“新古本”という新しいジャンルをつくり、中古本や中古CDなどを主力に全国800店舗以上(2018年3月末時点/直営・フランチャイズ合計)を展開してきたブックオフ。
しかし、本やCDが売れなくなってきているといった時代背景もあり、その業績は苦しいものとなっていた。上場以来初となる営業赤字を2016年3月期に経験して以来、2018年3月期まで3年連続で最終赤字という憂き目に遭っていたのだ。
そんなブックオフだったが、過去の成功体験にしがみつくのをやめ、近年はその業態にメスを入れることで、復活の兆しを見せていることをご存知だろうか。人気子役の寺田心を起用したCMを見た人のなかには、ブックオフの変化に気づいた人もいるだろう。事実、2019年3月期には、再建目標として掲げていた経常利益20億円という数字を、当初の目標より2年前倒しで達成したという。
では、なぜブックオフはV字回復を果たしつつあるのだろうか。法政大学大学院教授の真壁昭夫氏に話を聞いた。
ブックオフ、栄枯の歴史…チェーン店ならではの強みと課題
初めに、なぜブックオフは全国に大きく展開するまでの発展ができたのか。
「ブックオフの登場まで、古本の購入は町の古本屋さんがメインでした。町の古本屋さんでは、本を売りたい人と買いたい人のマーケットを、その店のみで展開しなければなりません。ですがチェーン展開という手段を取ったブックオフは、そのマーケットを、複数の店舗を合わせて大規模にすることができました。そのため一店舗で賄っている古本屋より、品揃えなどに安定感をもたらすことができ、成功することができたのでしょう。
また、古本業界というのは、常に一定の需要がある世界です。それに加え、本を売る値段と買う値段には大きな差があるので、売買さえ成立すれば確実に儲けが出せるのです。その手堅いビジネスモデルゆえに、ブックオフは急成長できたのだといえます」(真壁氏)
そんなブックオフが業績不振に陥った要因とは何か。
「1つめは、ネットで簡単に新品から中古まで手に入れられるアマゾンの普及や、ネットオークションのヤフオク!、フリマアプリの『メルカリ』の台頭が大きいでしょう。実店舗を構えずに、大量の在庫を抱えることのできるネットサービスの登場は、ブックオフに直接的な大ダメージを与えました。
2つめは、経営面での失敗が挙げられます。都心や人口集中都市に店舗展開を進めていったブックオフですが、物件の賃料などのコストを抑えることができなかったことが、低迷の一因です。さらにそこに、人経費の向上なども加わってしまったため、利益率が大きく下がってしまいました」(同)