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千葉哲幸「フードサービス最前線」

24時間営業の不夜城、新宿「龍乃都飲食街」の全貌…圧巻&唯一無二の施設

文=千葉哲幸/フードサービスジャーナリスト
24時間営業の不夜城、新宿「龍乃都飲食街」の全貌…圧巻&唯一無二の施設の画像1
カオスでギラギラの「横丁」をプロデュースし続ける浜倉好宣氏

 東京・新宿駅の東口、長く親しまれていたアサヒビアホールがしばらく工事にかかっていたが、ここに10月24日「龍乃都飲食街~新宿東口横丁」が誕生した。路面にあるメインの入口は竜宮城のイメージ。地上1・2階、地下1・2階で270坪、17店舗で構成され1000人を収容できる。圧倒的な規模であるが、施設の構造や色使いも印象深い。確実に街のランドマークとなることだろう。

食と映像で独特の一体感を醸し出す

24時間営業の不夜城、新宿「龍乃都飲食街」の全貌…圧巻&唯一無二の施設の画像2
10月24日にオープンした「龍乃都飲食街~新宿東口横丁」の入り口は竜宮城のイメージ

 施設内は地上1・2階が5店舗で24時間営業、地下1・2階は12店舗で12時から翌朝8時までの20時間営業。ほとんど“不夜城”である。具体的に施設内を構成する17店舗個々の店名と業種を紹介しよう。

■地上階、2階
・「ピザ&パスタ 赤煉瓦」:カジュアルイタリアン
・「中華食堂 羽衣楼」:ポップな中華食堂
■地上階、1階
・「台所 日ノ本」:日本全国食べ比べ
・「韓明洞」:カジュアル韓国流
・「Soi Bangla」:タイ屋台

 地上1・2階の入り口は新宿駅東口から明治通り方面に続く道路に面して「龍乃都飲食街」という看板を掲げている。名称通りに入口が竜宮城をかたどっていてよく目立つ。ここはランチ需要を取り込める場所であることから、ピザ&パスタ、中華食堂、タイ料理、日本大衆食堂、韓国大衆食堂と分かりやすいポピュラーな業種を集めて食事需要にも訴求している。地下も1・2階で構成されているが、地上階とは趣が異なる。

■地下階、1階
・「PUB TESUN」:カジュアル韓国パブ
・「牛の肉宮(NIKUGU)」:牛づくし
・「魚街道」:魚介酒場
・「肴鮨(ATESUSHI)」:つまみと寿司
■地下階、2階
・「焼鳥・鳥づくし 炎上(CHARCOAL GRILL)」:焼鳥・鳥料理
・「金豚帝(Kintontei)」:豚料理
・「貝道(KAIDO)」:貝づくし
・「焼肉酒場 焼肉肉蔵(NIKUKURA)」:焼肉酒場
・「TEPPANDO鉄板堂(TEPPANNYAKI&MONJYA)」:鉄板焼き・もんじゃ
・「香港屋台小龍(SHORYU)」:香港ネオン屋台
・「博多 屋台屋(HAKATAYATAIYA)」:博多屋台で九州飯
・「VIP」:泡と飯と唄

 地下階の店はそれぞれ専門性が高く、フードはお酒のおつまみ的なポジションになっている。店名に逐一ローマ字表記がなされているのはインバウンドを意識しているからだろう。ここで圧巻なのは地下1階から吹き抜けとなっている地下2階を見下ろす眺めだ。ネオン管でつくられた派手な看板が重なり合って天井部分を構成し、屋台が密集する地下2階のフロアと相まって夢の中に現れる空想の屋台市場を連想させる。

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「龍乃都飲食街~新宿東口横丁」の1階では“流し”が酔客を楽しませる

 心臓の鼓動のようなBGMと共に大きなモニターでテンポよく変化していく画像によって気分が高揚する。ここに昼間いても深夜いても時間を忘れて同じようなハイテンションのままでいることができるだろう。地上階では“流し”が客席を回り酔客の歌のお供を務める。地下階にはDJブースがあり音響のアートが楽しめる。カオスな空間であるが食と画像と音によって独特の一体感を醸し出している。

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「龍乃都飲食街~新宿東口横丁」地下1階から地下2階を見下ろす眺め
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「龍乃都飲食街~新宿東口横丁」の地下は気分を高揚させて20時間営業

プロデュースに目覚め「飲食バブル」を体験

 ここをプロデュースしたのは浜倉的商店製作所。代表の浜倉好宣氏は1967年神奈川・横須賀生まれで京都育ち。今日斬新な飲食プロデュースを行っている浜倉氏であるが、この原点は浜倉氏のユニークなプロフィールにあると筆者は認識している。

 浜倉氏は高校時代からアルバイトで飲食業に親しみ、卒業後は京都駅の商業施設内の飲食店で働いた。この店がメニューに統一性がまったくない店で、ここに改革を施したところ売上が商業施設内のトップとなった。ここで「飲食店プロデュース」に目覚める。

