オリンパスは医療機器を扱う米国子会社が医師らに不当にリベートを支払っていたことが、虚偽請求取締法や反キックバック法に違反した疑いがあるとして、米司法省の調査を受けていた。米当局への支払いが見込まれる罰金539億円を特別損失として計上したことで、赤字に転落した。
虚偽請求取締法は不正請求防止法とも呼ばれ、不正請求に関わった者に、政府が被った損害の3倍の制裁金が科せられる。米政府は高齢者向けの公的医療保険、メディケアなど複数の医療保険制度を運営しており、医療費の不正請求は政府への不正請求に当たるので、この法律が適用される。反キックバック法では、米政府の医療保険で賄われるサービスや物品の購入を促す見返りに報酬を払うことに対して5年以下の禁錮刑となる。米司法省は11年11月から調査に乗り出していた。同省との協議で和解金の支払いが固まったことで、特別損失を計上したとみられている。
ブラジルでの医師への接待など利益供与についても米司法省が海外腐敗行為防止法の疑いで捜査しているが、今回の539億円に上る特別損失の対象にはなっていないため、損失額は、さらに膨らむ可能性がある。第一三共のインド製薬子会社が13年5月、米司法省に薬剤の安全性に関連した和解金を日本円に換算して500億円支払った。オリンパスのそれは、これを上回る過去最高額になる。
巨額の損害賠償訴訟
オリンパスはこのほか、11年に発覚した事件でも巨額の訴訟を抱えている。同年7月、会員制月刊誌「FACTA」(ファクタ出版)が粉飾決算の実態を暴き、これを問題視したマイケル・ウッドフォード社長(当時)が解任された事件である。
07年から11年にかけて金融商品の簿外処理やのれん代の架空計上により、各年度の連結純資産を最大で1200億円も水増ししていた。バブル期に始めた財テクの損失を隠すために、オリンパス本体から損失を切り離す「飛ばし」を繰り返していたのが、事件の発端だった。
事件発覚に伴う株価下落で損害を受けたとして、国内外の機関投資家から損害賠償を請求されている。海外の機関投資家など計86の企業・組織から提起された総額376億円の損害賠償請求については15年3月、最大110億円支払うことで合意した。オリンパスは訴訟引当金170億円を計上済み。60億円は資本業務提携していたテルモへの和解金で、残る110億円を今回の支払いに充てる。しかし、14年4月に国内信託銀行6行が訴訟を起こした分も含めて、計490億円の損害賠償請求が残っている。この引当金をいつ積むかは未定だ。