東芝の不適切会計問題を受けて、社外取締役のあり方に注目が集まっている。果たして、日本の企業では社外取締役が機能しているといえるのか。
東芝は2001年に社外取締役を3名体制とするなど、いち早く経営のチェック体制を整えたことから、コーポレートガバナンス(企業統治)の先駆者とみなされてきた。にもかかわらず、総額1562億円の利益水増しが明らかになったのは、外部の目で経営を監視する社外取締役がその役割を果たせず、コーポレートガバナンスが形骸化していたからである。
一例は、役員人事である。東芝には現在、東京理科大学教授の伊丹敬之氏、外務省出身の島内憲氏、同じく外務省出身の谷野作太郎氏、ソニーやモルガンスタンレー投資銀行などを経て金融ベンチャー企業の社長を務める斉藤聖美氏の4人の社外取締役がいる。このうち2人が、それぞれ指名委員会と報酬委員会の委員長を務め、役員人事の主導権を社外取締役が握る構図である。
東芝が委員会設置会社である以上、本来、指名委員会がトップ人事を決定すべきだが、その機能が働いた形跡はなかった。つまり、役員人事の主導権は指名委員会にはなかった。
報道されているように、2013年2月に発表された社長交代において、田中久雄氏が新社長に就任し、当時社長の佐々木則夫氏は予想に反して東芝上場以来初の「副会長」ポストに就き、実力者の西田厚聡氏はそのまま会長にとどまった。この異例のトップ人事を主導したのは西田氏で、その背景には、西田氏の経団連会長の座への執念と佐々木氏との確執があったといわれている。
かりにも、社外取締役が新社長の選任プロセスに関与していれば、社内のいざこざが社長人事に反映される事態は避けられたかもしれない。もっといえば、社外取締役が役員人事の主導権をもち、指名委員会が客観的視点をもって次期社長を選任していれば、2人の対立、不和は緩和されたかもしれない。
実は、こうしたケースは東芝だけではない。大塚家具の経営権をめぐる親子対立でも、社外取締役は両者の仲を取り持つことはできなかった。
大塚家具の場合、ごたごたが表面化する直前の今年1月、社外取締役と社外監査役の6人は、会長兼社長だった大塚勝久氏に対して、コンプライアンス体制の強化や適切な開示および株主に対する適切な対応など、要望事項を提出した。にもかかわらず、一代で大塚家具を築き上げ成功モデルに強い思い入れをもつ創業者の勝久氏は、まったく聞く耳をもたなかった。ワンマン社長が社外取締役の要望を無視すれば、お手上げ状態になるということだ。つまり、社外取締役は決して“全能”ではないのだ。