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木下隆之「クルマ激辛定食」

“新型”デリカD:5、三菱自の渾身の力作…そのハンパない進化に度肝を抜かれた

文=木下隆之/レーシングドライバー
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“新型”デリカD:5、三菱自の渾身の力作…そのハンパない進化に度肝を抜かれたの画像1新型「デリカD:5」

 三菱自動車の新型「デリカD5」の試乗会に参加した。場所は北海道・新千歳空港からわずか5kmほどのモータースポーツランドだ。底冷えのする北海道の2月だったため、当然、コースは一面の銀世界。夏はクロスカントリーのコースとして名高いその場所は、デリカD5の“新型”の走りを堪能できるように設計されたコースが新設されていた。

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 試乗に先立ち、商品戦略本部・大谷洋二CPS(チーフ・プロダクト・スペシャリスト)から概要説明があった。続けて開発本部・中島嘉宏CVE(チーフ・ビークル・エンジニア)が技術的な特徴を説明。さらに、EV・パワートレイン技術開発本部の澤瀬薫博士も登壇し、いま三菱が取り組んでいる「4輪制御技術」を解説した。

 そう、三菱にとって新型デリカD5は、わざわざ試乗会を北海道で開催するほど力を入れたモデルであり、3名の責任者が代わる代わる進化の道筋を語らなければ納得できないほどの力作なのだ。

 搭載されるディーゼルエンジンはトルクが変更されパワーアップし、尿素を噴霧するなど排ガス性能も大幅に改善した。組み合わせたATミッションは、6速から8速に多段化された。それにより、走りは見違えるように洗練されている。

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 ボディも大幅に強化が進んだ。フロントエンドの外皮を剥げば、ほとんど新設と思えるほど構造が改められている。澤瀬博士が駆り出されるほど、駆動制御も大幅にメスが入った。動力性能だけでなく、操縦安定性もびっくりするほど進化したのだ。

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 顔つきもガラリと変わった。現行型デリカD5の面影は皆無。インテリアも同様で、質感が格段に高くなった。表皮や色味を変えただけでなく、造形ごとガラリと入れ替えている。

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 さらにいえば、キャラクターも変わっている。アーバンフィーリングを求めたのだ。デリカD5は「山道だけじゃない。都会でもどうぞ」と推奨する。デリカD5は、まったくといっていいほど生まれ変わったのである。

 ただし、実はあくまでも“マイナーチェンジ”である。あるいは、車種追加といっていい。なぜなら、今回ドライブした「新型デリカD5」と「現行型デリカD5」は併売されるからだ。つまり、新型であって新型ではない。

「おっしゃる通り、製品改良です。しかし、新型といっても差し支えないほど手を加えています」

 大谷氏は、そういって頭をかいた。公式には型式が変わらないので、新型ではないのである。

 そもそも、「新型=フルモデルチェンジ」と「改良=マイナーチェンジ」という定義が曖昧になりつつある。個人的な見解では、型式が新しくなるのがフルモデルチェンジであり、型式が共通ならばどれほど大幅に手を加えてもマイナーチェンジだと解釈している。

 それにもかかわらず、最近はちょっとした改良でも「新型がデビューしました」と宣伝される。僕ら専門家が得られるプレスリリースでも、わずかなフェイスリフトでも“新型”と語られるのが“常識”になりつつある。

 新聞に挟まれるチラシでも、毎週のように“新型”の文字が躍る。「いや、それって“新型”ではなく“マイナーチェンジ”でしょ」とツッコミを入れたくなるほど、“新型”の文字が安易に氾濫しているのだ。

 もっとも、今回デビューする三菱デリカD5だけは例外でもいいとさえ思った。形式的には改良だが、新型と名乗るのが相応しいほど進化しているからだ。いっそのこと、「デリカD5.5」と名乗れば良かったのに、と思う。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

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木下隆之/レーシングドライバー

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

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