牛丼チェーン「松屋」が今月1日に発売した、“ラーメン二郎系”の牛丼「ニンニク野菜牛めし」。「野菜多め 超味濃いめ にんにく強め」「インスパイア系 松郎 牛めし」を謳うインパクトのある牛丼となっているが、SNS上では賛否両論の声が続出している。果たして、そのお味とは。そして、コストパフォーマンスをどう評価できるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
店舗数ベースでは「すき家」「吉野家」に次ぐ牛丼チェーン3位で1065店舗(9月現在)。主力メニューの「牛丼 並盛」(松屋は「牛めし」)の価格を比較してみると、松屋は430円(税込/以下同)、吉野家は498円、すき家は430円となっており、大手牛丼チェーン3社のなかでは、吉野家より低価格、すき家と同額となっている。
昨年以降は1000円超え、1000円近いメニューを相次いで投入するなど、その「高価格路線」も話題に。昨年11月に期間限定で発売された「ビーフ100%ハンバーグ定食」の各種メニューが軒並み1000円を超え、その後も、期間限定で「ビーフシチュー定食」(990円)、「ブラウンソースチーズハンバーグ定食」(990円)、「シュクメルリ鍋定食」(930円)、「チーズシャリアピンソースハンバーグ定食」(1050円)などを相次いで投入してきた。現在は期間限定で「キャベツとベーコンのペペロンチーノ牛めし」(並盛:650円)、「ごろごろチキンのバターチキンカレー」(880円)などを販売している。
その「松屋」が今月1日に発売した「ニンニク野菜牛めし」(通常サイズ:790円、小盛:590円、大盛:990円)が話題を呼んでいる。白飯の上に牛肉、野菜、刻んだニンニクが山盛り状態で乗せられたメニューで、公式サイト上の告知画像や店頭ポップは「ラーメン二郎」でおなじみの黄色い背景と黒と赤の文字というデザインになっている。販売している店舗が全国で68店のみに限られており、取り扱い店舗でも早い時刻に売り切れとなるケースも多く、実食にたどりつきにくいという点も話題を呼んでいる。
値ごろ感はあるといえるが…
取り扱い店舗を4つ回り、やっと実食にありつけたというフードアナリストの重盛高雄氏はいう。
「取り扱う店舗が少ないのに加え、客が店舗の外に貼られた『売り切れ』の知らせを見て入店せずに帰っていく様子も見られ、話題性だけが先行しているという印象を受けます。実際に食べてみた感想としては、この商品は『二郎系好き』かそうでない人かで評価が分かれると考えられます。あくまで個人的な感想ですが、私の好みには合いませんでした。“ニンニク汁いっぱいどんぶり”であり、牛丼の味わいは感じられませんでした。ちなみに、食べた2時間後に下腹部が痛くなり、トイレに駆け込む事態となりました。野菜の量は感じられますが、まるで電子レンジでチンしたのかのようにシャキシャキ感はなく、汁まみれの野菜でした。ニンニク汁に浸ったご飯というのは、好みの分かれるところでしょうし、二郎の味付けに慣れた方には好まれるかもしれません」
では、価格の妥当性はどう評価できるか。
「普通の牛丼に野菜炒めが乗っていると考えれば、妥当な値付けで、値ごろ感があるといえます。野菜が高騰して『かつや』のキャベツの量が大幅に減るといった事態が起きているなか、野菜の量だけでいえば健闘していると評価できます。二郎系好きの人の間では二郎の世界観が広がったということで話題になるでしょうが、私のような二郎系が口に合わない人にとっては、がっかり感が半端ないです」(同)
また、外食チェーン関係者はいう。
「取り扱う店舗数も一日当たりの販売数量も非常に少ないことから、今回は全国展開すべきかどうかを判断するために試行的に販売したのだと考えられます。販売動向やSNS上での反応などを見て、今後どうするのかを検討していくのでしょう」
(文=Business Journal編集部、協力=重盛高雄/フードアナリスト)