(「中山製鋼所HP」より)
新日鐵住金は同社の発行済み株式の9.8%(2012年3月末)を持つ筆頭株主。新日鐵住金にも増資などの支援を要請する。新日鐵住金は持ち株比率を2倍の20%弱まで引き上げるとの見方もある。
本欄で数回、取り上げた信用調査会社、東京経済が発表した「危ない企業300社リスト」の今年の夏版(12年8月2日発表)では「筆頭株主の新日鐵もお手上げ状態」と中山製鋼所について言及している。
中山製鋼所は1919年の創業。官営八幡製鐵所(現・新日鐵住金)、日本鋼管(現・JFEスチール)に次いで3番目に高炉を建設した老舗だ。だが、鉄鋼不況の02年に高炉を閉鎖、電炉専業メーカーとなった。高炉は鉄鉱石を原料として銑鉄を生産するのに対し、電炉は鉄のスクラップを原料として建築用の棒鋼(鉄筋)を生産する。
その後、中国など新興国の電炉メーカーとの競争が激化。中国の景気減速に伴う鉄鋼価格の下落もあり、12年3月期まで3期連続で最終赤字を計上してきた。
直近の12年9月中間連結決算(4~9月)は、売上高が前年同期比14.9%減の737億円、最終損益が46億円の赤字(前年同期は22億円の赤字)。中間期では4年連続の最終赤字となった。13年3月期の通期業績予想は「収益改善計画を策定してから開示したい」として公表しなかったが、4期連続の赤字となることは避けられないだろう。
主力の生産拠点は大阪市内にある。関西電力は来年4月から企業向けの電気料金を平均19.23%値上げしたいと申請した。電炉メーカーは、生産コストの3割程度を電気料金が占めるだけに電力の値上げの業績への影響は大きい。
電炉業界は地場企業でオーナー経営のところが多いこともあって再編は進まなかった。今回の電気料金値上げは「廃業勧告に等しい」(日本鉄鋼連盟の友野宏会長)とされ、国内に約40社ある電炉メーカーは、再編淘汰に向けて一気に動き出す。
電炉再編の主役は、最大手の東京製鐵である。東鐵の創業者、故・池谷太郎氏は鉄鋼業界のカルテル体質に反発。鉄鋼業界の常識に果敢に挑み「業界の暴れん坊」と言われた。
独立独歩を守ろうとする姿勢は、若くして社長になった息子の池谷正成氏(現・相談役)に引き継がれた。常に異端視されてきた正成氏が本領を発揮するのは、有名な「H形鋼戦争」においてだ。84年、鉄鋼業界の盟主、新日本製鐵との間でH形鋼の安値戦争が勃発した。東鐵がギリギリまで公表せず九州に新工場を建設、高炉メーカーが独占していた大型H形鋼の生産を始めたのがきっかけだった。
東鐵はH形鋼の生産で87年に新日鐵を抜きトップになった。さらに高炉メーカーが得意とするホットコイル(熱延広幅帯鋼)に進出。だが、この戦争の代償は大きかった。新日鐵など高炉メーカーは電炉メーカーの系列化を進め東鐵包囲網を築いた。この結果、東鐵は94年以降、9期連続赤字に追いやられた。