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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

ジリ貧のインテル、生き残りかけ「謎の」買収 半導体業界、「異端児」台頭で革命的変化

文=湯之上隆/微細加工研究所所長

 実際に、小池氏に見せてもらったのだが、ACMには「FPGA」という名称の専門のシンポジウムや「TRETS」という名称の専門のジャーナル誌まである。このようにFPGA関係者は、まったく異なる学会を中心として研究発表を行っていたため、半導体業界にその動向が十分に伝わってこなかった。それゆえ、FPGAの動向を知らなかった多くの半導体業界人には、FPGAが急浮上してきたように見えたわけだ。

FPGAは初期開発コスト最小のLSI

 FPGAの躍進は、ロジックLSIのASICを置き換えることから始まった。ASICとは、Application Specific Integrated Circuitの略で、特定用途向けにつくられた半導体デバイスである。以下で、FPGAとASICを比較してみよう。(図1)

ジリ貧のインテル、生き残りかけ「謎の」買収 半導体業界、「異端児」台頭で革命的変化の画像1

 ASICは、SRAM、CPUなどさまざまなマクロセル(Intellectual Property、IP)を自由自在に使うことができ、設計自由度が高いため、高機能や高集積化に向いている。しかし、開発期間が長く、開発コストも高い。また、設計やプロセスが極度に困難度を増している昨今においては、一度つくってしまったら変更できないため、本当に設計通りに動くのか、当初の納期と予算通りにできるのか、そして本当に売れるのかといったリスクが付きまとう。

 一方、FPGAはASICに比べれば設計の自由度は低い。また、ASICに比較して3~4倍のトランジスタを必要とするため、チップサイズが大きくなり、チップ単価は高い。FPGAは、ザイリンクスの共同設立者であるRoss Freemanが発明したLSIだが、ザイリンクスの最初の製品「XC2064」をレイアウトしたBill Carterは、「なんというトランジスタの無駄使いだろう」と述べたという。

 しかし、FPGAは、ASICに比べて開発期間は極めて短く、開発コストも小さい。さらに、再プログラミングが可能という特徴があるので、チップ製造後に容易に機能を変更することができる。小池氏は、FPGAを「ソフトウエアのように開発できるハードウエア」と称している。

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 ここで、FPGAとASICのチップコスト比較を行ってみよう(図2)。チップコストは、「(開発費+製造費)/生産数量」で産出する。大量生産する場合は、FPGAよりASICのチップコストが安い。規模の経済が働くからである。一方、生産数量が少ない場合は、ASICよりもFPGAのほうがチップコストが安くなる。小池氏は、「FPGAとはもっとも初期コストが安いLSI」であると述べている。

FPGAがASICを代替する

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 1980年~2010年までのASICとFPGAの設計件数の推移を見てみよう(図3)。80年に1万件もあったASICの設計件数は急激に減少し、10年には2500件程度になってしまった。一方、それと反比例するようにFPGAの設計件数は急増しており、10年には9万件に達した。

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