確かにブックオフは駅前の好立地への出店なども目立っていたが、そういった攻めの姿勢が裏目に出てしまったというのも、業績不振の原因ということか。
背水の陣で勝負に出たブックオフ、カギは商材の転換だった
だが、復活の兆しを見せているというブックオフ。具体的にどのような対策を取り、復活の機会をうかがっていたのだろうか。
「東京・渋谷などの都心や人口集中区に出していた店舗は、大きなコストがかかりすぎていました。ですからそれらの店舗をたたみ、浮いた資金で郊外に店舗を複数構えるなど出店先を変えていったのです。
さらに郊外店をそれぞれの地域に密着させ、ニーズに合った店舗戦略を模索したことがうまくハマってきています。本やCDだけでなく、洋服やフィギュアや楽器を売買するなど、地域の需要に合うように商材を入れ替えているのです。戦略を切り替えてからさほど年数は経っていないので、まだチェーン全体として大きく売上が伸びているわけではないのですが、すでに利益率が上がっているというデータは出ています。これは以前よりもコストを抑えられている証拠でもあるしょう」(同)
確かに、商材転換は大きなポイントなのかもしれない。実際、フィギュアやプラモデルなどのホビー商品を強化した店舗が復調した事例や、サーファーが集う海の近くの店舗が、サーフボードなどのスポーツ用品の取り扱いを開始したことで、成功したという事例もあるようだ。
真壁氏いわく、「古本市場は日本の人口減少と少子高齢化を踏まえると、今後これ以上、市場が大きくなることは考えづらい」とのこと。そのため、都市部に大型店舗を展開するのではなく、郊外に多くの中小規模店舗を構えるほうが、人経費・賃料などの経費を抑えられるため効果的なようだ。
しかし、ブックオフほど大きく全国展開しているチェーン店にとって、商材を入れ替えるといった抜本的な方向転換は、かなり勇気がいる決断だったのではないだろうか。
「“方向転換に踏み切った”というよりは、“方向転換に踏み切らざるを得なかった”という表現が正しいでしょう。過去のビジネスモデルのまま続けていくのは到底不可能だったため、生き残るために致し方がなかったのではないでしょうか」(同)
オンラインショップ展開と商材転換の二軸で復活なるか?
業績不振から決断を迫られ方向転換を果たしたブックオフだが、最盛期の勢いを取り戻すことはできるのだろうか。
「ブックオフの業績は、これより下落することはないだろうという、一番底まで落ちていたといえるかもしれません。これ以上の成長が見込めない古本市場では、現在の客数の分母を奪い合うことになるので、ブックオフが企業としての存在感を発揮し、利益を保つことが必要です。いかにシェアを落とさずに運営を続けていけるかが勝負どころでしょう。
そして今後は、アマゾンやメルカリに対抗するために、オンラインショップの展開は必要不可欠だと思います。ただ古本は、破れていたり汚れていたりする可能性があるため、実店舗販売の需要がなくなることは考えにくいです。現状の実店舗販売を残しながらオンライン展開することで、売りたい人と買いたい人を結びつけることができれば、一定のシェアは確保していけるでしょう。
同時に、本やCDといった従来の商材を取り扱う割合を減らしていき、幅広いジャンルの中古商材を扱う方針がもっと軌道に乗ってくれば、最盛期の頃まで売上を戻せるかどうかはわかりませんが、経営も安定していくのではないでしょうか」(同)
時代の流れに飲まれ、一度は低迷してしまったブックオフだが、背水の陣で行った改革により復調の兆しが見えているようだ。今後、再びブックオフが勢いを取り戻すことができるのか、またその際にはどういった商品を取り扱う業態になっているのか、注目していきたい。
(文=A4studio)