主力行のみずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行が9月末、1800億円を緊急融資し、さらに1800億円の融資枠を設定した。りそな銀行とみずほ信託銀行、三菱UFJ信託銀行の3行は融資枠の一部、400億円程度を肩代わりして、銀行団に加わる方向だ。
続いて、シャープの敗戦について書く。
●鴻海との提携はすでにネックに……
シャープの失敗は町田勝彦・元社長・会長がオンリーワン経営を貫いたことにある。オンリーワンにこだわり続け、液晶テレビの大成功で、「液晶のシャープ」といわれるまでになった。この、望外な成功体験から、世界一の液晶テレビメーカーを目指した。09年に世界最大の液晶パネル工場が稼働した。関連会社を含めた総投資額は1兆円である。だが、11年以降、3~5割の低稼働率が続く。過大な設備投資のツケで経営が急速に悪化。電子機器受託製造サービス(EMS)の世界最大手、台湾の鴻海精密工業の出資を仰ぐこととなる。
シャープのアキレス腱は、液晶の1本足打法にある。堺工場の稼働率を高めるには鴻海の外販力に頼るしかない。しかし、鴻海との交渉が難航し、提携先を次々に模索しているが主導権は常に、相手側に握られている。中小型液晶の生産拠点である亀山第2工場の稼働率を高めなければ経営が破綻すると、足元を見透かされているのだ。
12年9月中間期の決算短信に、企業継続のリスクとして「継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせる事象の存在」が付け加えられた。倒産予備軍になったということだ。フィッチ・レーティングスは11月2日、シャープの長期信用格付けを「トリプルBマイナス」から一気に6段階引き下げ「非常に投機的な水準」を意味する「シングルBマイナス」にしたと発表した。フィッチは、さらに格下げする可能性があるとしている。シャープの格付けに関しては、米系格付け会社のムーディーズ・ジャパンとスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は既に「投機的な水準」に引き下げている。
投機的水準にまで格付けが下がると、資金調達に大きな困難が生ずる。事実、企業の信用リスクを取引するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場で一時、シャープの保証料率は45%に達していた。この数字はシャープの信用リスクを引き受ける投資家が見当たらないことを意味する。シャープの社債の流通価格は、額面100円に対して40円台に急落した。シャープの株式や社債を持っている上場企業は、減損処理を迫られることとなった。
シャープは3月、鴻海と資本・業務提携した。郭台銘・鴻海董事長個人による堺工場への出資は実行されたものの、鴻海によるシャープ本体への出資交渉は暗礁に乗り上げたままだ。
鴻海は670億円(1株550円で9.9%)を出資する計画だったが、シャープの株価が急落したため、みすみす損失が出る出資に二の足を踏んだのである。台湾の金融当局も、鴻海のシャープへの出資を認可していない。
シャープは鴻海に代わるスポンサー探しに奔走した。半導体大手のインテルやクアルコム、パソコン大手のヒューレット・パッカードなどに出資とセットで共同開発を持ちかけた。