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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

セブン-イレブン、調べれば調べるほど圧倒的強さの秘密が見えてきた

文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授

ミニストップの差別化戦略とは?

 こうした調査を踏まえて、学生たちはテーマを「セブンへの対抗策」から「セブンとの差別化戦略」に変更しました。つまり、正面からぶつかっても勝てないと判断したわけです。

 ミニストップは流通業界で大きな影響力を持つイオングループであるという点を加味し、大きく2つの策が提案されました。

(1)店内調理のお弁当の提供

 調査結果を見ると、セブンのお弁当に対する消費者の評価は、極めて高いものでした。前述した通り、セブンの食品には鮮度の良さや保存料使用の最小化といった強みがありますが、それは独自の配送システムにより実現されています。そして、約8分の1の店舗数しかないミニストップが、セブンと同じような配送システムを構築するのは、難しいといえるでしょう。

 そういった事情を踏まえて、「中国地方を基盤とするポプラのように、店内調理のお弁当を提供してはどうか」という提案です。イオンには、関東を地盤とするオリジン東秀という弁当チェーンがあり、グループ内のシナジー効果も期待できます。

 現実には、すでにミニストップとオリジンの間で提携が行われていましたが、この提案が導き出されるまでのプロセスは、大変興味深いものでした。

(2)ナショナルブランド(NB)とベストプライスの充実

 調査を通じて、セブンのプライベートブランド(PB)であるセブンプレミアムについても、消費者の評価は圧倒的に高いことがわかりました。

 しかし、店舗数の差を考えると、ミニストップがセブンと同規模の商品開発を行うのは難しいのが現実です。また、現在はイオンのPBであるトップバリュがミニストップで販売されています。

 トップバリュは、基本的に主な販路であるスーパーマーケットの消費者を念頭に開発されており、コンビニの消費者も意識した路線に変更すると「二兎を追う者は一兎をも得ず」となる可能性もあることから、得策とは思えません。

 こうした状況を踏まえ、「近年、注目されることが多いPBではなく、逆にNBを充実させるのはどうか」という提案です。セブンをはじめ、コンビニ各社がPBに注力しているからこそ、あえて逆を行く戦略です。

 イオンの影響力を用いれば、NBメーカーに対して、ほかのコンビニより有利な条件で取引や協力を得ることが可能になるかもしれません。これは、PBが順調なセブンは決して採用しない戦略といえます。

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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