資源高を背景に、急速に業績を伸ばしてきた総合商社のビジネスモデルが岐路に立たされている。小さな商材のトレードを積み重ねるより、バルク(数量)で商売ができる資源取引の方が、図体が大きくなった組織には都合がいい。大手商社はどこも、人間にたとえるなら“メタボな経営体質”になっている。シェイプアップしてスリムになるのは容易なことではない。
●資源バブルはじけて、各社が狙う商材とは?
13年3月期の決算では利益の格差が縮小する。三菱商事(3300億円)、三井物産(3100億円)、伊藤忠商事(2800億円)、住友商事(2600億円)、丸紅(2000億円)となる予想だ。
12年同期に三菱商事と丸紅の利益格差は2800億円あったが、今期は1300億円に縮まる。丸紅は純利益で初の2000億円の大台に乗る。
下期(2012年10月~2013年3月)だけとると純利益は三菱商、物産、伊藤忠が1400億円前後、住商が1300億円、丸紅が1000億円弱と急接近する。
丸紅はほかの商社とビジネスモデルが違う。今年5月、2900億円を投じて米穀物商社・ガビロンを買収すると発表した。買収が実現すれば丸紅の年間の穀物の取扱量は4000万トン規模になり、世界首位の穀物メジャー、米カーギルと肩を並べる。資源以外のM&A(合併・買収)として商社で過去最大の投資額だ。
丸紅は電力から紙・パルプまで資源以外のさまざまな事業を抱えている。資源高の恩恵は大きくなかったが、その分、急激に進む資源価格の下落のダメージは少なくて済む。「万年5位」といわれてきた丸紅に、ようやく陽が当たるようになった。
住友商事は大手商社のなかで利益に占める資源の割合が最も小さい。住商とKDDIは10月、両社が出資するケーブルテレビ(CATV)最大手のジュピターテレコム(JCOM)とKDDIの子会社で同2位のジャパンケーブルネット(JCN)を来年秋までに経営統合することを決めた。住商とKDDIはTOB(株式公開買い付け)により、JCOM株式の約30%を総額2160億円で取得。両社の折半出資の子会社にした後、JCNを統合する。この統合により国内CATV市場でシェア50%という巨大連合が誕生する。
伊藤忠は9月、米食品大手のドール・フード・カンパニーから世界の缶詰・果汁飲料事業とパイナップルなどアジアでの青果物生産・販売事業を買収すると発表した。買収金額は1330億円。ドールという世界的なブランド力をテコにアジアを中心とした新興国市場を開拓する。
今後の事業展開を予想してみる。資源高がいつまでも続かなかったのと同様に、資源安が未来永劫続くわけではない。とはいっても中国経済の減速という大きな構造的な要因があるだけに、鉄鋼原料価格の反転は難しいだろう。