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小林敦志「自動車大激変!」

中国BYDのEVバス&タクシーが複数走行…“日本車の楽園”で衝撃を受けた理由

文=小林敦志/フリー編集記者
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ジャカルタ市内を走る中国BYDのBEV路線バス
ジャカルタ市内を走る中国BYDのBEV路線バス

 前回、3年ぶりにインドネシアのGIIAS(GAIKINDOインドネシア国際オートショー)2022を訪れた際の様子について述べた。インドネシアは日本車の販売シェアが90%を超える“日本車の楽園”ではあるが、今回のショーでは韓国や中国系のブランドが目立っている感が否めなかった。

 ショー取材を終えた後は、ジャカルタ市内に宿を移し、街の様子を見ることにした。朝、ホテルを出てジャカルタ市の目抜き通りとでもいうべき大きな通りへ出ると、突然複数の中国・比亜迪(BYD)製のBEV路線バスが通り抜けて行った。コロナ禍前の最後に訪れたときは日本のようなワンマンバスが整備され始めた段階で、車両は内燃機関車ばかりでBYDのBEV路線バスは見たことがなかったので、いきなり衝撃を受けてしまった。

 2019年に訪れたときは最大手のタクシー会社がBYD製MPVタイプのBEVタクシーを導入しており、それ自体は数がそれほど増えていない様子だったが、さらに少数ながらBYD製のミニバンタイプのBEVタクシーが導入されていた。

ジャカルタ市内の街の様子
ジャカルタ市内の街の様子

中国ウーリンの車も急増

 一般乗用車レベルでは、BEVはほとんど普及していない様子であった。タイ・バンコクあたりでもよく見かけるテスラも滞在中は1台も見ることができず、唯一、韓国の現代自動車(以下、ヒョンデ)の「アイオニック5」を1台見かけた程度であった。

 しかし、内燃機関車ではあるものの、中国のウーリン(上汽通用五菱汽車)の車をかなりの頻度で見かけたことは印象に残った。MPVの「コンフェロ」や「コルテズ」、SUVタイプの「アルマズ」など、ウーリン車をとにかく多く見かけた。ショー会場にブースを構えていたのは、ウーリンのほかは同じ上海汽車系のMG(上海汽車)や奇瑞(チェリー)、DFSK(東風小康)となっていたが、チェリーは10月から販売開始予定となっていたし、MGもインドネシアに進出してまだ間もない。DFSKは市場参入してウーリン並みに日が経つのだが、戦略面で失敗もあったようで、今では撤退の噂もささやかれていた。

ジャカルタ市内を走る中国ウーリンの車
ジャカルタ市内を走る中国ウーリンの車

 2017年にウーリンがインドネシアで新車の生産を開始した頃の中国車のイメージは、日本での様子とほぼ同じだった。そのため、中国車をすすんで買おうとする人はかなり稀で、地元の中堅タクシー会社にタクシー車両として納められたりもしていたが、それにより耐久性の悪さを露呈してしまい、逆効果になったりもしていた。

 しかし、3年ぶりにジャカルタを訪れると、ウーリンをヒョンデ並みの頻度で見かけるようになっていたのである。新車市場の成長とともに四輪車ユーザーが多様化していく中で、中国車もインドネシアでの耐久性能などの向上を図りながら、選択肢として検討してもらえるようになったのではないかと分析できる。

 ただし、街なかを走るほとんどの車が日本車であることは変わらない。最大手のタクシー会社の車両はトヨタの「トランスムーバー」というコンパクトMPVタイプの車両がほとんどだし、上級タクシーとして「アルファード」も大活躍している。一般ドライバーレベルでも、インドネシアに限らずASEAN(東南アジア諸国連合)各国におけるトヨタ「アルファード」人気は相変わらずで、さらにインドネシアで目立っているのだが、トヨタ「ヴォクシー」も日本から完成車輸入されているにも関わらず大ブレイクしている。現状をまっすぐに見れば、確かにそこはまだ“日本車の楽園”であるのは間違いない。

ジャカルタ市内を走る「アルファード」
ジャカルタ市内を走る「アルファード」
ジャカルタ市内を走る「ヴォクシー」
ジャカルタ市内を走る「ヴォクシー」

 タイでも中国ブランドが進出したばかりの頃は市場では相手にされなかったが、今年春に3年ぶりにバンコクを訪れると、走っているBEVはMGかGWM(長城汽車)のものが多く、さらに日本車ばりにHEV(ハイブリッド車)を多くラインナップしていることもあり、BEV以外もよく売れていた。日本車で選択肢がないという現実が変わるのに時間がかかりそうな現状を考えると、インドネシアでも本格的にBEVが注目されるようになれば、バンコク同様に中国車の普及に弾みがつくことは十分想像できることである。

 3年ぶりにインドネシアを訪れると、ショー会場では韓国や中国ブランドが注目を浴びていた。そして、ジャカルタの街へ出ると、東京ではほぼすべてディーゼルエンジンの路線バスなのに、BYDのBEV路線バスが数多く走り、中国車が驚くほど増えていた。バンコク、そしてインドネシアを3年ぶりに訪れてみたら、このコロナ禍の3年の間に“日本車城”の堀がじわじわと埋められていた。その現実を日本メーカーは十分認識しているのか、おせっかいながら少々不安を覚えた筆者であった。

小林敦志/フリー編集記者

小林敦志/フリー編集記者

1967年北海道生まれ。新車ディーラーのセールスマンを社会人スタートとし、その後新車購入情報誌編集長などを経て2011年よりフリーとなる。

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