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新将命「ビジネスの原理原則」

東芝、劣化を招いた経営者の「なんとかしろ」 目標のために手段を選ばないという愚行

文=新将命/国際ビジネスブレイン代表取締役社長

 そこには、利益をビッグに見せかける目的のためには「手段を選ぶな」「死守せよ」「必達せよ」という経営者のメッセージがある。トップの「なんとかしろ」という鶴の一声で、社員は何をやったか。費用の過少計上や支払いの計上先送りであり、売り上げの過大計上である。その裏には短期業績主義、数字至上主義、目標達成絶対主義という風がごうごうと吹きまくっている。

 経営者が自分の立場の保全や保身に走り、短期目標のためには手段を選ばないという愚行に走った時に、140年かけて営々と築いた信用と信頼は一夜にして瓦解する。社員の人心は崩壊し、ステークホルダーからの信頼は失墜する。

「魚は頭から腐る」というロシアの諺がある。

 経営者が倫理観を失い(または初めからなく)、ガバナンスやコンプライアンス、さらには道義や道徳とは無縁の短期数字至上主義という病気にかかると、会社も重病になる。

「なんとかしろ」という言葉は、そっくりそのまま最近の東芝の経営者に贈りたい科白である。
(文=新将命/国際ビジネスブレイン代表取締役社長)

新将命

新将命

株式会社国際ビジネスブレイン代表取締役社長。シェル石油、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップスなど、グローバル・エクセレント・カンパニー6 社で社長職を3 社、副社長職を1 社経験。2003 年から2011 年3 月まで住友商事のアドバイザリー・ボード・メンバーを務める。「経営のプロフェッショナル」として50 年以上にわたり、日本、ヨーロッパ、アメリカの企業の第一線に携わり、今もなお、さまざまな会社のアドバイザーや経営者のメンターを務めながら長年の経験と実績をベースに、講演や企業幹部研修、執筆活動を通じて国内外で「リーダー人財育成」の使命に取り組んでいる。

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