感動するほどの加速性能
筆者が試乗したのは、「330iMスポーツ」だ。加速感は感心するほど素晴らしかった。2リッターという比較的小排気量のエンジンの欠点は、低回転トルクがか細いことである。加速したいその瞬間に、期待する加速が得られないことがある。その絶対的なトルク不足を補うために、ターボチャージャーの助けを借りる。だが絶対的なトルクは確保できても、わずかなアクセル開度でのレスポンス不足は否めない。各メーカーは必死に、大小のターボチャージャーを組み合わせたツインターボ化でしのごうともがくものの、まだ少し低回転トルク不足と反応の鈍さからは逃れられない。
だが、330iでは、そんなイライラするような加速感は霧散していた。アクセル開度の1mmが、エンジンの1Nmとして確かに反応するのだ。ピークパワーの上がり代はわずかだが、常用回転域のトルクは大幅に厚くなっているからだ。スペック表によると、それぞれピークトルクは1350rpmで達するという。交通に流れに乗っている限り、ほとんどの場合、ピークトルクに達する1350rpm付近で走行しているはずだ。つまり、いつでもどこからでもパワーゾーンなのである。感動した。
フットワークも素晴らしい。前述したように、前後重量配分は、BMW得意の「50:50」をキープしているから、コーナーリング特性は整っている。フロントノーズがアウトにはらむような見苦しいアンダーステアは皆無だ。試乗車は標準設定から2インチアップの大径タイヤを履いていたこともあり、コツコツと路面に乱れを拾う傾向にあった。乗り心地はかなり硬い。
そう、新型3シリーズはまず運動性を磨き込み、スポーツフィールをまったく犠牲していないのだ。多少乗り心地が悪化したとしても、フットワークを優先する。そんな頑固な思想を感じた。
累計1500万台を誇るBMWの主力モデルは、これからもBMWらしいスポーツ性能で勝負していくということか。
実は、3シリーズはさらにさまざまな先進的な魅力を秘めている。それはまた改めて紹介しようと思う。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)