにボランティア休暇を1日間、堂々と部活動休暇を1日間設けることにしました。

――ボランティア休暇や堂々と部活動休暇はどういったものなんですか?

関根 前者は社員が参加したいボランティア活動であればよく、ボランティア団体の活動に参加しても、たとえばお子さまの学校のPTA活動の参加でもOKとしています。後者は同時に3人以上の認定部員が平日の部活動を行うために取得すれば認めるものです。

 さらに同社の特別休暇の見直しは継続され、19年からは医療に特化した特別休暇を新設し、ナイチンゲールファンドという他にない特別休暇を設けることになる。

(文=鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表)

※後編へ続く

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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