大手牛丼チェーン「吉野家」の牛丼の肉が少ないとして、SNS上では「スッカスカ」「玉ねぎ丼」などと話題を呼んでいる。果たして他の牛丼チェーンと比較して肉の量が少ないという事実はあるのか。専門家の意見も交えて検証してみた。
原材料費やエネルギーコストの上昇を受けて外食チェーン各社の値上げが相次ぐなか、吉野家も昨年10月に価格改定を実施。「牛丼」「豚丼」などの丼メニューの本体価格を一律で20円値上げし、「牛丼」の「並盛」は448円(税込み、以下同)、「大盛」は635円、「特盛」は800円、「超特盛」は921円となっている。
値上げを受けても業績は順調に推移。既存店の客数は昨年10月~今年1月こそ前年同月比微減だったが、2~3月は増加。売上高は昨年10月以降、増加を維持。運営会社の吉野家ホールディングスの2023年2月期決算は、原材料価格の高騰などの影響で経常利益こそ前年同期比44.1%減の87億円となったものの、売上高は同9.4%増の1681億円で、客から支持されている様子がうかがえる。
そんな吉野家の牛丼をめぐって、前述のとおり肉の量が少ないとして話題に。そこで他の大手牛丼チェーン「松屋」「すき家」と並盛を使って比較してみた。ちなみに吉野家の「牛丼 並盛」は448円、松屋の「牛めし 並盛」は400円、すき家の「牛丼 並盛」は400円であり、吉野家は他2社より48円高くなっている。
実際にSNS上では以下のような声が寄せられている。
<肉の量ギリギリまで削ぎ落してる>
<めしスケスケ>
<肉の量詐欺>
<アタマの大盛りって頼んでも下のご飯が透けてるからこれ少なくない?注文間違えてない?って一度文句言ったことある>
<8割玉ねぎ出されて さすがにクレームつけた>
実際に吉野家と「すき家」の牛丼の並盛(テイクアウト)の肉の量を計測したところ、以下写真のとおり吉野家は73g、すき家は85gとなっており、吉野家はすき家より約1.4割少ない。
牛丼の並盛のアタマ、左側が吉野家、右側がすき家
では、吉野家の牛丼の肉が以前と比べて減っているということはあるのだろうか。また、その価格や他チェーンの商品との比較を踏まえると、吉野家の牛丼の肉の量は少ないといえるのか。フードアナリストの重盛高雄氏に解説してもらう。
吉野家の「魅力」
昨年も連載でレポートしたとおり、吉野家の牛丼の肉量は減っていると感じられる。店舗飲食では並盛の具が、ご飯の上に薄く広げられている。並盛の満足感や食べ応えを減らして、「アタマの大盛」や「大盛」を推奨しているのではないかとも感じられる。昨年、東京・有楽町ガード下の店舗で並盛を注文した際に肉量が減っていると感じたが、5月に同じ店舗で改めて注文してみたところ、昨年から量は変わっていないという印象だ。
他の牛丼チェーンと比較してみると、吉野家の牛丼は食べていると最後のほうで肉が足りなくなってしまう。丼物の最後の一口を肉で締めるのか、それともご飯やだしで締めるのかは客によって好みが分かれるところだが、やはり最後に一口分でも肉が残っているほうが心地よいと感じる客は多いだろう。すき家の牛丼は、箸で上部の肉をよけても、その下に肉があるのがうれしい。これは松屋も同様で、吉野家では体験できない嬉しいことである。
吉野家の魅力の一つとして、注文時や支払い時の店舗スタッフとのコミュニケーションがあげられるが、最近では一部の店舗でタブレットでの注文方式を採用しているケースがみられる。外国人観光客の増加に対応するため、松屋のように多言語対応型券売機を設置するチェーンは増えている。
牛丼の並盛の価格を比較すると、大手牛丼チェーン3社のなかで吉野家は一番高い価格設定となっており、他チェーンにない魅力がなければ、昨今の値上げもあり、客の理解は得られない。そして残念ながら今の吉野家の牛丼には、その魅力は感じられない。
(文=Business Journal編集部、協力=重盛高雄/フードアナリスト)