高校生世代と20世紀の人気番組を知る40~50代の世代、この2つの世代が番組を見てくれれば、単一世代の場合よりも数字は倍とれる。「6+6=12」という単純な数式がここで威力を持つ。ちなみに高校クイズ選手権のスポンサーはライオンだが、50代の私はこの番組のコマーシャルで初めて「こすらなくても汚れが落ちる食器洗い洗剤」を同社が発売していることを知った。スポンサーにとっても結果的にターゲットとなる年代の視聴者を獲得できたわけだ。
『エンジェル・ハート』
『エンジェル・ハート』はその前作に当たる漫画『シティーハンター』時代から考えると、1980年代が青春だった世代のファンがベースになっていて、そこに準主役を演じる三吉彩花、三浦翔平ら若手俳優の新しいファン層がついてくる。『ど根性ガエル』の場合も同じ。松山ケンイチ主演で若者向けのライトコメディドラマという仕立てだが、こちらも『ど根性ガエル』をリアルタイムで体験した50代としては「一度は見ておかねば」という気持ちになる。
同じマルジェネでも、近接する世代に興味を持ってもらえればさらに数字は安定しやすい。『デスノート』は何度もドラマ化、映画化された10年来の人気コンテンツで、当時の主力読者・視聴者は現在では30代に年齢層が上がっている。
この夏のテレビドラマ版は当時の設定を引き継いだかたちだが、出演は窪田正孝、山﨑賢人、優希美青と10代の視聴者に人気の俳優陣でキャストを固めた。ドラマとしての設定変更にいろいろと文句がついたこともあったが、逆にそのことが30代の旧ドラマファンの関心を集めた様子で、30代と10代の視聴者から安定的に二ケタの視聴率を集めることができたようだ。
王道の陥りやすい失敗
実はこのようにマルジェネを対象に「6+6」狙いで高視聴率を狙う方法は、伝統的な経営学の理論とは違うやり方だ。
伝統的な経営理論では、商品にはフォーカスが必要だと教えている。ターゲットとなる視聴者を絞り、そのニーズに合わせた番組を制作するのが王道だというのが従来の考え方だ。同じ夏のドラマで高視聴率だった作品でいえば、フジテレビ系の『恋仲』が若い視聴者を対象とした伝統的な恋バナにフォーカスしたり、池井戸潤原作の『花咲舞が黙ってない』が理不尽な職場で働いているおじさんおばさんのストレス解消で支持されたというかたちが従来の高視聴率番組の王道だったのだ。