ハロウィンといえば、子供たちがお化けや魔女の格好で家々を渡り歩き、お菓子をもらうというものだが、日本では、ここ10年ほどで大きく変化した。今は、若者たちが思い思いのコスチュームに身を包み、東京・渋谷や六本木などで大騒ぎするのが恒例となっている。この不可思議なイベントがこれほど浸透したのは、なぜなのだろうか。
ハロウィン流行のきっかけはディズニーランド?
日本のハロウィンが「コスプレイベント」になった理由については諸説あるが、最も有力とされているのは、海外向けのニュースサイト「Japan Today」などが指摘する「ディズニーランド起源説」だ。
通常、東京ディズニーランド(TDL)は来場者のコスプレを禁止しているが、2000年ごろから、期間限定の仮装イベント「ディズニー・ハロウィーン」を開催している。これが人気を集め、TDLにおける秋の定番イベントとなった。
この後を追うように、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンも02年に仮装イベント「ハリウッド・ハロウィーン2002」を開催、現在は「ハロウィーン・ホラー・ナイト」として人気を集めている。
こうした人気テーマパークの取り組みが浸透したことに加え、若者のコスプレ文化と結びついて、現在のスタイルのハロウィンが醸成された……というのが「ディズニーランド起源説」だ。いずれにせよ、日本のハロウィンブームの仕掛け人はTDLといえるのかもしれない。
セブン-イレブンが生み出した「恵方巻」
ハロウィンに限らず、現在定着している季節イベントは、企業や業界が仕掛け人のケースが多い。
例えば、節分の日に歳徳神という神様のいる場所である「恵方」を向いて食べると縁起がいいとされる恵方巻だ。最近は、当日になると、ツイッターやフェイスブックに恵方巻を食べる芸能人の写真が多数掲載される。
いかにも伝統的行事のような雰囲気のある恵方巻だが、仕掛け人はコンビニエンスストア最大手のセブン-イレブンだ。しかも、発祥の時期は1998年と、比較的最近である。
もともと、関西地方では節分の日に太巻きを食べる習慣があったが、その太巻きをセブンが「恵方巻」という、おめでたいネーミングで売り出したのが始まりだという。縁起物は気持ち次第、というのがよくわかる例である。
菓子業界が仕掛けた、バレンタインとホワイトデー
2月14日のバレンタインデーには、女性から男性へチョコレートを贈る習慣があるが、これが日本独自のものということは、それなりに知られている話だろう。海外では、チョコではなく、メッセージカードなどを送るのが一般的とされる。
3世紀のローマが起源とされるバレンタインデーとチョコレートは、本来はまったく関係がない。このイベントは、食品会社が需要拡大を狙ったキャンペーンを仕掛けたのが始まりだ。日本チョコレート・ココア協会によると、1958年に菓子メーカーのメリーチョコレートが新宿・伊勢丹の売り場で「バレンタインセール」を行ったのが始まりだという。
ただ、仕掛け人として別の菓子メーカーの名前を挙げる説もある。1932年に神戸モロゾフ製菓(現・モロゾフ)がバレンタインチョコを発売したのが最初というもので、実際に日本最古のバレンタイン広告も残っているという。
バレンタインデーとセットになっている3月14日のホワイトデーも、もちろん菓子業界が仕掛けたものだ。全国飴菓子工業協同組合の「ホワイトデー公式サイト」によれば、1978年6月に同組合によって「ホワイトデー(3月14日)はキャンデーの日」と決定されたという。
いわば、飴菓子の需要拡大を狙ったキャンペーンの一環だったのだ。ちなみに、「口の中でずっと甘く残っているお菓子=永く一緒にいられる」という意味が込められているようだ。
ハロウィンをはじめとした恒例イベントの裏には、ほぼ例外なく企業や業界の思惑が潜んでいるといえる。とはいえ、渋谷や六本木がコスプレの若者であふれ、異常に盛り上がっている様子を見ると、「TDLの影響力はさすが」とも思えるが……。
(文=中村未来/清談社)