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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

1日3400個販売のクリームパン、食パンも絶品…茨城で大人気のパン店に迫る

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画や著作も多数あるジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、経営側だけでなく、商品の製作現場レベルの視点を織り交ぜて人気商品の裏側を解説する。

茨城で大人気のパン店に迫る
店頭に大量陳列された「奥久慈卵のとろ~りクリームパン」(筆者撮影)

 6月17日、茨城県水戸市(人口約27万人)の住宅街に新しいパン店がオープンした。店名は「ラ メゾン デュ パン クリハラ(La Maison du Pain KURIHARA)」で、日本語では“パンの家 栗原”の意味だという。

 東京都内の高感度ブランドが出店したような外観だが、実は地元資本。県内のひたちなか市と那珂市に「パン工房ぐるぐる」を運営する会社の新コンセプト店だ。

 ぐるぐるは地元密着型の店として10年以上の実績がある。なぜ、こうした店を開いたのだろう。オーナーに話を聞きながら「地域×パン店」の関係を考えてみた。

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「ラ メゾン デュ パン クリハラ」の外観。大手ファミレス店が撤退した跡に出店した(写真提供:ぐるぐる)

来店客に「パンの本当の価値」を伝えたい

「今回の店は、『パンの本当の価値を伝えたい』という思いで出店しました。お店を営業しながら、さまざまな取り組みを形にしていきます」

 ぐるぐる社長の栗原淳平さんは、こう語る。もともとパン職人で、パン競技会「iba カップ」の国内予選を勝ち抜き、来年ドイツで行われる決勝大会に日本代表として出場する。

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カフェを併設した店内で語る栗原淳平さん(写真提供:ひまわりコンサルティングファーム)

 水戸の店では、コンセプトとして「茨城県食材を中心に選び抜いた厳選食材を使い、素材のポテンシャルを最大に引き出すパン」を掲げる。その意味を説明してもらった。

「具体的な商品では『麦の香り』と名づけた食パン(400円+税)がその象徴です。原材料は『茨城県産小麦粉100%、パン酵母、塩、麹(一部に小麦を含む)、そして水』。フランスパンのバゲットとほぼ同じ材料でつくっています。専門的な言い方では、発酵と熟成をコンセプトに酵母と酵素の力を利用し、食材のポテンシャルを引き出した食パンです」(同)

 生地をこねる前段階にも時間をかけ、通常の食パンに比べて1日多く手間がかかる。「それも素材を感じていただきたいからです。日本でこの製法を採る店はないのでは」と話す。

 店内の設え(しつらえ)にもこだわった。たとえば接客カウンターの奥には、石臼挽き機を置き、訪問時間帯によっては横に置かれた小麦と一緒にガラス越しに見ることができる。製粉方法で一般的な「ロール挽き」に比べて、「石臼挽き」は少量生産しかできないが、挽いた小麦粉は、穀物のうまみを取り込むことができるという。

「じっくりと発酵、熟成をさせたパンは、和食でいえば、本格的な出汁(だし)からとった味噌汁を提供するような意識」と、栗原さんは話す。

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ガラス越しに「石臼挽き機」を見ることもできる(写真提供:ぐるぐる)

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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