インテルによるアルテラの買収は、「IoTとビッグデータ」時代の到来で増大するデータセンタ用FPGA、および自動運転車用のマイコンがターゲットである。FPGAとは、製造後にプログラムが可能な半導体デバイスで、米ザイリンクスと並んでアルテラが世界の2強である。
インテルは、PC用プロセッサがジリ貧、スマートフォン(スマホ)用プロセッサは大赤字、データセンタ用プロセッサが唯一、稼ぎ頭で基幹事業となっている。ところが、データセンタ用プロセッサとしてFPGAが急浮上してきた。インテルのプロセッサとFPGAで電力当たりの性能を比較した場合、検索処理では約10倍、複雑な金融モデルの解析では実に約25倍もFPGAのほうが高いのである。このままいくと頼みの綱であるデータセンタ向け事業も失う可能性があり、企業の存続が危ぶまれる事態になる。インテルとしては、生き残るためになんとしてもFPGAメーカーのアルテラを買収しなくてはならなかったのだ。
中国の紫光集団とは
一方、こうした動きと事情が大きく異なるのが、紫光によるマイクロン買収提案である。まず紫光とはどのような半導体メーカーか、中国にはどのような半導体事情があるのか、そして紫光の狙いとは何か、について説明したい。
紫光は1988年に中国の清華大学が設立した投資会社が前身となっている。2013年以降に中国スプレッドトラムとRDAマイクロエレクトロニクスの2社を相次ぎ買収し、半導体の設計を専業とするファブレスとなった。14年にはインテルの出資を仰いでいる。現在、紫光の主力事業はスマホ用アプリケーションプロセッサで、14年の売上高は約1870億円である。これは、世界最大手の米クアルコムの10分の1程度の規模である。
実は12年にエルピーダメモリが経営破綻したとき、中国系ファンドが救済企業として応札したが、最終的に支援企業に選ばれて買収したのはメモリ大手のマイクロンだった。そのマイクロンに、ファブレスの紫光が買収を持ちかけているわけだ。
なぜ紫光は、メモリメーカーを欲しがっているのか。その背景には、中国の半導体事情が大きく影響している。
中国の半導体事情
電気製品などにおいて、中国は“世界の工場”となった。少し古いデータだが、09年の実績で中国のシェア(生産台数等)は太陽電池26.2%(1517MW)、液晶やプラズマなどのフラットパネルテレビ38.7%(5682万台)、携帯電話52%(5億8842万台)、デジタルカメラ65.4%(8382万台)、iPodなどのデジタルオーディオ66.9%(1580万台)、ノートパソコンに至っては96.2%(1億5857万台)となっている。もはやフォックスコンをはじめとする中国なしに、電気製品を世界に供給することは不可能である。