問われる、社外取締役の有効性
社外取締役が“全能”でないのは、日本に限ったことではない。本家本元の米国でも同じである。
01年末に破綻した米エネルギー会社エンロンは、17人の取締役のうち15人が社外取締役だったにもかかわらず、簿外債務の隠ぺいをはじめとする不正を阻止できなかった。エンロンに続いて、さまざまな企業の不正会計が明るみに出たことで、米国全体のコーポレートガバナンスが問われるようになった。
安倍政権は、13年6月に公表した成長戦略「日本再興戦略」でコーポレートガバナンスの強化を掲げ、昨年の改訂版では「コーポレートガバナンス・コード」の策定を主要施策として盛り込んだ。企業の「稼ぐ力」を取り戻し、中長期的な収益性、生産性を向上させることが狙いである。
これを受けて、金融庁と東京証券取引所は昨年8月、コーポレートガバナンスに関する有識者会議を設置し、コーポレートガバナンス・コードの検討を始めた。コーポレートガバナンスの強化のポイントとして議論されたのが、社外取締役の導入だ。東証1部または2部に上場している企業は、原則として独立性の高い社外取締役を2人以上置くことを求めた。
東証1部上場企業の社外取締役は15年6月末時点で3400人に増え、導入比率は前年の7割から9割超となった。ソニーや日立製作所のように、すでに取締役の過半数が社外という例も出てきている。
しかし、東芝や大塚家具、エンロンを見ればわかるように、社外取締役を導入しただけではコーポレートガバナンスの強化に結びつかないのである。いったい、社外取締役は、コーポレートガバナンスにおいてどこまで期待できるのか。
求められる、経営をチェックする覚悟
そもそも社外取締役の中核的役割は、経営者が策定した経営戦略や経営計画の成果が妥当であったかを検証し、最終的には現在の経営者に経営をゆだねることの是非を判断することである。つまり、経営者の監督である。
そうである以上、社外取締役が独立した立場であるべきなのはいうまでもない。わかりやすくいえば、社外取締役は「体制内反対派」「党内野党」といったらいいだろうか。常に批判的な目を忘れず、経営をチェックする覚悟が求められる。