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舘内端「クルマの危機と未来」

疑問だらけのトヨタ・ミライ クラウン並みの大きさなのに4人乗り&車内狭い謎

文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表
疑問だらけのトヨタ・ミライ クラウン並みの大きさなのに4人乗り&車内狭い謎の画像1トヨタ自動車「ミライ」

 トヨタ自動車の燃料電池車MIRAI(ミライ)には、これまでの自動車とは違うところがある。燃料電池車という新しいシステムの自動車だから当然だが、5つの不思議がある。本連載前回記事から続く謎解きで残る不思議は、重い車重とフロントエンジン・フロントドライブ(FF)という駆動システムを選んだ理由、そしてボディサイズからすれば5人乗れてもよいのだが、4人乗りという乗車定員だ。

大きな水素タンク

 燃料電池車の燃料は水素だ。したがって燃料タンクは水素を充填したボンベということになる。

 ミライの水素タンクは、後席の腰の下と後輪の内側に設置されている。容量は前方のタンクが60.0リットル、後方が62.4リットルである。クラウンハイブリッドの燃料タンクは65リットルだから、ほぼこれが2つあるということになる。

 ミライの全高は1535ミリだ。ちなみにクラウンハイブリッドは1450ミリだから、85ミリ高いことになる。かなり背の高いセダンである。しかし、後席に座ってみると、頭上の空間は広いと感じるほどではなく、クラウンと同等である。これは腰の下の水素タンクが大きいことが影響している。

 ガソリンのタンクであれば、高さを抑えて扁平にできる。しかし、水素タンクは70メガパスカル(700気圧) もの超高圧に耐えるために強度の高い円筒形にする必要がある。同じ60リットルといっても水素タンクは高さが必要になる。それだけ後席も高くなり、乗員の頭の位置も高くなる。それでもクラウンハイブリッド並みの頭上空間を確保するには、全高を85ミリ高くする必要があったわけだ。

 クラウン並みのボディサイズで4人乗りというミライの座席配置は、水素タンクが大きいことが大いに影響している。そして、大きなタンクを2つ前に載せられず後ろに積んだことで、モーターは必然的に前に載せ前輪を駆動することになった。ミライがFFなのは、タンクが大きいことも理由の一つだ。

 しかし、大勢乗れれば偉いかというと、そうとも限らない。乗用車の場合、4人で乗るのがごく普通である。ミライは、もともと4人乗り自動車なのだと思えば済む。

 ただし、前席の座面の下に空間がなく後席の人の足元が狭いのは、なんとも窮屈である。これはエンジンに当たるスタック(燃料電池)が前席の下方に配置されていて、前席の下の空間を占拠しているからだ。

舘内端/自動車評論家

舘内端/自動車評論家

1947年、群馬県に生まれ、日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。
現在は、テクノロジーと文化の両面から車を論じることができる自動車評論家として活躍。「ビジネスジャーナル(web)」等、連載多数。
94年に市民団体の日本EVクラブを設立。エコカーの普及を図る。その活動に対して、98年に環境大臣から表彰を受ける。
2009年にミラEV(日本EVクラブ製作)で東京〜大阪555.6kmを途中無充電で走行。電気自動車1充電航続距離世界最長記録を達成した(ギネス世界記録認定)。
10年5月、ミラEVにて1充電航続距離1003.184kmを走行(テストコース)、世界記録を更新した(ギネス世界記録認定)。
EVに25年関わった経験を持つ唯一人の自動車評論家。著書は、「トヨタの危機」宝島社、「すべての自動車人へ」双葉社、「800馬力のエコロジー」ソニー・マガジンズ など。
23年度から山形の「電動モビリティシステム専門職大学」(新設予定)の准教授として就任予定。
日本EVクラブ

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