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たかぎこういち「“イケてる大先輩”が一刀両断」

ヨーカ堂と宝島社の異色コラボ「&STANDARD」が残念な理由…売り場訪問

文=たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表、東京モード学園講師
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イトーヨーカドーの店舗(「Wikipedia」より)

 1991年以来縮小し続ける国内衣料マーケットで、その影響をもっとも受け売上が低減したのが百貨店と量販店である。「ユニクロ」「しまむら」などのカテゴリーキラーに顧客が流出し続け、対策として百貨店業界は自社買付で差別化された売場の展開に挑戦するが、どこも継続できていない。

 西武百貨店は海外デザイナーと組み、大きな広告戦略とオリジナル商品展開を試みた、鳴り物入りのオリジナル商品展開を数シーズンにわたり行ったが、全面的サポートを担当した伊藤忠商事だけがその果実を手にして、試みは打ち切られた。また、総合スーパーのイトーヨーカ堂の衣料品部門も外部人材やコンサルティング会社を採用して挑戦を続けてきたが、結果に結びついていない。

 そして今回、イトーヨーカ堂は出版社の宝島社との協業で衣料品・ファッション雑貨の新プロジェクト「&STANDARD(アンドスタンダード)」の商品を9月5日に発売した。斬新なアイデアの開発方法がどのような商品を生んだのか、店頭を訪問して検証してみた。

1.なぜ雑誌出版社とのコラボレーションなのか

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『アパレル業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(たかぎこういち/技術評論社)

 雑誌出版社にとってアパレル量販店は広告出稿元、すなわちクライアントであり、店頭商品のPRやタイアップ広告の掲載先である。今回「&STANDARD」は、レディス部門では「30歳になったら、ちょっといいものを」をテーマにする「SPRiNG(スプリング)」。メンズ部門ではモノマガジンとしては発行部数トップの「MonoMax(モノマックス)」とコラボ。商品開発は、衣料品、ファッション雑貨、ライフスタイル全般をターゲットにする計画となっている。商品は、ライフスタイル売り場のある97店舗とネット通販で販売。今後、1~2カ月ごとに約10アイテムずつ投入していく予定。10月の第2弾では、ペットの毛がつきにくい商品も提案する予定である。

 イトーヨーカ堂ライフスタイル事業部の神戸智子シニアMDはいう。

「当社の食品売り場に来てくれる若い顧客が衣料品売場にも足を運んでくれるよう、発信力を持ち感性に訴える商品の開発が課題だった。われわれは単品開発、機能性などに目が向きがち。今回、宝島社とコラボすることで、機能性だけでなく感性に訴える商品の展開、いつ来ても新しい商品が並ぶわくわく感を提供したい。課題のF2・M2(35~49歳の男女)の顧客開拓を推進する」

 イトーヨーカ堂が最も売場に呼び込めていない消費者世代を新企画で館内回遊に結び付ける。来店数を今後増やしにくい市場環境にあっては必要な施策である。

 宝島社は、年々販売部数が減るファッション雑誌業界のなかで部数を伸ばしている特異な企業である。その特徴は「付録」付きという先駆的な販売戦略である。約20年前、「sweet」が初めて有名ブランドのプロモーションを兼ねてスタートした企画で、読者からすれば有名ブランドのロゴが入ったバッグや小物が1000円台で手に入る魅力的なものであった。これにより「sweet」は女性ファッション誌売上部数1位を記録し続けた。

 発行部数は数十万部を誇り、バッグ市場にも影響を及ぼしたほどであった。書籍の書店流通を独占する取次会社からは猛反発を受けながらも、特殊な販売方法を定着させた。こうして他の出版社との大きな違いである物づくりとマーケティングのノウハウを蓄積してきた。2010年からはテレビCMでの販売促進も実施し、有名ブランドだけでなく自社の雑誌名を冠したオリジナル商品販売を成功させた実績もある。

 リアルの売場を持つイトーヨーカ堂と宝島社のノウハウが組み合わされれば、意外な化学反応が起こる可能性は高い。

2.「&STANDARD」の売場

 商品販売後最初の週末にあたる9月10日、11日、その売上は本企画の今後の展開を検証するために重要となってくる。筆者がある店舗の売場を訪れると、量販店展開を得意とするナショナルブランドが秋物商品を揃え、ポップアップスペースは手堅いスポーツブランドのセール販売に割かれていた。

 イトーヨーカ堂のオリジナルブランドである「KENT in Tradition」売場には、セールコーナーが残されていた。60歳以上の著者世代には懐かしいブランドである。人気イラストレーターとの半袖コラボ商品が販売されていた。良くいえば伝統的な定番商品だが、新規顧客を開拓する意志は残念ながらあまり伝わってこなかった。

&STANDARD」の売場では宝島社とのコラボレーションが大きく告知されている。両編集長の画像入り告知ポスターが目を引く。男女向けのアイテムが同じ売場で展開され、少し新鮮な印象を受ける。アイテムもアパレル、バッグと下着が同じコーナーに並ぶ。

「こんなの欲しかった、お洒落なのに便利すぎる!が集う、ワクワクする商品を提案します」というキャッチフレーズを掲げた商品開発だが、私見ながら、まずSKU(最低商品数)が少なすぎる。残念ながら付録感覚から抜け出ていない各商品の完成度。これらの既視感のある商品群が、目標とする30代から40代の消費者を引き寄せるのであろうか。 

まとめ

 イトーヨーカ堂は、この鳴り物入りのコラボレーションの展開期間を公表しておらず、商品消化率や売上を検証しながら進めていく考えかもしれない。総合量販店の衣料品MD(商品政策)では、さまざまな要素を考慮する必要があるが、現在の中心顧客に寄り添うような、シニア向け機能付きなどの差別化された商品のほうが確実に売上向上に結び付きやすいのでないだろうか。

 非現実的かもしれないが、ユニクロにOEM商品を依頼したり、しまむらの優良仕入先との新たな取り組みなど、過去の延長線上ではない思い切った発想転換をするMDが新しい顧客を呼び込むのではないか。

(文=たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表、東京モード学園講師)

コラボ「ユニクロ アンド マルニ」初日に完売続出の大ヒットの秘密の画像3
『アパレルは死んだのか』(たかぎこういち/総合法令出版)

たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表/東京モード学園講師

たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表/東京モード学園講師

カギ&アソシエイツ 代表/スタイルアドバイザー/コンサルタント(ファッション視点からの市場創造)/東京モード学園ファッションビジネス学科講師

1952年、大阪生まれ。奈良県立大学中退。大阪で服飾雑貨卸業を起業。22歳で単身渡欧後法人化代表取締役就任、1997年香港に渡り1998年、現フォリフォリジャパングループとの合併会社取締役に就任。オロビアンコ、マンハッタンポーテージ、リモワ、アニヤ・ハインドマーチなど海外ファッションブランドをプロデュースし、日本市場の成功に導く。また、第1回東京ガールズコレクションに参画。米国の有名ファッション展示会「d&a」の日本窓口なども務めた。時代に沿ったブランディング、MD手法には定評がある。2013年にファッションビジネスのコンサルティング会社「タカギ&アソシエイツ」を設立。著書に『オロビアンコの奇跡』『超入門 日・英・中 接客会話攻略ハンドブック(共著)』(共に繊研新聞社)、『一流に見える服装術』(日本実業出版社)、『アパレルは死んだのか』(総合法令出版)『アパレル業界のしくみとビジネスがしっかりわかる教科書』(技術評論社)などがある。
コンサルタントのタカギ&アソシエイツ

Instagram:@kohichi.takagi

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