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有馬賢治「今さら聞けないマーケティング 基礎の基礎講座」

なぜユニクロは、定番商品のセールをしないのか?

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio
なぜユニクロは、定番商品のセールをしないのか?の画像1ユニクロの店舗(「Wikipedia」より/Tokumeigakarinoaoshima)

 「日本企業には優れた技術があるが、マーケティングのノウハウがないために海外企業に負けてしまう」という解説がよく聞かれ、書店にはマーケティングに関する書籍があふれている。また、マーケティングと聞くと華やかな職種というイメージも強く、就職活動中の学生の間にも志望する向きが多いようだ。

 そこで今回は、「そもそも、なぜマーケティングは必要なのか?」について、立教大学経営学部教授の有馬賢治氏に話を聞いた。

――マーケティングの意義とはなんでしょうか。

有馬賢治氏(以下、有馬) 簡単にいってしまうと、企業を成長させることです。企業の活動には「購買活動」「生産活動」「販売活動」「人事活動」「財務活動」の5つがあります。わかりやすく表現すると、「買う」「作る」「売る」「人の管理」「お金の管理」ですね。実はこの活動、企業にとっては「売る」以外はすべてコストがかかるものなのです。つまり、作った商品を売って企業の外部からの収益が得られなければ、企業は存続ができないだけではなく、成長もできないのです。

――ということは、作ったものを売ることがマーケティング活動においてもっとも重要なことだといえるのでしょうか。

有馬 もちろん重要ですが、それだけでは不十分です。なぜなら、どんなにいい商品を作っても、少量しか売れなければ、残りはただの不良在庫になってしまい、その企業にとってはいい商品ではなくなってしまうからです。ですから、売り切るために販売を工夫することも含めて、いい商品という考え方もできます。

 例えば、アパレル業界を見てみると、夏になって夏物バーゲンが始まるのはその商品を売り切るためで、逆にいうと、そこで売り切らないと来年売れる可能性はほとんどありません。一方、来年以降売れる可能性があるものは、安売りする必要はないのです。ユニクロなどでも、セール対象品となるのはデザインや色・柄などが流行性の高いものが多く、白色無地のポロシャツなどオーソドックスな商品があまりセールには並ばない傾向が強いのは、そういった理由からです。

ニーズに応えることがマーケティング

――企業は「なるべく残さない」販売活動をすべきということですね。

有馬 そうですね。また、さらに大切なことは、消費者に「我が社」を選んでもらうということです。社会には多くの競合企業があります。商製品の差別化を行い、競争相手よりも魅力的に売らなければ顧客には買ってもらえないのです。ですから、商製品のクオリティだけでなく、販売の工夫、サービスの充実、広告活動などを含めたトータルのプロデュースが必要になってくるわけです。

――消費者にとって魅力的に商品を展開することに長けている企業の例を教えてください。

有馬 お客さんの声をよく聞く、ニーズをちゃんと理解できている企業は強いです。例えばホテル業の場合、経営不振のホテルが星野リゾートの傘下に入って経営体制がかわることで、持ち直すといったケースがよく見受けられます。そもそも提供できるサービスがそこまで変えられるわけではないのに、なぜそんなことができるのか。星野リゾートは接客トレーニングを重点的に行ったり、利用者に不快感を与えないために喫煙者の採用を見送ったりという、お客さん目線での経営ができているからです。

 食品でも同じで、日清カップヌードルの「トムヤムクンヌードル」などは、海外現地法人の協力を仰いで、現地の味を忠実に再現しています。これも、エスニック料理ブームが起こっている日本の消費者のニーズをよく理解しているからこそ、実現できているといえます。

 雑誌やテレビ、新聞などのメディアでも「お客さん目線での経営」は大切です。クライアントに広告を出稿してもらうためには、その媒体が魅力的で、多くの人が触れるようなものを作らなくてはいけないので、大局的な意味で商品製作と目的を同じくしています。読者や視聴者のニーズを把握して、そして情報やタレントの面白さを発信することで反響が生まれるわけです。

アイドルにもマーケティングが必要

――マーケティングというのは、企業のみに必要な活動でしょうか。

有馬 いえ、フリーランスの人や芸能人などにももちろん当てはまります。ただし、提供するものが形のある商品ではなく、無形のサービスになるという違いがあります。アイドルですとファンが求める歌やパフォーマンスを行い、その対価を得ます。小説家ならば文章、スポーツ選手ならプレイを求められた通りに表現するということが、すなわち「ニーズに応えた商品の提供」となるわけです。

 かつて歌手の美空ひばりさんなどは、たくさんのステージを踏んでいましたが、どんな時でも自分の気分で歌うのではなく、観客が観たい、聴きたい美空ひばりを演じることができたといいます。企業、個人関係なく、ニーズに応えることがマーケティングであり、そのマーケティングこそが、企業も個人も成長させるのです。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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