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木下隆之「クルマ激辛定食」

日産、EVのレーシングカー開発…モータースポーツもガソリン車からEVへ

文=木下隆之/レーシングドライバー
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日産、EVのレーシングカー開発…モータースポーツもガソリン車からEVへの画像1
2代目「リーフニスモRC」

 日産自動車が本格的なEV(電気自動車)レーシングカーを開発していたことを、ご存じだろうか。企業としてEV化を積極的に推し進める日産は、EVフラッグシップとして「リーフ」をリリースしている。そんな日産のレース部隊であるニスモが、リーフをベースに物々しいレーシングマシンを製作。

 今回、筆者が試乗の機会を得たのは、2代目「リーフニスモRC」である。

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 写真を見ていただければ、リーフの面影を感じ取ってもらえることだろう。日産のアイコンであるVモーショングリルを中心に、テールからリアエンドにかけて、リーフらしさが残る。バッテリーやドライブトレーンといった主要パーツは、量産リーフからの流用である。レーシングカーとはいえ、立ち位置はあくまで市販技術の延長線上にある。

 だが、市販車の足回りを固め、安全装備を組み込んだだけでお茶を濁したわけではない。コンペティション集団のニスモが手掛けただけあり、つくり込みは本気である。

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 コクピットは超軽量な炭素繊維カーボンモノコックを採用、サブフレームを組み込んでいる点は、スーパーGTマシンと同じ手法である。サスペンション形式もプッシュロッド式と呼ばれるもので、レーシングカー級。ショックアブソーバが水平に寝かされていることからも想像できるように、速く走るためだけのレイアウトが採用されているのだ。モーターを2基搭載し、前後のタイヤで駆動する。出力合計は240Kw、最大トルクは640Nm、0?100km/h加速は3.4秒、最高速度は220km/hと公表されているから、只者じゃない。

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 コクピットの雰囲気はレーシングカーのそれで、ステアリングにほぼすべての操作スイッチが集約されている。タイトに体をホールドするバケットシートに収まり、4点式シートベルトでくくりつけられると、それだけでレースの世界に絡めとられるようだ。

 走りも本格的である。マスターバックは装備されていないし、ABSもない。選ばれたプロが操ることで本当の実力を発揮する。

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 ただし、素材がEVだから、発進スイッチを「D」レンジにアジャストすれば、あとはアクセルペダルを踏み込むだけでスルスルと発進する。ギアチェンジもない。誤解を恐れずにいえば、遊園地のゴーカートの延長線上にある。もちろん、限界を極めようとすれば牙を向くことは想像の通りだが、動かすだけならば誰でもできるという親しみやすさが意外に思えた。

 そのため早速、「“リーフニスモRCワンメイクレース”発足か?」などと色めき立ってしまうのだが、まだ具体的なイベント開催のアナウンスはない。企画会議では議題に上がっているのだろうが、まずはプロモーション活動が主な任務のようだ。

 当面6台が製作され、デモンストレーションランや展示会など、世界のイベントで活躍することになる。レース開催はそれからの情勢によるのだろう。

 EV全盛の時代が迫っている。それはモータースポーツも同様で、内燃機関の衰退とともにEVのモーターレーシングがあっても不思議ではない。リーフニスモRCは、そのための布石なのだ。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

木下隆之/レーシングドライバー

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

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