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“プリウスミサイル”はやっかみが生んだ言葉か…プリウスは事故が起きにくい

文=Business Journal編集部、協力=桑野将二郎/自動車ジャーナリスト
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プリウスは事故が起きにくい
プリウス(「Getty Images」より)

“プリウスミサイル”という俗語がインターネット上で今も話題になっている。トヨタ自動車製のハイブリッド車「プリウス」の絡む交通事故が多いというイメージから生まれた言葉だ。本当にプリウスは、他の車種より突出して事故が多いのか。自動車ジャーナリストの桑野将二郎氏の見解を軸に検証してみる。

 プリウスミサイルという言葉は、2019年に世に広まった。きっかけは同年4月、東京・池袋で当時87歳の元通産官僚の男性の運転するプリウスが暴走し、母子が死亡するなどした事故だった(男性は禁固5年の実刑判決が確定)。テレビのワイドショーで大々的に取り上げられ、大破したプリウスの車体の映像が繰り返し流れた。さらに同年5月に千葉県市原市で当時65歳の男性が起こした負傷事故や、2016年2月に大阪市で当時51歳の男性が招いた死傷事故もプリウスだったことから、「プリウスは危ない」という印象が固定化した。

 やはりイメージ通り、プリウスの事故は多いのだろうか。交通事故に詳しい弁護士を紹介するサイト「交通事故弁護士相談カフェ」のホームページを見ると、国土交通省が車種別の事故率を調査した結果が載っている。それによると、対象の車種はプリウスのほか、同じトヨタ製のカローラ、アリオン、プレミオなどで、その中でプリウスの事故率はもっとも低かったという。事故率の高い車種は保険料が高く、低い車種は安い目安を示す自動車任意保険の料率階級を見ても、プリウスの事故率が抜きんでているとはいえない。

 データ的には事故率の低いプリウスが「事故を起こしやすい車」と見なされている理由について、桑野さんは「高齢者がプリウスのユーザーに多いことと無関係ではない」と述べる。桑野さんの話では、プリウスのユーザーは大半が50歳以上。「若い頃、昭和時代の大衆車の代表格のカローラに乗っていたシニアドライバーが燃費の良さや運転しやすいサイズ感から、現代の大衆車の象徴に当たるプリウスに乗り換えた経緯がある」と話す。

 高齢者がブレーキとアクセルを踏み間違えて車が暴走したというニュースが報道されるたび、高齢者の運転の危うさと相まって、高齢者がメーンユーザーのプリウスも「一蓮托生」的に事故の多い車という印象が広まったと見られる。プリウスは車種別の新車販売台数の常に上位にランクインし、普及している車ほど事故の件数も増えるという統計的な宿命も負っている。

 ユーザーの年齢層以外に桑野さんが強調するのは、車の構造面だ。「プリウスのシフトノブは特殊で、一般的なAT車はシフトノブを動かすと、P(パーキング)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)とそれぞれの位置でノブが固定されるが、プリウスはPでもNでもDでもシフトした後、ノブがゲートの真ん中に戻る。「一見すると、ドライバーが今、どのシフトに入れていたのか忘れるケースが出てくる」と言う。「どのシフトかは、メーターのインジケーターには表示されるが、若い人ならパッと気づいても、高齢者は瞬時には認識できない可能性がある」と懸念する。

 その上で車の走り出しについても言及。「ハイブリッド車は、はじめは電動モーターの力だけで進むが、静かな上にアクセルをちょっと踏むだけグワッと走行する特性がある。静かに、しかも急にスピードが上がるので、高齢者にとっては『気がついたら飛び出していた』という事態につながる。アクセルを踏んだことにも気づいていないから、『ブレーキを踏んだと思ったら踏み間違えだった』ということにもなる」と述べる。

 桑野さんは、プリウスミサイルというネガティブなワードが生まれた背景の一つとして、「プリウスに対する一種のやっかみがある」と指摘する。「キーをひねればエンジンがかかり、シフトを変えればシフトショックが自分の身体で感じられ、ブレーキを踏んでいなければクリープ現象で前に進む一般的な車に慣れた保守的なユーザーにとって、加速特性がエンジンと異なるモーターを搭載するハイブリッド車の代表格のプリウスはジェラシーの対象。プリウスを認めたくない感情が『ミサイル』という表現でマイナス評価した側面を否定できない」と語る。

 人間が運転する限り事故を完全になくすことは難しいとしても、進化する自動車のテクノロジーによって、かつてより間違いなく安全性は高まっている。だが、それに甘えることなく、ドライバーも殺傷能力のある道具を扱っているという意識を欠かさず運転したい。

(文=Business Journal編集部、協力=桑野将二郎/自動車ジャーナリスト)

桑野将二郎/自動車ライター

桑野将二郎/自動車ライター

1968年、大阪府生まれ。愛車遍歴は120台以上、そのうち新車はたったの2台というUカー・ジャンキー。中古車情報誌「カーセンサー」の編集デスクを務めた後、現在はヴィンテージカー雑誌を中心に寄稿。70~80年代の希少車を眺めながら珈琲が飲めるマニアックなガレージカフェを大阪に構えつつ、自動車雑誌のライター兼カメラマンとして西日本を中心に活動する。
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