そこでベネッセは、大人向けサービスに手を広げた。進研ゼミ事業の収益落ち込みを、少しでも補填しようとする試みだ。
「プロ経営者として招かれた原田泳幸氏は、本業の通信教育を立て直して結果を出してほしい。就職支援サービス事業への進出は、進研ゼミの立て直しがうまくいっていないことへの焦りではないか」(アナリスト)
教育業界の再編加速
教育ビジネスは再編の季節を迎えた。文部科学省が新たに策定する指導要領が大きく変わるためだ。子供同士で課題を解決していく「アクティブラーニング」や小学校での英語教育の導入が柱になる。タブレットの採用などICT(情報通信技術)の活用が進む。
学校での指導方法が変われば、関連する教育ビジネスも大きく変化する。ついていけない学習塾や予備校は淘汰される。通信教育は添削からタブレットに転換中だ。
難関大学受験の通信教育「Z会」を展開する増進会出版社(静岡県長泉町)は8月1日、学習塾最大手の栄光ホールディングス(HD)へのTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表した。買収額は137億円。受験生の減少で、10年間で売上高が1割減ったことがM&A(合併・買収)を仕掛けた理由だ。
学研ホールディングスは、明光義塾を運営する明光ネットワークジャパンや市進学院の市進ホールディングスと資本提携している。7月31日には河合楽器製作所と資本・業務提携し、幼児教育で連携することになった。
ベネッセは、お茶の水ゼミナールや東京個別指導学院を次々に傘下に収めてきた。少子化の影響で、生徒数が今後増えることはない。大学・短大の受験者は、ピーク時に比べ4割減った。大学受験生を相手にする予備校や通信教育は、生徒数の多い中高受験で強みを持つ学習塾の取り込みに懸命だ。
ベネッセが狙う学習塾はどこなのか。次の一手が注目される。
(文=編集部)