 24歳でFC展開をする弁当チェーンのスーパーバイザー(SV)を経験。その後、旅館の運営の手伝いをする。ここに出入りする庭師と知り合い、この庭師が経営する和歌山・南紀白浜の民宿で「残酷焼き」と出合った。これはイセエビやアワビなどを生きたまま焼くもので、焼き上がる過程で魚介類はもがいて残酷な感じだが、だんだんと香ばしい匂いが漂ってきて、食べるほうとしては食欲が増してくるというもの。この体験が後に“浜倉プロデュース”の飲食店の看板メニュー「浜焼き」となる。

 29歳で当時飛ぶ鳥を落とす勢いがあった大阪本部の飲食企業「ちゃんとフードサービス」に入社。ここで成長する飲食業のパワーを体得した。同社が東京圏に進出するに伴い東京に出向くことになり、これまで想像したこともない「月商1億円の飲食店」が数多く存在することを知る。ここで「飲食のマーケットは東京だ」と確信し、飲食プロデュースの分野で独立する。

 フリーの飲食プロデューサーを1年ほど経験してから、当時高級焼鳥店を展開している「フードスコープ」に2000年に入社、このとき34歳。ここでは高度な食材や調理法にこだわっていて、浜倉氏は人材採用も担当することになり「人材力」の重要性を知る。フードスコープでは米国ニューヨークに進出し高級レストランの「MEGU」をオープン。食通のニューヨーカーから注目されることになる。浜倉氏はここの運営も担当する。

 この当時「飲食バブル」の雰囲気が漂っていた。大衆的な料理や「おふくろの味」的な雰囲気が遠ざかっていく感覚があった。そこで浜倉氏は飲食バブルから離れることにして、大衆的な店づくりを志すようになった。

「人も街も再生させる」プロデュース

 浜倉氏がフードスコープを辞めて初めてプロデュースした飲食店は東京・門前仲町の店。ここを手掛けることになったのは「街の魚屋さんの再生」がきっかけだった。街の魚屋さんはスーパーマーケットチェーンに押され閉店を余儀なくされており、「鮮魚の居酒屋」として再生させるというプロジェクトであった。これが2006年6月のこと。

 その後、浜倉氏は2008年に恵比寿駅近くに「恵比寿横丁」をプロデュースしたことで突然注目を集めた。東京の「恵比寿」は1990年代の後半から隣の若者の街「渋谷」に対して大人の街と呼ばれるようになりおしゃれなレストランが増えていったが、そのなかで築40年以上、落書き付きのシャッターで閉ざされた一角があった。4階建ての共同アパートの1階で、昔は栄えていたという。

 浜倉氏はここを初めて訪れた2006年以来、だんだんと自分の頭の中に店主もスタッフも世代をまたいで楽しく働き、専門店の集合体がそろった酒場街になっている映像がピタリと降りてきたという。そこで3度の工期を経て21店舗の横丁ができた。通路にも客席が構成され、人間臭い光景が展開されるようになった。

 その後「有楽町産直横丁」「新橋ガード下横丁」「日比谷産直飲食街」などをプロデュースしていく。そして渋谷区立宮下公園の再整備事業として2020年6月に竣工したMIYASHITA PARKの1階に20店舗、店内1200席、テラス席300席という「渋谷横丁」をオープン、渋谷のランドマークとなった。今年は8月1日、新宿アルタ隣に「新宿 屋台苑」、10月20日渋谷マークシティ隣りに「日韓食市」、そして10月24日「龍乃都飲食街~新宿東口横丁」と続けてオープンした。

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2020年6月にオープンした「渋谷横丁」の施設内のカオスな様子

 浜倉氏は「龍乃都飲食街~新宿東口横丁」のコンセプトを「日本の良き大衆文化をアップデートして次世代につなぐ」と紹介してくれた。前述したとおり、一見してカオスであるが「食と画像と音によって独特の一体感を醸し出している」というのは、このコンセプトが全体の軸足をしっかりとしたものにさせているからだろう。

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2022年8月1日新宿アルタ隣りにオープンした「新宿 屋台苑」で風景は一変した
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2022年10月20日渋谷マークシティ横にオープンした「日韓食市」

 そして来年4月、歌舞伎町にそびえる東急歌舞伎町タワーの2階にエンターテインメントフードホールをオープンする。浜倉氏が取り組んできた「横丁」のコンセプトは一貫して「再生」である。それは人も街もすべて再生するということ。確かに、浜倉プロデュースの「横丁」はそれまで沈んでいた街に活気をもたらし、人々が生き生きと楽しく働き飲んでいる。果たして来年の4月歌舞伎町がどのように変化するか、浜倉ワールドが注目される。

(文=千葉哲幸/フードサービスジャーナリスト)

千葉哲幸/フードサービスジャーナリスト

千葉哲幸/フードサービスジャーナリスト

フードサービス業界の経営専門誌である『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)とライバル誌両方の編集長を歴任。2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しく、最新の動向もリポートする。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年)。

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