ゆうちょ銀行のATMで口座に預け入れをしようとしたら、「預け入れ」のボタンが表示されず、断念せざるを得なかったとの投稿がSNS上で話題になっている。郵便局員でも、そのような状況が発生することを知らない人もいるようだが、同じ経験をしたとの書き込みも散見されることから、一定の状況下においては「預け入れ」ボタンが表示されないという“仕様”なのではないか、との指摘がある。実際にゆうちょ銀行に聞いたところ、エラーなどではなく、確かに仕様であるという。
X上でひとりのユーザーが、数カ月前にゆうちょ銀行のATMを操作しようとしたところ、見慣れない画面になっていたと報告。それは「預け入れ」の表示がなく、さまざまな箇所を触ってみても解決法がわからず、結局その日は入金を断念したという。
<あの、フォロワ様には常識かもしれませんけど、私、脳の障害かと半ば本気で思ったことが判明したので、こっそりお伝えさせていただきますね。 数ヶ月前、大型スーパーのATMコーナーでゆうちょの操作をしようとしたら、 画面が見慣れぬものに変わってて、「預け入れ」 表示がないんですよ。>
<で、あれ?と思ってあちこち触ってみても、もちろん預け入れ操作はできず、でもATMはトラブル表示がなくて。先月までは普通に操作できたのに?すぐスマホで検索したけど解決方法も分からなくて、その日は預け入れできなかったんです。>
この投稿は広く拡散され、1週間で145万回表示、リポストも2000回を超えるほど注目を浴びた。返信のなかには、同じ体験をしたとの声も散見された。続けて投稿主は、後日、郵便局員に尋ねたところ、「そんなことはあり得ない」と一笑に付されたと報告。
<後日、郵便局のATMで操作をしたとき、気になったから局員さんに尋ねてみたんです。表示変わりましたか?預け入れができなくて… もちろん局員さんも大型スーパー使ってるから話も通じて、これこれで預け入れ表示がなくてと事情を説明したら、そんなことありえません!って笑われて。>
ゆうちょ銀行のATM、UXデザイナーは一刀両断
つまり、郵便局員も把握していない事態が発生したといえる。だが、この投稿主はインターネットで検索したところ、自分が見たものと同じ画像が見つかったという。この現象は一体、どういうことなのか。Business Journal編集部は、ゆうちょ銀行の広報担当に聞いてみた。
――ゆうちょ銀行のATMで、「預け入れ」表示が出ないことがあると話題になっていますが、事実でしょうか。
広報担当者「確かに、ATMの機械に受け入れられる札の容量がいっぱいになるなど、受け入れることができない状況になると、『預け入れ』の表示が出なくなります」
――たとえば「ただいま預け入れができません」など、利用者に案内を出すことなく、単に表示が出なくなるという仕様なわけですね。
広報担当者「そうですね。一部の機械ではなく、ゆうちょ銀行のATM全体の仕様となっています」
――利用者に対して不親切な気もしますが、改修されることはないのでしょうか。
広報担当者「そのようなお声があるということは真摯に受け止め、社内で共有させていただきますが、今のところ改修等の予定はございません」
ちなみに、ATMの中の札が不足している状況では「引き出し」のボタンは表示が消えることはなく、出金額を入力する段階で数字を押せなくなる、と報告されており、この場合も特に利用者への案内などはないようだ。
ちなみに、Business Journal編集部が調べたところ、銀行ごとにATMの仕様は異なるようだ。みずほ銀行でも、機械内の札が一定量を超えると、「預け入れ」の表示は出なくなるという。
「ATMに現金が流入超過となり機内現金が基準値を超えた場合には『お預入れ』のボタンが非表示となります。一方でATMの現金が流出超過となった場合に、1万円札の機内有り高が一定枚数以下となると『お支払い』のボタンが非表示となります。なお千円札の場合には、ボタンは消えず1万円単位での引き出ししかできなくなります」(みずほ銀行広報室)
あるUXデザイナーは、ユーザーの利便性を考慮していないデザインであると述べる。
「ユーザーインターフェイス(UI)のデザインが非常に悪いですね。ユーザーの使い勝手や利便性を考慮していないデザインです。本来、デザイナーはユーザーの利用場面を想定して、見た瞬間に理解できる画面をデザインします。しかし、ゆうちょのATM画面ではユーザーが困惑する状況を生み出してしまっており、好ましいデザインとはいえません」
いまやATMは、若者から高齢者まで幅広く利用するものであり、操作しやすいデザインであることが求められる。見ただけでわかりやすい画面にしてもらいたいところである。
(文=Business Journal編集部)