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チロルチョコ株式会社、「虫混入」X投稿者に誤認を認めさせた広報能力に称賛

文=Business Journal編集部、協力=西島基弘/実践女子大学名誉教授
チロルチョコ株式会社、「虫混入」X投稿者に誤認を認めさせた広報能力に称賛の画像1
チロルチョコの公式Xアカウントより

 あるX(旧Twitter)ユーザが、人気のチョコレート菓子「チロルチョコ」に生きた虫が混入しているという内容を動画付きでポスト(現在は削除済)。その数時間後に製造元であるチロルチョコ株式会社がX上で「早急に調査し、ご報告いたします」「投稿主様にDMを送りご返信をお待ちしている状況です。投稿のお写真は毎年発売の季節商品と思われますが今年は2週間後の発売のため、昨年以前に発売された商品と推察されます」と反応。そして翌日に投稿者が最近購入したものだと誤認していたと判明すると、「投稿主様へのコメントやお問い合わせはお控え頂けますと幸いです」と呼び掛けるなど迅速かつ真摯な対応をみせ、話題を呼んでいる。市販用チョコレート菓子の製造過程で生きた虫が混入し、開封されるまで虫が生きているという事態は発生し得るのか。また、どのような原因が考えられるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 チロルチョコ株式会社の前身・松尾製菓が創業したのは1903年(明治36年)。今年で創業122年目を迎える老舗企業だ。ベストセラー商品となった「チロルチョコ」が誕生したのは1962年。当時は高級商品だったチョコレート菓子を10円という安価な価格で発売。当時は3つ山の形態であり、コンビニエンスストアでの販売に伴いバーコードを記載するため現在のサイズに変更されたのは1993年のことだった。その後、2004年に開発・販売部門を東京に移転するのに伴いチロルチョコ株式会社を設立。昨年にはアジアでの販売拡大のためベトナムに工場を竣工させた。現在は従業員数約50名のチロルチョコ株式会社が開発・販売を、工場を持つ松尾製菓株式会社が製造を担当する体制になっている。

 取扱商品としては、「ミルク」「コーヒーヌガー」など定番商品のほか、期間限定の「きなこもち<袋>」「ちょこもち<袋>」、ファミリーマート限定の「チロルチョコ<しばんばん キャラメルクランチ>」、ウエルシアグループ店舗限定の「北海道みるくもち<袋>」など多岐にわたる商品を展開。ちなみに人気商品「きなこもち」は2003年の発売当時、5カ月で1700万個という驚異的な販売個数を記録したという。

<投稿主様へのコメントやお問い合わせはお控え頂けますと幸いです>

 そんなチロルチョコをめぐる不穏な情報が広がったのが今月4日のことだった。X上に前述の内容がポストされたのだが、この日は祝日の振り替え休日だったにもかかわらず、チロルチョコ社は当該ポストの数時間後に公式Xアカウント上で次のように報告したのだ。

<早急に調査し、ご報告いたします>

<現在X上でチロルの中に虫がいたという投稿に関して、投稿主様にDMを送りご返信をお待ちしている状況です。投稿のお写真は毎年発売の季節商品と思われますが 今年は2週間後の発売のため、昨年以前に発売された商品と推察されます。投稿主様と皆様にご不快とご不安を与え 大変申し訳ございません>

 そして翌5日には、

<昨日のX上でチロルの中に虫がいたという投稿に関して、投稿主のご家族様とご本人様からお詫びのご連絡をいただきました。最近購入したという事実は誤認であること、ご自宅での保管状況がよくなかったことが確認とれました>

<弊社としてはご家族とご本人様からお詫びのご連絡を頂いておりますので投稿主様へのコメントやお問い合わせはお控え頂けますと幸いです>

と報告。一連の迅速な対応に高評価の声が寄せられている。

チョコレートの製造には加熱工程がある

 今回の件は購入者の誤認であったわけだが、一般論として、食品製造工場において生きている虫が混入し、購入者が開封するまでその虫が生きているという事態が発生する可能性はあるものなのか。実践女子大学名誉教授で元東京都立衛生研究所(現:東京都健康安全研究センター)部長の西島基弘氏はいう。

「断定的なことはいえませんが、一般論として、チョコレートの製造には加熱工程があり、生きた虫が製品に入るとは考えられません。一般的には、チョコレートに虫が入らないように銀紙で包んでありますが、投稿された写真を見る限り、その点はよく分かりません。もし銀紙で包んでないとすると、この幼虫が隙間から中に入ったことも考えられます。一匹だけですので、蛾などがチョコレートの隙間から卵を産み付けたとも思えません。虫が端のほうにいますので、包装の隙間から入ったことが考えられます。昨年に購入された製品とすると、チョコレートの包装に隙間があった可能性が考えられますが、その隙間が製品の輸送途中で生じたのか、消費者が保存中に触った時に生じたのか分かりません。原因の特定はとても難しいでしょう」 

 市販食品の異物混入事案としては、今年5月、アサヒグループ食品のベビーフードの煮物に製造ラインで使用している樹脂製の部品の一部が混入したとして、同社はこの煮物が含まれる商品約9万5000個を自主回収すると発表。今年9月、業務スーパーは、「イタリアンビスケット(ヘーゼルナッツ&ココア)」の一部商品において金属異物の混入が認められたとして自主回収を発表している。

(文=Business Journal編集部、協力=西島基弘/実践女子大学名誉教授)

西島基弘/実践女子大学名誉教授

西島基弘/実践女子大学名誉教授

実践女子大学名誉教授。薬学博士。1963年東京薬科大学卒業後、東京都立衛生研究所(現:東京都健康・安全研究センター)に入所。38年間、「食の安全」の最前線で調査・研究を行う。同生活科学部長を経て、実践女子大学教授に。日本食品衛生学会会長、日本食品化学学会会長、厚生労働省薬事・食品衛生審議会添加物部会委員などの公職を歴任。食品添加物や残留農業など、食品における化学物質研究の第一人者として活躍している

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