売り上げ、利益、コスト、リサーチデータ……仕事には数字がついて回る。数字の海の中から、自分に必要な情報だけを取り出すのは簡単ではない。
私自身、マーケティングマネージャー時代にリサーチデータを眺めていると、細かい数字にとらわれがちになっていた。しかし、数字の大海原の中から、実際のビジネスに使えるヒントを見つけ出すのは、「見ている」だけでは始まらない。
数字の羅列だけを見ていると、「木を見て森を見ず」になってしまうのである。意外と重要なのは、毎日同じ条件の数字を見ること、すなわち定点観測だ。そうすると、異常値が出た時にすぐに気づくことができる。
例えば、110、117、108、130、107、111という数字が並んだ時に、「130だけ大きい」と気づく、といった具合だ。毎日の数字を計算式に入れて「平均より12上がった」「3下がった」という見方は不要で、「なんとなく上がったな」とわかれば、この時点ではOKである。
重要なのは、その「上がった理由」を考えてみることだ。これを「仮説」と呼ぶ。仮説が見つかればしめたもので、次はその異常値がどんな条件で起きているのか、なんとなく見えてくるようになる。
「毎週木曜の午後に数字が上がる」「晴天の日だけ下がる」といった具合である。そこからどんどん仮説を立て、検証していくことで、自社や自分の「勝ちパターン」を作れるようになるのだ。
数字を見るときは、まず
1.定点観測
2.異常値の発見
3.根拠を探る
4.仮説を立てる
5.検証する
6.アクションを起こす
というステップを踏む。
数字を続けて見ていると、急に売り上げや認知度が「上がった」「下がった」とわかるようになる。そうしたら、スピーディーに仮説・検証・行動を繰り返すのだ。
SNSを駆使したマーケティング
私自身、起業家で個人事業主ということもあって、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を多用している。フェイスブック、ブログ、インスタグラム、ツイッターなどだ。基本的に費用がかからないという点において、中小企業の強い味方である。
ここのところ、個人的にはツイッターが面白い。以前は、ブログを書くたびにツイッターでリンクをツイートしていただけだったが、140文字の制限の中で面白い投稿をしていたり、有益な情報を書いている人もいるため、ツイッターというメディアそのものを見直している。
そのツイッターに、「ツイートアクティビティ」という機能がある。自分の各投稿の「インプレッション=表示された回数」と、「エンゲージメント=リツイートやリンクのクリックの有無など」がわかるというものだ。
私の場合、インプレッションが多いのは深夜か早朝だ。その時間帯に見ているのは、やはりビジネス・パーソンだろうという仮説が立てられる。
一方、エンゲージメントになるとまったく違っている。やはり、セミナー告知など「自分目線」のものより、ユーザーにとって「有益な情報」のほうがリンクのクリック率も写真の閲覧回数も多い。
そうなると、「ビジネス・パーソンが見ている時間帯に、彼らの興味を惹きそうな画像とともに投稿すれば、エンゲージメントは高くなる」という仮説を立てることができる。
そして、それ以降はまた定点観測を行い、この仮説が正しいかどうかを検証していけばいい。
マーケティング活動の基本は「小さく生んで大きく育てる」というものだ。大企業が新製品を発売する際も、いきなり全国展開をするわけではなく、まずは地域限定でテストマーケティングを行う。
その結果を踏まえ、良いところはそのままに、改善が必要な点は修正して、全国の市場に導入する、というステップを踏む。一点突破、全面展開なのだ。
そのためには、日ごろから数値を見ておく必要がある。中小企業は本格的なリサーチをする時間も資金もないことが多い。しかし、お金も時間もあまりかけずに、毎日数値を見ているだけで発見できることがある。ホームページであれば、アクセス解析の「グーグル アナリティクス」を見ることが大事だ。
マーケティング、というか経営やビジネスに王道はない。小さなことの積み重ねが大きな結果につながる。神は細部に宿るのだ。
(文=理央周/マーケティングアイズ代表取締役、売れる仕組み研究所所長)