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三木谷社長、楽天モバイル解約者を「そういったユーザーはポイント狙い」顧客を敵に回す

文=Business Journal編集部、山口健太/ITジャーナリスト
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楽天モバイルの公式Twitterアカウントより

 14日に行われた楽天グループの2022年12月期決算説明会で代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏が「(楽天モバイルの契約を)解約するユーザーの大半がポイント狙い」だと発言。三木谷社長といえば、昨年7月から1GB以下の0円プランを終了すると発表した際に「ぶっちゃけ、ずっと0円で使われても困る」と発言し消費者から反感を買ったことも記憶に新しいが、多額の赤字と契約者数の伸び悩みにあえぐ楽天モバイルが再び逆風に見舞われないかが懸念されている。

 楽天モバイルの現況は厳しい。楽天グループは2020年に子会社の楽天モバイルを通じて携帯電話事業のサービスを開始。どれだけ使っても月額で最大2980円(楽天回線エリアのみ/通話料等別)、さらに月間データ利用量が1GB以下なら基本料無料というプランを掲げ、翌21年には500万回線を突破したものの、昨年には1GB以下の0円プランを終了した影響で契約数が減少。23年1月時点では452万件に減少しており、目標の1200万件は遠い。

 携帯電話事業の営業損益が4928億円の赤字となった影響で、楽天グループ全体としては3728億円の最終赤字に。成長を続け好調なEC事業や金融事業の利益を吹き飛ばし、最終赤字は前期比3倍に膨れ上がった。

 一方、携帯電話事業が楽天グループの成長に貢献している面も。同社の説明によれば、楽天モバイル契約後の楽天市場での購買額は1人当たり年間3万7683円、49%増えているという。

「すでに設備投資費用は当初計画の6000億円を大きく上回る1兆円にまで拡大しており、基地局整備が一巡したことで今後は年間の設備投資費用は減る見込みだが、今年は前年と同水準の3000億円程度発生する。目標とする年内の単月黒子化は難しいとみられている。0円プラン廃止の影響もあり、確かにARPU(契約当たり月間平均収入)は上昇傾向で1800円台まで伸びているが、大手キャリア3社の4000円前後と比べると半分以下の水準。多額の赤字もさることながらフリーキャッシュフローも1兆円を超えており(22年12月期)、1~2年以内に少なくても携帯事業で単月黒字化を果たせなければ、グループ全体の経営も揺らぎかねない」(全国紙記者)

ユーザーを選別するかのような発言

 苦戦を脱するため楽天グループは契約者増に向けて積極的な営業活動を展開している。1月に行われた、楽天市場加盟店向けイベント「楽天新春カンファレンス2023」で三木谷社長は、「楽天モバイル法人プラン」の魅力を強調し契約を呼びかけ、社長自ら「トップ営業」を実施。今月からはリファラルマーケティングとして、既存契約者から紹介されて契約した人に3000ポイント、紹介した人に7000ポイントを提供する施策を展開。20日付朝日新聞記事では、楽天グループが外国人の従業員には2回線、日本人の従業員には4~5回線の携帯電話契約獲得という実質的なノルマを課していたとも報じられている。

 そんな「なりふり構わない」動きを見せている楽天グループだが、前述の決算説明会で三木谷社長は

「解約するユーザーの大半が1GB以下のユーザーで、全体の70%ぐらい。言い方は難しいが『ポイント狙い』のユーザーが多数いた。そういったユーザーではなく、楽天のロイヤルカスタマーを狙いたい」

と発言。さまざまな反応を呼んでいる。

「『ずっと0円で使われても困る』発言もそうだが、三木谷社長の物言いが楽天モバイルのイメージ悪化を招いている面は否めない。ただでさえ同社は、たびかさなる通信障害で総務省から何度も行政指導を受けるなどして、品質への不信感が根強い。そこに経営トップによるユーザーをあからさまに選別するかのような発言も加わり、いくら安かったり楽天経済圏で使えるポイント面でメリットがあっても、『なんとなく楽天モバイルは避けておこう』という行動を消費者に促してしまう」(通信業界関係者)

楽天の勝機

 ITジャーナリストの山口健太氏はいう。

「当初、楽天モバイルは『1GBまで0円』を前面に打ち出し、『ポイント狙いでもいいから』といって契約者を増やしてきました。拡大を急いだ理由のひとつには、iPhoneの取り扱いでアップルと契約するために一定の規模を求められていたのではないか、との見方があります。その後、三木谷氏は『0円でずっと使われてもぶっちゃけ困る』と手のひらを返し、大炎上しました。今回の『ポイント狙い』という言い方にも棘があり、楽天会員を敵に回しかねない危うさを感じますが、文脈としては『たくさん楽天を使ってくれる人を歓迎する』という意味でしょう」

 なぜ契約者数は伸び悩んでいるのか。

「楽天モバイルの魅力として『使い放題で安い』という点がありますが、現在割り当てられている電波の特性から、エリア内とされる場所であっても建物の奥などでつながりにくい場合があります。また、データ容量は3〜15GB程度で十分という人も多く、その場合は同価格帯のワイモバイルやUQ mobileのほうが無難という判断になるでしょう」

 三木谷社長は伸び悩みの理由について「楽天モバイルがSPUプログラムに組み入れられたことが、まだよく認知されていない」と分析しているが、楽天モバイルの回線を契約するメリットは大きいといえるのか。

「SPUは、楽天のサービスを使えば使うほど、楽天市場で買い物したときのポイント倍率が上がる仕組みです。楽天モバイルの最低料金は月額1078円ですが、楽天でよく買い物する人ならそれだけで元が取れる場合が出てきます。楽天は『ポイ活』で大量のポイントを獲得しやすいことから、『ポイントで携帯料金を支払えば実質タダになる』と楽天はアピールしています。こうした循環が広まっていけば楽天にも勝機はあるでしょう」

(文=Business Journal編集部、山口健太/ITジャーナリスト)

山口健太/ITジャーナリスト

山口健太/ITジャーナリスト

1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。
山口健太

Twitter:@yamaguc_k

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