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うな丼、松屋より「すき家」が高評価…同じ800円台でもクオリティに大きな差

文=Business Journal編集部、協力=重盛高雄/フードアナリスト
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すき家の人気メニュー「うな牛」(すき家のHPより)

 7月の土用の丑の日に合わせて外食チェーン各社が「うなぎ」メニューを投入するなか、近年では牛丼チェーンも力を入れている。今年も吉野家、松屋、すき家が「うなぎ」メニューを投入し、現在、松屋は「松屋のうな丼 単品」を860円(税込み、以下同)で、すき家は「うな丼 並盛」を890円で期間限定販売。うなぎ専門店では「うな重」一人前が3000円以上するケースも珍しくないなか、1000円以下でうな丼などを食べられるとして重要な集客ツールとなっている。なぜ牛丼チェーン各社は低価格を実現できているのか、そして料理のクオリティはどう評価できるのか。そして、専門家に松屋と「すき家」の「うな丼」を実食の上で評価してもらったところ、大きな差が出る結果となった――。

 牛丼チェーンのなかで特に「うなぎ」メニューに力を入れているとみられるのが、すき家だ。HPの「メニュー」ページの左上には大きく「うなぎ」ジャンルの画像ボタンが掲載。うな丼と牛丼を一つにまとめた「うな牛」(並盛1050円)をはじめ、「特うな丼」(1470円)、「うな牛皿」(950円)など計7種の期間限定メニューを揃えている。また、ここ数年は、例年、女優の石原さとみが「うな牛」をほおばるテレビCMを放映し、店舗前にも同様の宣伝物が掲示されている。

 すき家の「うなぎ」への力の入れようは料理にとどまらない。使用する「うなぎ」の養殖環境を社員が調査し、水揚げした「うなぎ」の健康状態や残留している医薬品の検査を実施。養殖段階から10回もの検査を行っているという。さらに、一般財団法人鰻の食文化と鰻資源を守る会(うなぎ財団)を設立し、資金を寄付するとともに完全養殖技術の研究を行っている。

 2019年から夏に「うなぎ」メニューの提供を始めた松屋は、「松屋のうな丼」のほか、「松屋のうなぎコンボ牛めし」(1080円)、「松屋の梅だしうな丼」(1080円)など計8種の「うなぎ」メニューをラインナップ。タレ漬け・焼きの工程を4度繰り返す特別製法で「専門店に負けない至高のうな丼」(同社HPより)になっているという。

 また、吉野家は「鰻重 一枚盛」(1207円)、「鰻皿 一枚盛」(1108円)、「鰻重牛小鉢セット 一枚盛」(1512円)の計3種を提供。今年の土用の丑の日に当たる7月30日には、前日までに予約すると鰻重弁当が10%オフになるキャンペーンを実施する。

「かつては牛丼チェーンの『うな丼』といえば、小ぶりのうな丼が専門店より安く食べられるとして吉野家の隠れた人気メニューだったが、今では<『うなぎ』といえば、すき家>というイメージがすっかり定着した。吉野家も現在はそれほど『うなぎ』メニューに力を入れていないという印象を受ける。

 近年の『うなぎ』の高騰で専門店だと一人前で数千円が当たり前となったが、大半の消費者は、そこそこの値段でそこそこのクオリティの『うなぎ』が食べられればよく、コスパ的には牛丼チェーン各社の『うな丼』『うな重』はちょうど良いレベル。

 また、原料となる『うなぎ』は流通経路が複雑で一部ブラックボックス化していて、国産使用を謳う専門店も、仕入れ先の業者の言葉を信じる以外に術はなく、国産といいながら中国産などが混ざっているのが実態ともいわれている。国産と中国産で大きく味が違うわけでもなく、また牛丼チェーンの『うなぎ』が安いのは大きな資本力を持つチェーン運営企業の強みである大量購入によるボリュームディスカウントが効くためであり、専門店と比較して大きく品質が劣るわけでもなく、大半の消費者にとっては十分満足できるクオリティといえるのでは」(外食企業関係者)

 前述のとおり「うな丼」を松屋は860円、すき家は890円で販売しているが、そのクオリティに大きな差はあるのだろうか。フードアナリストの重盛高雄氏に解説してもらった。

松屋の「うな丼」、うなぎの蒲焼らしさを感じられない

 ある商業施設のフードコートにある「すき家」で「うな丼 並盛」を注文したところ、特製容器で提供された。タレと山椒が多少濃いと感じられた。「うなぎ」はサイズが大きいが厚さはあまりない。身は厚くないものの、咀嚼するとタレとご飯が絶妙に絡み合い、食べているとしっかり鼻腔をくすぐられ、心地良さと適度な満足を感じさせてくれる。レンチン仕上げであるものの、「香ばしく、ふっくらと焼き上げています」という商品コピーには7割くらい賛同できる。「ふっくら」という文言を「うなぎ」の厚さととらえると、納得できない人もいるかもしれないが、丼物としての仕上がりは、まあまあといえるだろう。 

 一方、「松屋のうな丼」は「すき家」と比べて「うなぎ」のサイズが小さめ。こちらもレンチン仕上げで、身は厚い半面、淡泊な味わい。山椒の香りがほとんど感じられず、うなぎの蒲焼らしさを感じなかった。他の客は小鉢に山椒と七味を入れ、その中に蒲焼の切り身を突入させて食べていた。タレも少なく、個人的な感想としては残念な「うな丼」であった。

 松屋の別の店舗でも実食してみたが同じ味わいで、「外パリ中ふわの食感とあふれる旨味がたまらない贅沢な松屋の『うな丼』」という商品コピーには賛同できなかった。店舗に配送前の段階では外パリに焼き上げられているのかもしれないが、客が食べる段階では「外パリ中ふわ」になっていない。レンチン後に鉄板で炙るなどの追加工程が必要ではないか。他の客は「松屋のうなぎコンボ牛めし」を注文していたが、タレの味が不十分なためか、通常商品にはないタレが別添で付けられていた。

 スーパーの店頭では中国産のうなぎ蒲焼が1枚1000円ほどで販売されていることを考えれば、すき家も松屋も頑張っている販売価格であることは否定しない。すき家はゼンショーグループの仕入れ力が強みとなっているが、松屋は肉系のブランド力はあるものの、魚系は苦手な分野の一つといえる。牛丼チェーンとしては集客のツールとして商品ラインアップに『うなぎ』は欠かせないのだろうが、その高価格に妥当性があるのかといわれれば、疑問を感じざるを得ない。

(文=Business Journal編集部、協力=重盛高雄/フードアナリスト)

重盛高雄/フードアナリスト

重盛高雄/フードアナリスト

ファストフード、外食産業に詳しいフードアナリストとしてニュース番組、雑誌等に出演多数。2017年はThe Economist誌(英国)に日本のファストフードに詳しいフードアナリストとしてインタビューを受ける。他にもBSスカパー「モノクラーベ」にて王将対決、牛丼チェーン対決にご意見番として出演。最近はファストフードを中心にwebニュース媒体において経営・ビジネスの観点からコラムの執筆を行っている。
フードアナリスト・プロモーション株式会社 重盛高雄プロフィール

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