“親離れ”できたトヨタ社長
「“スズキ=鈴木会長”といわれ、本人は心の内では生涯現役(経営者)を考えているのだろう。そうだとすると、企業風土の改革は絶望的だということになりはしないか。一方で、鈴木会長が辞めることには大きなリスクが伴うことも確かだ。株価が下がるかもしれない。しかし、企業の存続を考えるなら、もっと大きなリスクに目を向けるべきではないのか。俊宏社長が“親離れ”をしないと、次は俊宏社長が株主から不信任されることだってあり得る」(業界筋)
鈴木会長は、自分が退いた後はトヨタ自動車の傘下に入って、社長もしくは専務を出してもらい、トヨタの旗の下で生きて行く道を描いているとされる。
「豊田章一郎名誉会長とは話はできていた。だが、このシナリオをトヨタの豊田章男社長は望んでいない。トヨタで章一郎氏の影響力が薄れた今、スズキのトヨタグループ入りは無理なのではないか」(トヨタの元首脳)
章一郎氏の権力失墜は、トヨタホームとパナソニックホームズの経営統合ではっきりした。トヨタの章男社長は、はっきりと親離れした。次は俊宏社長の番だが、彼にはそれができない。スズキの最大の悲劇である。
(文=編集部)
【続報】
トヨタとスズキは8月28日、「資本提携に関する合意書を締結した」と発表した。トヨタが960億円出資してスズキ株を4.9%取得する一方、スズキもトヨタの480億円相当の株式(トヨタ株の0.2%に相当)を持つという内容だ。スズキはトヨタから自動運転や電動化の技術の供与を受ける。
スズキにとってはVWから引き取った株式をトヨタにはめ込むわけで渡りに船だ。トヨタは自動運転などでのファミリー作りの一環。買収やグループ会社化の布石ではない。鈴木修会長は8月28日、共同通信の取材に応じ、「5月に豊田章男社長に資本提携を申し入れた」と明らかにした。トヨタの傘の下に入り、生き残りを図るという必死のあがきなのだろう。
章男社長は父親(章一郎氏)の“約束”を守るかたちになったが、5月に資本提携を申し入れて実現したのが8月末。トヨタの元首脳の「章男社長はスズキのグループ入りを望んでいない」との証言が重みを増してくる。「スズキ、次の100年ト