では、中国は半導体においても世界の工場になっているのであろうか。
中国の半導体市場と生産高を見てみよう(図1)。14年に、中国の半導体市場は980億ドルとなり、世界市場3330億ドルの29.4%を占めている。経済発展を遂げ世界の工場となった中国が、大量の半導体を必要としているのである。
ところが、14年に中国で製造された半導体の生産高はわずか125億ドル。自給率は、たったの12.8%である。つまり、中国では半導体の自給がまったく追い付いていない。この生産高は、世界全体の3.8%しかないのである。
中国半導体の弱点、前工程
半導体の製造には、シリコンウエハに集積回路をつくり込む前工程と、チップを切り出してパッケージングする後工程がある。中国が半導体を自給できない最大の理由は、前工程の不振にある。この原因を探るために、中国最大のファンドリーSMICの状況を見てみよう。ちなみに、ファンドリーとは前工程専門の半導体メーカーのことである。
SMICは、地元銀行のほか米国、台湾、香港などの投資銀行やベンチャーキャピタルが出資して、00年4月に設立された。02年に、初代社長兼CEO(最高経営責任者)の張汝京は、4~5年間で約1兆円を投資するという爆弾発言を行った。この投資額は、02年当時で台湾TSMCの約5倍、韓国サムスン電子の4倍に近い。日本は大手12社の合計が6250億円であったことを考えれば、この投資額がいかに桁外れのものだったがわかるだろう。
もし、張氏のシナリオ通りにSMICが成長したら、上海が半導体王国になっていたはずである。当時IHSテクノロジーのアナリスト南川明氏は「半導体業界の台風の目となる」とコメントした。
ところが、現実はそうはなっていない。SMICの四半期ごとの業績を見てみると、1兆円を投資して劇的に売上高が伸びたようには見えない(図2)。それどころか、05年以降、赤字の低空飛行を続け、12年以降にやっと黒字化できた有様である。また、ファンドリーのランキングを見ても、TSMCやUMCに迫る気配はなく、09年に設立されたグローバル・ファンドリーズにも抜かれ、アップルのスマホ、iPhoneのファンドリービジネスを行っているサムスン電子にも追い越されてしまった。
SMICの業績が示すように、中国のファンドリー、つまり前工程は不振だが、設計を専門とするファブレスは12年10月時点で400~450社もある。これは何を意味するか。