牛丼チェーン「松屋」の「松屋ビーフカレー」が100円「値下げ」とともにリニューアルされた。新バージョンは本日(29日)から全国の店舗で販売されている。松屋のビーフカレーといえば、牛丼チェーンの商品ながらもその濃厚かつ本格的なテイストが評判で根強いファンも多い人気メニューとして知られているが、果たして値下げにより味はどう変わったのか――。専門家に解説してもらう。
松屋のカレーの歴史は長い。2000年には290円で販売されていた松屋のカレーだが、この20年の間に徐々に値上がり。昨年5月の価格改定時には「オリジナルカレー」の価格は480円のまま据え置かれたものの、今年1月には「オリジナルカレー」の販売が終了となる一方で、終売となっていた「創業ビーフカレー」をリニューアルするかたちで「松屋ビーフカレー」が680円で発売。松屋のカレーメニューの最低価格が一気に200円も上がることになり、事実上の値上げと受け止める向きも多かった。
ちなみに今回のリニューアルに伴い、松屋のカレー類は一斉に価格改定が行われ、「ビーフカレギュウ」(並盛)は880円から830円に、「チーズかけビーフカレー」(並盛)は860円から760円に値下げとなり、よりお手頃な価格で味わうことができるようになった。
新「松屋ビーフカレー」について松屋はHP上で、
<スパイシーさがありつつもマイルド&フルーティさを感じられる>
<牛バラ肉を丸ごと煮込み、スパイシーでありながらほろほろになるまで煮込まれたたっぷりの牛肉がポイント>
<食べ終わるまで牛肉の旨味が味わえる>
と説明しているが、今回の値下げ・味のリニューアル同時実施の背景について、外食業界関係者はいう。
「『松屋といえばカレー』といえるほど、カレーメニューは松屋にとってキラー商品だったが、ここ最近、カレーをめぐる施策が迷走続きだった感は否めない。たとえば、年1回の期間限定販売だった『ごろごろ煮込みチキンカレー』を昨年5月に突然、レギュラーメニュー化し、販売的には期待外れの結果となり12月にレギュラー販売終了。さらに今年5月に期間限定で発売された『ねぎたっぷりスパイスカレー』も不評で、ひっそりと販売を終了。松屋としては初心に帰り、元祖の血を受け継ぐ『松屋ビーフカレー』のクオリティを向上させるとともに値下げすることで、松屋カレーのファンの回帰を狙っているのでは」
スパイシーさとコクが軽減
気になるのがリニューアル後のお味だが、実際に店舗で新「松屋ビーフカレー」を実食したフードアナリストの重盛高雄氏はいう。
「都内のある店舗で販売されていたので注文してみた。注文後に店員がタッパーに入れられたカレールーを電子レンジで温めて提供するかたちで、味わいは以前と比べてマイルドになり、辛みが減ったという印象を受けた。旧カレーはホロホロのビーフがスプーンにまとわりつくほどであったが、新カレーではそれらの存在はほとんど感じられない。スパイシーさとコクが軽減され、口当たりも滑らかになった。値下げとなったものの、残念ながら580円という価格相応の食べ応えであるとは感じなかった。
旧カレーは、ややヤンチャな辛さを持ちながら、ホロホロ肉の食感が最後の一口まで感じられた。スパイスで創り出す『ほの辛さ』が感じられるように仕上げられていたが、スパイスや脂分が混ざりきらないのが唯一の弱点だった。新カレーは口当たりがマイルドで食べやすくなっており、辛いだけのカレーに飽きた人にはマッチするかもしれない。一方、旧カレーが好みだった人は、かなり物足りなさを感じるかもしれない」
また、外食業界関係者はいう。
「松屋のカレーファンは、あの油っぽくて辛くて濃い味が他の店では味わえないという理由から、専門店ではないチェーンのビーフカレーとしては割高なお金を払ってでも注文していた。その特徴が薄まったというのは、あまりに残念な結果といえ、従来のファンが離れる懸念を感じる。いくら100円値下がりになりお手頃になったといっても、そこは価格の問題ではないだろう。一方、新カレーは目立った特徴がある一皿ともいえず『普通のカレー』になってしまっており、わざわざ通ってまで食べようと考える固定ファンを新たに獲得できるのかは疑問」
果たして新「松屋ビーフカレー」の成否はいかに――。
(文=Business Journal編集部、協力=重盛高雄/フードアナリスト)